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インドのスタートアップも新型コロナ布陣

編集委員 小柳建彦

新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐためインドが3月25日、ロックダウン(都市封鎖)に踏み切った。当時の累計確認感染数は519件、死亡者数は10人。他の主要国に比べ感染数が少なかったにもかかわらず13億人の国民全員に即日、原則外出禁止を義務付けた。古今東西、恐らく人類史上、最大規模の外出禁止令だ。

インドは栄養や衛生状態の悪い国民が多く存在し、医療インフラが脆弱なだけに、イタリアやスペインのような感染爆発にはとても耐えられない。「全土ロックダウン以外に選択肢がない」(モディ首相)と判断したのも理解できる。

そんななか、医療機器や薬品といった医療テックを中心に、コロナ対策の製品開発に急きょ経営資源を投入するスタートアップが出てきている。

典型的なのが、大気汚染関連の素材開発が本業のパー・サピエン・イノベーションズ(ニューデリー)だ。3月から急きょ、新型コロナの前線に立つ医療関係者向けに、独自素材で目や耳、鼻、口を完全防護するマスクの開発を始めた。

野外や人里離れた場所で使用可能なマラリア診断キットなどで知られるサイドグマ(ベンガルール)は、新型コロナの感染検査キットの開発を開始。現在主流であるPCR検査に比べて、安価で検査所要時間が短くなるという。

世界中で不足しつつある人工呼吸器で、既に実績を上げるのがエアロバイオシス・イノベーションズ(ハイデラバード)。肺損傷を起こさないよう人工知能(AI)で呼吸状態と呼吸器の動作を監視・管理することができ、看護師が足りない状況でも安全に運用できる人工呼吸器を供給する。新型コロナ危機に対応して自社増産や他社へのライセンス供与を検討している。

植物由来分子を活用した創薬を手掛けるアトリメド・ファーマスーティカルズは、手持ちのカタログに登録する40万種類の分子のうち、新型コロナのたんぱく質に作用するものを「たくさん」実験で確認したとしている。

インドでも都市封鎖が起こり、街中から人影が消えた=ロイター

政府もスタートアップを巻き込んで自国の医療テック産業をフル活用する構えだ。

インド商工省のスタートアップ振興タスクフォース「スタートアップ・インディア」は3月下旬、新型コロナ対策に有用な技術やソリューション(解決策)の公募を始めた。一種のコンテストで、有用性で上位に選定されると、官民各種ファンドからの開発・生産資金を調達できるという。

コンテストの協賛パートナーにはインド・プライベート・エクイティ&ベンチャーキャピタル協会が名を連ねる。上位入賞者は資金調達の道が開けそうだ。

IT(情報技術)と並んで、医薬品と医療機器はインドが国際競争力を持つ数少ない産業分野の一つ。人材や技術の蓄積、大学や研究機関の基礎研究力といったエコシステムができている。

資金の行き詰まりによる倒産も多発しそうだが、技術力と経営者の知恵の絞り方次第では、コロナ危機はスタートアップにとって飛躍のきっかけにもなり得る。世界中で、にわかに「コロナシフト」するスタートアップは多いが、こと医療テックに関してはインド勢の潜在力も見逃せない。

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