京大山中氏がコロナ警鐘「研究できるのも平和だから」

2020/3/31 12:28
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新型コロナウイルスに関するサイトを自ら立ち上げた山中伸弥氏(写真:石田高志)

新型コロナウイルスに関するサイトを自ら立ち上げた山中伸弥氏(写真:石田高志)

日経バイオテク

京都大学iPS細胞研究所の山中伸弥所長が、新型コロナウイルスの国内での急速な感染拡大に警鐘を鳴らしている。「感染拡大を食い止めるためには、一人ひとりに正しい情報を知ってもらうことが重要だ」としてウェブサイト「山中伸弥による新型コロナウイルス情報発信」を自ら立ち上げた。3月24日、山中氏がバイオテクノロジー専門誌である日経バイオテクの取材に応じた。

──「山中伸弥による新型コロナウイルス情報発信」では、新型コロナウイルスとの闘いは、「1年以上続く可能性のある長いマラソン」だとした上で、「国民の賢い判断と行動が求められる」と訴えている。

「3月上旬、感染拡大を受けてセンバツ高校野球の中止が決まり、涙を流しながら中止を受け入れる多くの球児の姿にとても胸が痛んだ。同時期に、日本のリーダー的な方々の会合が予定されていて私もそこに呼ばれていたのだが、感染拡大のリスクを考慮して正式な会合は中止された。ただ、個人レベルの会合は開催されたようだ。それを知って、一人ひとりに正しい情報を知ってもらうためにも、新型コロナウイルスの情報発信をしようと思い立った」

「『山中伸弥による新型コロナウイルス情報発信』は、大学とも京大iPS細胞研究所などとも関係なく、個人のウェブサイトとして立ち上げたものだ。自分でサイトを立ち上げたのは15年ぶり。市販のソフトや外部の業者などを利用して、同サイトのデザインも自分で考えた」

「怖いのは、自分が感染し、高齢者や基礎疾患ある方々へうつすこと。高齢者や基礎疾患のある方々はリスクが高いので、その方々を守るためにも、学生など若者に我慢してもらわないと、皆に理解してもらわないといけない。ウェブサイトはまさにそのためだ」

──同サイトでは、新型コロナウイルスの特徴や論文発表された研究成果、報道の内容などを紹介している。情報のソースは。

「研究者として主要な雑誌は読んでいるし、Lancet(ランセット)やJAMA、NEJM(ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン)など(査読制の医学雑誌)にも目を通している。また研究者コミュニティーから新型コロナウイルスについての様々な情報が送られてくるので、そうした情報を元に、自分で文章を書いて発信している」

──米カリフォルニア州のグラッドストーン研究所にも研究室を主宰している。

「感染拡大を受け、米国では様々なアカデミアの研究に影響が出ている。グラッドストーン研究所では、感染を予防するための距離を保つため、1研究室当たり2人しか研究室には入れず、培地交換や交配など最小限の作業だけを行っている状況だ。私自身も、3月以降は米国の研究室には行っておらず、しばらくの間行けないだろう。iPS細胞の研究も平和だからこそできるということを実感している」

──新型コロナウイルス感染症の検査技術や治療薬、ワクチンの研究開発に向け、国内では日本医療研究開発機構(AMED)などが動いている。

「海外で治療薬やワクチンが開発されても、国内には入ってこないとか、入ってきても高額になるとか、そういったリスクも考えられる。今は、他の研究を置いておいてでも、AMEDのトップダウンで100億円でも、1000億円でもいいので、治療薬やワクチンの開発を進めることが重要だろう。国難の局面では、『俺が俺が』の競争ではなく今こそ協調し、お互いに情報交換することが必要だ」

「もっとも、しばらく前からAMEDでは、末松誠理事長が思う存分リーダーシップを発揮できない状況にあり、今この状況にもリーダーシップを発揮できない可能性があるのではと危惧している。また、2020年4月に末松理事長は就任から5年を迎えるが、感染拡大の深刻さを考えれば、理事長の任期を1年でも延長して、国難に立ち向かうべきではと思っている」

【編集部注】20年3月27日、政府はAMEDの新理事長に三島良直氏(元東京工業大学長)を指名する人事を決定しました。

(日経バイオテク 久保田文)

[日経バイオテクオンライン 2020年3月27日掲載]

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