ESG×投信 ミレニアル世代のハートをつかむ
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2020/3/31 2:00
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投資信託の世界でもESG(環境・社会・企業統治)重視の流れが鮮明になっている。投信の拡充・多様化で個人投資家にとっての選択肢が広がる一方、選別眼も重要になっている。

■増え続ける設定本数

環境問題への意識が高いのもミレニアル世代の特徴=ロイター

環境問題への意識が高いのもミレニアル世代の特徴=ロイター

世界の追加型投信のうち、モーニングスター・ダイレクトでESG重視または環境重視に分類される投信の設定本数は2019年に500超と過去最多になった。これとは別に上場投資信託(ETF)の新規設定も81本と過去最多を記録。今年も3月時点ですでに20本以上が設定された。世界最大の資産運用会社である米ブラックロックは1月にESGのETFを150本に倍増させると表明しており、この傾向は今後も続きそうだ。

日本でもESGに関連する投信の設定が相次いでいる。2月には三井住友DSアセットマネジメントが、需要と供給のそれぞれの面で食糧関連の課題解決につながる企業に投資する「フード・イノベーション厳選株式ファンド」を設定。大和アセットマネジメント(旧名は大和証券投資信託委託)も、代替エネルギーへの移行など環境に優しい事業を手掛ける企業の株式と環境事業に資金使途を絞った債券に投資する「クリーンテック株式&グリーンボンド・ファンド」の運用を開始した。

ESG投信の設定が急増した背景には、個人の意識の変化がある。米モルガン・スタンレーが19年2月に実施した米国の個人投資家800人を対象にした調査によると、ESG投資に代表される責任投資に「非常に関心がある」と回答した比率は49%と、17年調査時の23%から倍増した。中でも、1980年代~2000年前後に生まれた「ミレニアル世代」では「非常に関心がある」との回答だけで70%に達した。相続などで資産を継承する世代なだけに注目度が高く、これらの世代の台頭で米バンク・オブ・アメリカは今後20年でESGファンドの資産が保守的に見積もっても20兆ドル(2200兆円)増えると見る。

では、運用成績はどうか。QUICK資産運用研究所がまとめたESG重視の国内株投信やETFを見ると、2月末までの過去3年間の基準価額(配当再投資ベース)は平均3%上昇した。同期間の配当込み東証株価指数(TOPIX)の上昇率(5%)にはやや見劣りするが、3年間で約14%上昇したキャピタルアセットマネジメントの「CAM ESG日本株ファンド」など成績好調なファンドも少なくない。

ESGに着目した投資が報われやすい環境になってきている、との分析もある。SBI証券の波多野紅美チーフクオンツアナリストはTOPIX500の構成銘柄を対象に、評価会社サステナリティクスのESGスコアを使い株価とスコアの関係を調べた。16年以降、スコアの高い会社ほど株価のリターンが高まりやすい傾向が見られるようになり、19年に入ってからはこの傾向が一段と強まっているという。

三菱UFJ国際投信の友利啓明シニアファンドマネジャーは、「ESGファンドだけでなく、多くの運用会社が企業調査の段階でESG面の評価を組み入れ始めていることが一因」と見る。

日本では年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が複数のESG指数を採用し、その指数に連動した運用に資金を少しずつ振り向けているという需給面での追い風もある。今後、ESGへの注目は一段と高まると見られ、投信の成績にもつながるかもしれない。

■担当者に聞く「私たちの投資方法」

朝日ライフアセットマネジメント チーフファンドマネジャー 速水禎氏 ビジネスを通じて、社会的課題に積極的に取り組む企業に投資している。ESGの観点から見た非財務情報と財務情報を総合的に活用して、企業価値を分析する。例えば企業の事業の魅力度を判断するに当たり、市場規模や競合他社だけでなく、環境や社会課題から持続的な商機があるかも見極める。

特に株価上昇のカギを握ると考えているのがコーポレートガバナンスだ。株主還元の姿勢や、将来の投下資本利益率(ROIC)が低下しないためのリスクマネジメントができているかどうかに注目する。

コールセンター大手のプレステージ・インターナショナル(4290)を組み入れ銘柄の上位としている。地方拠点で託児所を設けている。女性従業員の離職抑制に効果があるほか、子育て支援という社会貢献も果たしている。

富国生命投資顧問 株式運用部長 岡部和男氏  社会的責任を果たしながら株価が割安な企業に投資している。全上場企業から株式の流動性の高さなどの観点で約400銘柄を選び、独自のESG評価に基づき4段階のうち上位2段階までの約300銘柄を「ESGバイリスト」として投資候補とする。さらにESGと財務の評価を総合的に判断して、60~80銘柄のポートフォリオを構築する。

ESG評価は、自社のESGアナリストやファンドマネジャーによる個別取材で付けている。「顧客や従業員の満足度の向上と企業価値の関連性」といった質問への回答をもとに計29の評価項目で判断する。

2006年4月~19年3月末の投信の銘柄選択による効果を分析した。財務面で割安な銘柄への投資だけでは年5.6%のリターンにとどまったが、ESG評価を合わせると年7.1%まで上昇できたことがわかった。

三菱UFJ国際投信 シニアファンドマネジャー 上辻敦生氏  環境問題に積極的に取り組む企業は中長期的な業績成長が期待できると考えている。具体的な手順としては、まず環境問題への取り組みが優れた300~400銘柄の投資候補「環境ユニバース」を作成する。その中から企業の成長性や収益性、株価水準を判断して投資先企業を決定する。

環境ユニバースの作成は、三菱UFJリサーチ&コンサルティングのアンケートやインタビュー結果を参考にする。製品やサービスが持続可能な社会の実現に貢献するか、天然資源の消費や二酸化炭素(CO2)などの排出物の削減ができているかといった基準で評価する。

組み入れ上位銘柄では熊谷組(1861)に注目している。住友林業(1911)との資本・業務提携も後押しし、環境に配慮した住宅を積極的に建設する方針を打ち出した。

(松本裕子、大西康平が担当した)

「みんなのESG」は日経ヴェリタスとの連動企画。世界的に関心が高まるESGについて、知っておきたい最新トレンド、投資マネーの動き、先進企業など様々な観点から取り上げます。

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