東京都「感染爆発」の岐路 新型コロナ、経路不明急増

東京都が新型コロナウイルスの感染拡大を防げるかどうかの岐路に立っている。増加ぶりは約2週間前、1日100例を超えた後に倍々ペースで感染者が急増した米ニューヨークと似た傾向をたどる。経路不明の感染者が急増した25日、都は外出自粛を要請したが、増加に歯止めがかからない。専門家は「潜伏期間も含め1~2週間が焦点」と注視している。

3月9~11日には6~17人だったニューヨークの感染者は、12日に43人、13日に59人と増え、14日には115人と100人を超えた。その2日後に1千人、5日後に2千人、10日後には4千人を突破する形で、爆発的に感染者が急増した。
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一方の東京都。23、24日は10人台にとどまっていたが、25~27日は3日連続で40人以上となり、28日は63人、29日には68人に増加。2週間遅れでニューヨークをなぞるように曲線を描いている。
人数の増加は病院の院内感染が起きているという事情もあるが、都や専門家が危機感を抱いているのは経路不明の感染者が急増している点だ。23日以降、経路不明は感染確認の半数~半数弱に上り、29日も68人のうち26人を占めた。
クラスター対策班のメンバーは「経路不明の感染者の裏には、まだ見えていない感染者の集団(クラスター)が潜んでいる恐れがある」と指摘する。
これまでは一人ひとりを追跡してウイルス検査をし、無症状の人を含めて入院させるなど感染拡大を防いできた。だが対策班のメンバーは「経路不明が1日数十人に達したら追跡調査にも限界がある」という。都内で経路不明の感染者は、海外での感染拡大後に帰国した人が増えた時期から少し遅れて増加している。
対策班は20日から始まった3連休の前、都に対し「第1波の中国・武漢からの感染者数とは桁外れの感染者が今後、入国してくる。1~2週間以内に入国者を起点とするクラスターが形成される可能性が高い」と文書で警告していた。
文書の中で対策班は、3月26日からの1週間で159人の感染者が発生する、と試算。しかし、実際は29日までの4日間だけで約1.8倍の218人に達した。都は文書を受け取って約1週間後となる25日に外出自粛を要請したが、対策の遅れが響く形となった。
潜伏期間(平均5日程度)を考慮すると、自粛の効果は30日以降、次第に判明する。都や周辺地域の感染確認と、経路不明の感染者の動向が、爆発的な感染拡大(オーバーシュート)を招くかどうかの分かれ道になる。

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