コロナ危機 力増す勝ち組企業(The Economist)

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2020/3/31 0:00
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先進国では政府や経済学者が新型コロナウイルスの感染拡大に伴うロックダウン(都市封鎖)の経済的影響を試算しようと躍起になっている。経済は10%落ち込むのか、それとも3分の1なのか。景気後退は3カ月続くのか、半年か、あるいはそれ以上続くのか。誰も正確に予測することはできない。同様に企業幹部らは、キャッシュフローがどの程度悪化するのか、存続に必要な資金を確保できるのか、不安に満ちた答えの出ない議論を重ねている。

在宅勤務をする人たちが増えることでマイクロソフト製品の利用が広がる。大企業の市場シェア拡大がさらに進みそうだ=ロイター

在宅勤務をする人たちが増えることでマイクロソフト製品の利用が広がる。大企業の市場シェア拡大がさらに進みそうだ=ロイター

この混乱の中で少なくとも1つだけ明らかなのは、今後は一握りの力のある企業がさらに影響力を増していくということだ。一部の企業は金融の安定に貢献している。米製薬大手ジョンソン・エンド・ジョンソンの債務保証コストはカナダ政府のそれよりも安い。米アップルが抱える手元資金は2070億ドル(約22兆円)と、ほとんどの国の財政刺激策の規模を上回る。英蘭日用品大手ユニリーバは多くのサプライヤーに支払いを迅速化し、資金供給を急いでいる。

これらの「勝ち組」企業は長期的には、弱体化した競合他社より積極的に投資したり、あるいはそういった競合を買収したりすることによって市場シェアを拡大していく。ただし、パンデミック(世界的大流行)後の世界では、これらの優良企業には社会的な制約が課されていくことになるだろう。

景気後退は弱小企業を淘汰

資本主義における景気後退は弱者を淘汰するプロセスだ。ビジネスモデルや財務が脆弱な企業を白日の下にさらす。米国での過去3回の景気後退(リセッション)で、10業種それぞれの上位4分の1に属する米企業の株価は平均6%上昇したが、下位4分の1の株価は44%下落した。今回は通常の景気後退と比べ、期間こそ短かそうだが、売り上げと利益はより急激に低下するだろう。

その激減ぶりは、渡航制限や外出禁止の影響を直接受ける一部の企業にすでに表れている。今月23日、アイルランドの格安衣料品チェーン「プライマーク」は、12カ国376店に及ぶ全店舗の営業を中止すると発表した。毎月7億7000万ドル以上の売り上げが消えるが、削減できるコストは従来の約半分にとどまる見通しだ。大半の企業にはこれほど具体的な見通しはないが、打撃はこんなに深刻ではないかもしれない。

一部の工場は操業を続けており、事務系の職場は在宅勤務で対処している。これまで配当や自社株買いの縮小を発表する企業が相次いでいるが、キャッシュフローがどの程度悪化するか、はっきりとした見通しを示した企業はほとんどない。大半の企業では大幅に悪化することになるだろう。

危機に強い企業をエコノミスト誌が算出

では、どの企業が勝ち組なのか。企業のレジリエンス(困難な状況に直面した際の強じんさや回復力)を推しはかるため、本誌は欧米の上場大企業800社強を調査し、債務保証コスト、営業利益率、手元資金、レバレッジの4つの指標の平均スコアを取った。中規模でもこの数値が高い企業はあったが、時価総額と利益の両方が大きい大企業ほど高いという傾向が見られた。

レジリエンスが最も高い上位100社は下位100社に比べ時価総額の中央値が倍近く、営業利益の中央値は17%高かった。この1カ月間の株価の動きも上位100社の方が良く(悪くなかったと言うべきか)、下落率の中央値は下位100社の36%に対し17%だった。

上位はIT(情報技術)企業と製薬会社が占める(表参照)。上位100社のうち48社がハイテク企業だ。米マイクロソフト(10位)やアップル(13位)、フェイスブック(14位)、アルファベット(18位)は現金が潤沢だ。マイクロソフトの協業ソフトなど、一部の製品への需要も急速に高まっている。24社は医薬品関連の企業だ。余裕資金を多く持ち、自社が生産する医薬品については十分な市場を確保している。経営体力で劣る下位には、運輸や小売り、娯楽が多い(英マークス・アンド・スペンサーや米アメリカン航空など)。

同じ業種の中でも明暗がはっきり分かれる。IT部門では、米アマゾンが電子商取引(EC)の需要急増に対応するため米国で約10万人の従業員を増やす。一方、(小規模なEC会社など)リスクの高いスタートアップ企業に大規模な投資をしてきた日本のソフトバンクグループは23日、資金調達のため保有資産を最大4兆5000億円売却すると発表した。これには、巨額の含み益を持つ中国最大の上場企業アリババ集団の株式の一部売却も含まれるとみられる。

エネルギー部門では、米エクソンモービルや英蘭ロイヤル・ダッチ・シェル、英BPといった巨大企業がより規模が小さい企業を大きく引き離している。米オキシデンタル・ペトロリアムは積極的に買収を重ねることで業界トップの仲間入りを狙ってきたが、今では400億ドルもの負債を抱える。仏化粧品大手ロレアルは競合する米コティを大きく引き離した。窮地に立つ航空機製造でも、その差は顕著だ。欧州エアバスは23日、約320億ドルの資金を利用可能にする計画を発表した。債券投資家はエアバスの方が、連邦政府に救済を求める可能性がある米ボーイングよりリスクが低いとみている。

スタートアップ企業にも逆風

勝ち組企業のレジリエンスはやがて永続的な強みに変わり、市場シェアは徐々に拡大する。資本コストも下がる。サプライヤーは脆弱な企業より勝ち組企業を顧客にしたい。利益率と手元流動性が高いため、他の企業が投資を抑制する中でも投資を拡大する余裕がある。企業買収も可能だ。経営難に陥った自国企業の存続と雇用の維持を重視する政府は、反トラスト法(独占禁止法)に抵触する懸念よりもそういった企業による買収を歓迎するだろう。時価総額が目減りし資本コストが膨らむ赤字経営のスタートアップ企業は、巨大企業の利益を侵食していくことが当面は難しくなる。

すべてが勝ち組の思い通りにいくわけではない。新型コロナウイルスの感染終息後は、社会契約の新しいあり方を求める声が高まり、企業は生活必需品をより安く提供し、従業員にもっと安定を提供することを迫られるかもしれない。資本主義は弱肉強食の色合いが弱まり、弱った企業には救済措置や政府による保証付き融資が行われるだろう。

米国、英国、フランス、ドイツ、イタリアの各政府が低金利の企業融資や融資保証に充当する額は少なくとも合計4兆ドルに上り、5カ国の事業会社が保有する債務残高の5分の1に相当する。一部の業種では価格と生産の安定のために協力し、一時的にカルテルを結ぶことが政府に認められるかもしれない。その場合は勝ち組企業が強みを存分に発揮するのがより困難になる。新型コロナは社会や人間の行動に持続的な影響を与えるだけではない。グローバル企業のあり方をも変えることになる。

(c)2020 The Economist Newspaper Limited. March 28, 2020 All rights reserved.

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