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飲み代のツケ、請求期間1年→5年に 4月から

お金の貸し借りや契約のルール改正

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休日の夜。筧家のダイニングテーブルでは幸子がお金の貸し借りや契約のルールを解説した本を読んでいます。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で幸子もセミナーが中止に。「私の旅行会社もそうだけど、ママもお仕事が減って大変ね」。恵が声を掛けました。

筧(かけい)家の家族構成筧幸子(48)良男の妻。ファイナンシャルプランナーの資格を持つ。筧良男(52)機械メーカー勤務。家計や資産運用は基本的に妻任せ。筧恵(25)娘。旅行会社に勤める社会人3年目。筧満(15)息子。投資を勉強しながらジュニアNISAで運用中。

幸子 お金の貸し借りや契約のルールの基本となる民法の債権法が改正されて、4月1日から施行されたの。セミナーでも残業代のトラブルやインターネット通販がらみの質問も時々あるから、この間に改正債権法の勉強をしておかないと。

良男 残業代といえば、給料の消滅時効を現在の2年から原則として5年(当面は3年)に延長する改正労働基準法が国会で成立したね。改正債権法と関係あるのかな?

幸子 消滅時効が改正されたからよ。

 「消滅時効」って?

幸子 お金を貸した人が借りた人に返済の請求を一定期間しないと、権利を失う期間のこと。残業代や飲食店のツケなどは、改正前は別々の時効が設けられていたけど、今回の改正でほぼ統一されたわ。例えば、個人間のお金の貸し借りは改正前は返済期限から10年経過すると時効になったけど、改正後はこれに加え、返済請求ができることを知ったときから5年となったの。通常、返済期限はお互いに分かっているから、専門家の間では時効が5年に短縮されたと受け止められているわ。

良男 一方、飲み屋のツケは1年の時効が5年に延びたんだよね? ツケから逃れるのは難しくなるなぁ……。

幸子 ただ例外もあって、交通事故などで生命や身体に侵害を受けたときの損害賠償請求権の時効は最長20年のままよ。生命保険の保険金請求期間も3年のままだし、税金は確定申告の有無などの状況により、3年や5年などとなっているの。

良男 損害賠償というと、任意の自動車保険にも改正債権法の影響があるそうだね。

幸子 「民事法定利率」が年5%から同3%に変更されたことが影響しているわ。法定利率はお金の貸し借りをした当事者間で金利を決めていなかった際、利息の計算をするときに適用するんだけど、交通事故の損害賠償額の計算にも利用するの。

 どう影響するの?

幸子 不幸にして亡くなった場合、その人が得るはずだった給料などの利益、つまり逸失利益を算出するの。将来何年にもわたって得る収入を一度に支払うので、一定の利率で割り戻す必要があって、それに法定利率を使っているわ。年収500万円の人が27歳で亡くなり、生きていたら67歳まで働くという計算式が一般的に用いられていて、法定利率が年5%だと一度に支払う額は約6000万円、年3%だと約8100万円となり、その差は約2100万円になるの。

 損害保険会社は保険金支払いが増えるので、保険料を引き上げる要因になるのね。

幸子 改正債権法のなかで私が日常生活に関係ありそうだなと思ったのは、定型約款という規定が創設されたことね。

 約款っていうと、ネットで買い物するとき、読んでくださいって表示されるけど、ほとんど読んだことがないわ。

幸子 それが契約の内容になることが明記されたのよ。おおまかに言うと、鉄道や電気・ガス、ネット通販などの利用、つまり、ある事業者のサービスで不特定多数の人が利用するものを「定型取引」と定義し、事業者が準備した約款や利用規約を「定型約款」と規定したの。定型取引をする際に定型約款が表示されていたときは、その内容でお互いが合意したとみなすことになったわ。

 注文と違うモノが送られてきても、交換や返金はしないと約款に書かれていたら困るから、きちんと読むわ。

幸子 お願いね。でも、相手に一方的に不利な条項は「不当条項」として合意がなかったものとみなされて無効になるの。例えば、定型約款にAという商品を買うと、Bというサービスも合わせて購入しないといけないとか、サブスクリプション(定期購入)契約で、加入後は長期間解約ができないといった条項が当てはまるわ。

良男 国民生活センターに寄せられるネット通販の相談件数は全体としては減ってきているようだけど……。

幸子 でも、商品についての相談件数はまだ増加傾向にあるわ。定型約款は事業者と個人、または事業者同士の取引に適用されるのでトラブルが減る方向に向かうといいわね。

 ほかに、生活に関連した改正点はあるの?

幸子 個人がする「根保証」についても限度額を明記することになったわ。賃貸住宅に入居したり、会社に入社したりするときに身元保証人を求められることがあるでしょう? 賃貸住宅の保証契約では「入居者が貸主に対して負う一切の債務について連帯して保証する」といった文言が一般的だったの。このように特定されない債務を保証することを根保証というのだけど、これだと保証人はいくら負担することになるのか分からないわ。改正後は保証する限度額を書面に明記しないと保証契約自体が無効になることになったの。すでに保証人になっている場合は4月以降に契約を結び直さないと改正法が適用されないので、相手方に問い合わせてみてもいいかもしれないわ。

約款、コツつかみ目を通して


ニッセイ基礎研究所取締役研究理事 松沢登さん
 約款や利用規約の書き方に特に決まった順序はありませんが、契約する際の大切な内容なので、コツをつかんで目を通しましょう。生命保険の約款では保険金の支払い条件や、支払われない場合の規定が大事です。ほかのサービスでは、事業者がどんなサービスを提供し、自分はどんな対価を払うのかに注目します。事業者がサービスを提供できない場合や個人情報の取り扱いも見ておきましょう。
 サブスクリプションでは解約手続きに注意しましょう。いったん加入するとなかなか解約できないとか、利用停止中も料金支払いが続くのかなどがポイントです。加入はネット上でワンクリックでできるのに、解約は来店を求めて複雑な手続きを要するなどのケースがありますので注意しましょう。
(聞き手は川鍋直彦)

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