JFE、背水の構造改革 市況悪化で京浜の高炉休止へ

2020/3/27 22:33
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国内鉄鋼2位のJFEスチールは27日、東日本製鉄所の京浜地区(川崎市)の高炉休止を含む構造改革を発表した。2024年3月期中に高炉1基と関連設備を休止し、国内の粗鋼生産能力を13%削減する。中国勢の増産を受けた市況の悪化などが理由だ。今後は新型コロナウイルスの感染拡大による需要減も予想される。2月に大規模な能力削減を表明した国内首位の日本製鉄に続き、背水の対応を迫られる。

「世界経済の失速による鋼材市況の低迷や需要の減少は今後も続く。競争の激しさを踏まえれば、当社の生産能力は過剰だ」。JFEスチールの北野嘉久社長は記者会見で、高炉休止の背景をこう語った。

休止する京浜地区の高炉は、粗鋼生産能力で約400万トン。自動車用鋼板などを加工する熱延設備も休止する。京浜地区はもともと稼働中の高炉が1基しかないため事実上、一貫製鉄所としての役割を終える。

合理化の対象となる従業員は約1200人。協力会社を含め、約3200人の雇用に影響する。配置転換などで対応するが、地域の雇用への影響は必至だ。一連の構造改革で、年間で600億円の収益改善を見込む。

これを受け、持ち株会社のJFEホールディングスは27日、20年3月期の連結最終損益(国際会計基準)が1900億円の赤字(前期は1635億円の黒字)になりそうだと発表した。130億円の黒字を見込んだ従来予想から一転、過去最大の最終赤字に転落する。東日本製鉄所の資産価値を引き下げ、約2200億円の減損損失を計上することが響く。

JFEスチールは02年に川崎製鉄とNKKが統合し、03年に設立した。製鉄所を東日本(高炉2基)と西日本(高炉6基)の2つに大胆に集約し、競争力を高めてきた。東日本の京浜地区は旧NKKの主力製鉄所の一つ。産業向けの厚板や鋼管などが主力だ。

ただJFEは長らく「西高東低」問題を抱えてきた。実質的に稼ぎ頭となってきたのは粗鋼生産能力の約7割を占める西日本製鉄所。自動車用鋼板を大量に生産し、コスト競争力が高い西日本に対し、東日本は競争力の低さを指摘されてきた。

合理化の背中を押したのは、まず米中貿易戦争の長期化だ。景気減速などで鋼材需要が低迷している。一方で世界の粗鋼生産の5割を占める中国は増産ペースを加速。世界の鋼材市場で価格が下落するなか、鉄鉱石など原材料価格の高騰に歯止めがかからない。こうした環境の激変を受け、収益力が低い京浜地区の高炉休止に踏み切った。

鉄鋼業界では国内首位の日本製鉄も2月、20年3月期の最終赤字が4400億円と過去最大になる見通しを発表したばかり。呉製鉄所(広島県呉市)の閉鎖や和歌山製鉄所(和歌山市)の高炉1基休止などを通じ、国内の粗鋼生産能力を1割削減する。

国内の鉄鋼業界は19年時点で3割程度の設備過剰を抱えるとされる。日鉄やJFEが相次ぎ発表した能力削減は全体の2割強に相当するものの、なお余剰感が残る。

先行きを一段と厳しくしているのが、新型コロナウイルスの感染拡大だ。トヨタ自動車などの顧客が世界で相次ぎ工場を停止しており、今後の粗鋼生産量は大幅な減少が予想される。

記者会見するJFEスチールの北野社長(27日、東京都中央区)

記者会見するJFEスチールの北野社長(27日、東京都中央区)

北野社長は会見で「コロナの影響は今回の構造改革の決め手ではない」と話した。ただ、日鉄やJFEスチールなど国内の高炉大手は生産量の約4割を輸出に頼る。北野社長は需要がさらに減った場合、「(他の拠点の)高炉の一時休止も選択肢だ」と語った。

SMBC日興証券の山口敦シニアアナリストは「コロナショックによる粗鋼の減産量は予測ができない。仮に1年程度、自動車の減産が続けば国内の年間粗鋼生産量が半減する可能性すらある」と話す。国内3位の神戸製鋼所を含め、今後は各社が一段の合理化に踏み込む可能性がある。

ある鉄鋼業界関係者は「新型コロナをきっかけに、幅広い業界で設備の過剰などの弱点があぶり出される。今後は鉄鋼だけでなく、造船や化学などでも再編が加速するだろう」と指摘する。日鉄やJFEが表明したリストラは、製造業に今後波及する合理化や再編の号砲となりそうだ。

(川上梓、森国司)

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