米政府、不動産ローンファンドの支援検討 信用不安の解消急ぐ

2020/3/30 13:32
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【ニューヨーク=伴百江】不動産ローンファンドの信用不安が続く米国で、政府が近く混乱の収拾に乗り出す。複数の金融規制当局からなるタスクフォースが不動産ローン市場の流動性回復に向けた支援策を詰めており、早ければ週内にも公表する。米国では新型コロナウイルスの感染拡大で経済が混乱し、家賃が正常に支払われない事例が相次いでいる。この余波が不動産ローンファンド市場を直撃していることから立て直しに動く。

レストランチェーンのチーズケーキ・ファクトリーは全米の店舗の家賃について4月分を払うことができないと家主に伝えた=ロイター

タスクフォースは米連邦準備理事会(FRB)や米証券取引委員会(SEC)など、金融規制当局の代表で構成する金融安定監視評議会(FSOC)の中に設置された。

ムニューシン米財務長官は26日に開かれたFSOCの会合で、不動産市場の流動性の低下について懸念を表明し、対策を講じるよう求めた。タスクフォースは不動産ファンドが債務の支払いを猶予できるようにする策などを詰め、早ければ30日にその結果を公表する。

金融当局が支援に乗り出す背景には、新型コロナの感染拡大が米不動産市場を直撃していることがある。商業用不動産ローン担保証券(CMBS)と呼ばれる証券の価値が急落しており、同証券を保有する多くの投資ファンドや金融機関も打撃を受けている。CMBSの値動きを映す代表的な上場投資信託(ETF)「iシェアーズCMBS」は、直近のピークだった3月9日から27日までに約8%下落した。

実際、米国では外出禁止令などに伴いテナントが事業の一時閉鎖に追い込まれ、家賃を支払えなくなっている事例が続出している。米飲食チェーン大手チーズケーキ・ファクトリーはこのほど全米の300店舗について、4月分の家賃を支払えないと家主に伝えた。商業用不動産の家主に家賃収入が入らなければ、その物件を担保にした融資にデフォルト(債務不履行)が起きかねない。

融資にデフォルトが生じれば、これら融資を束ねた不動産担保証券の価格下落を招く。その火の粉は同証券を保有する不動産ファンドや同証券を担保に短期の資金を貸し出している銀行にも及ぶ。

カナダの大手銀ロイヤル・バンク・オブ・カナダ(RBC)は、融資先のファンドが保有するCMBSの価格が下落したことから「追い証」と呼ばれる追加の担保を要求。だが、このファンドは追い証を拠出することができなかったため、担保のCMBSを差し押さえた。その後もCMBSの価格下落が続いたため、RBCは損失覚悟の投げ売りを迫られている。

CMBSを担保に銀行から短期資金を借り入れていた不動産ファンドや不動産投資信託(REIT)の多くは追い証を求められているもようだ。この結果として、RBCのように損失を被る銀行は少なくないとされる。

RBCの融資先でCMBSに投資するモーゲージREITと呼ばれるファンドの運用会社、AGモーゲージ・インベスト・トラストは25日、RBCによる追い証要求を阻止するために同行を連邦裁判所に提訴した。

「コロナウイルスの感染拡大という特殊な状況下で不動産の時価を正確に把握するのは難しく、銀行が追い証を求めるのは、モーゲージREIT市場全体に打撃を与える」。AG社は訴状でこう主張した。RBCはこれについてのコメントを差し控えている。

AG社の訴状によると、米国の大手銀行の多くはコロナショックで資金繰りが悪化した不動産ファンドに対して追い証を求めない措置を検討中だという。同社はカナダの銀行も追随すべきだと主張している。

コロナショックで市場が動揺していることを踏まえ、米財務省とFRBは不動産担保証券を含めた資産の買い取りを通して市場に潤沢な流動性を供給する策を導入した。しかし、購入の対象は政府系機関が保証を付けている証券に限られている。不動産ファンドの多くが保有している政府保証のついていないCMBSは対象になっていない。

米商業不動産市場の業界団体、CRE金融評議会は24日、FRBによる資産買い取りの対象に政府保証のないCMBSも加えることを政府に提言している。

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