共働きで「年金力」が激変 月30万円、老後生活に余裕
お金を殖やすツボとドツボ(2)

お金を殖やすツボとドツボ
田村 正之
年金
編集委員
コラム
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2020/4/1 2:00
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■ハナ(29) 入社7年目、メーカー勤務。資産形成に興味がある。話が難しくなると、眠る癖がある。
■岡根(32) パーソナルファイナンス(個人向けの資産形成論)を教える大学講師。ハナのサークルの先輩。

ハナ 私たちの世代で特に不安なのが年金。でも私、そもそも年金の仕組み、よくわからないの。

岡根 厚生労働省がモデルとして設定している、平均的な収入で40年働いた男性会社員と専業主婦の世帯でみてみよう。年金は2階建て。全国民共通である1階の基礎(国民)年金は、40年加入すれば1人月に約6万5000円という定額制。夫婦で13万円だね。会社員や公務員なら、収入と加入期間で変わる厚生年金が2階部分に乗ってくる。モデル世帯では平均的な収入の場合の厚生年金が夫だけ約9万円上積みされ、夫婦で月22万円だ。

ハナ それって老後に十分な額?

岡根 家計調査によると高齢夫婦無職世帯は月に26万円強支出している。民間調査では「ゆとりある老後」には36万円ほしいという回答もある。

ハナ だめじゃないですか。

岡根 いや。自分の年金額を考えるときにモデル世帯を基準にする必要はないんだ。

ハナ そっか。私たちの世代で専業主婦になる人、少ないですもんね。

岡根 でも君は昔「アラブの石油王と結婚して超セレブな専業主婦になる」って豪語してたけどね。

ハナ 若いころは夢見がちでした。

岡根 ともかく共働きで女性も厚生年金があれば、年金額は上積みされる。女性は男性より収入が低めだから厚生年金を仮に7割の6万円強として計算しても、夫婦の年金は28万円強になる。もし妻が男性平均と同じ報酬で働いて厚生年金9万円だと月31万円。すでに高齢夫婦無職世帯の平均支出額より多い。共働きを前提に考えると、年金をめぐる風景はがらっと変わる。

ハナ でも私、浪費家なんで…。

岡根 じゃあもっと「年金力」を高める働き方を目指せばいい。厚生年金は「現役時代の平均年収×0.005481×加入年数」でざっくり年額を計算できる。例えば平均年収700万円で40年加入なら厚生年金だけで年153万円になる。基礎年金(年78万円)を足せば231万円だ。1人月に19万円。夫婦そろってこの年収だと月に38万円だよ。

ハナ その0.005481ってなに?

岡根 単に年金計算用に決められた数字だから、意味は考えなくていい。

ハナ グラフAで1000万円くらいから上は年金額は横ばいですね。

岡根 保険料計算は年収でだいたい1000万円が上限。それ以上は保険料も上がらないし年金額も増えない。でもまぁこれはごく一部の人の話。基本的には資格をとって手当を増額してもらったり、より高い報酬の仕事についたりすると、将来の年金額を増やせる。

ハナ ところで年金は財政が厳しくて将来ずいぶん減ると聞きましたけど。

岡根 そこはすごく誤解が多い。政府は経済成長率や物価上昇率などを基にいくつかのシナリオで将来試算をしている。難しいので詳しくは話さないけど、経済が厳しくなると想定した場合でも、現在の物価に直した年金の実質額そのものは若干減で済む予測なんだ。大幅に減ると言われているのは「所得代替率」という年金財政上のモノサシの話。…ハナちゃん?

ハナ あ、難しくなると眠気が…。

岡根 でも若干減でも嫌だし経済前提が予想を下回る可能性も当然ある。だからこそ、ベースとなる金額を多くしておくことが大事。たくさん働けば年金が増えて取り崩しの心配はその分減ることになる。

ハナ 昔から「机上の空論」っぽい話、好きでしたね。

岡根 失敬な。実際の例をみよう。全国消費実態調査(最新統計は2014年)では47都道府県のうち5県は、2人以上の無職世帯(高齢夫婦無職世帯とほぼ同一)で支出より収入が多く、お金を取り崩さないですんでいる。そのうち3県は新潟、富山、福井と北陸地方(グラフB)。なぜだと思う?

ハナ 主なレジャーが雪合戦でお金使わなくていいとか?

岡根 北陸の人に怒られるぞ。3県とも支出はむしろ全国平均より多くて暮らしは豊か。でも年金収入が全国平均に比べて、富山は21%、福井は14%、新潟は9%も高い。これが老後も取り崩しがなくてすんでいる大きな要因。

ハナ なぜ年金が多いの?

岡根 会社員など厚生年金の加入者を第2号被保険者という。グラフでわかるように3県とも第2号の比率が全国平均より高い。大和総研では「共働きで厚生年金をもらえる人の比率が高いことが世帯の年金額が多い理由」と分析しているよ。

ハナ 共働きが多いのが不思議。

岡根 富山県のファイナンシャルプランナー、佐渡玉希さんによると「昔から3世代同居が多い土地柄。子供の世話を親世代にみてもらいやすく、共働きがしやすい。高齢になっても働き続けている女性も多い」そうだよ。共働きでかつ一人ひとりの年金額を増やすことが、老後にとても大事なんだ。

ハナ 石油王と結婚しなくても大丈夫かも。

■マネーの知識 ここにも目配りを

国民年金も満額目指そう
20歳から59歳まで40年加入する仕組みなのが1階部分の国民年金。しかし過去は加入が任意だった時期もあり満額受給できていない世帯が多い。できればこちらも増やしたい。40年加入で年78万円(月6万5000円)だから、1年多く加入するほど年2万円弱1階部分が増える。
 方法は2つだ。自営業者などは60歳を過ぎても国民年金に続けて入る任意加入という方法がある。会社員の場合は60歳以降も厚生年金に加入して働き続ければ、「厚生年金の経過的加算」という少し難しい仕組みで、1年多く働くごとに実質的に1階部分が年2万円弱増えていく。ともに金額が40年分に達するまでは増やせる。これらも長生きリスクに備える大切な手段だ。

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お金の制約なしに人生の様々な選択ができる経済的自由(Financial Freedom)。それに近づくために必要な運用や社会保障の知識を、会話形式でわかりやすく伝えるコラムです。毎週水曜日に掲載します。

田村正之(たむら・まさゆき)
編集委員。証券アナリスト(CMA)、ファイナンシャルプランナー(CFP)。著書に「人生100年時代の年金戦略」「税金ゼロの資産運用革命」など。田村優之の筆名の経済小説「青い約束」(原題「夏の光」で松本清張賞最終候補)は13万部に。

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