大韓航空内紛、弟に軍配 「ナッツ姫」支持得られず
株主総会で再任、対立は長期化へ

朝鮮半島ファイル
2020/3/27 22:45
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日本路線の利用者減で前期は最終赤字。足元は新型コロナの影響で経営危機にある=大韓航空提供

日本路線の利用者減で前期は最終赤字。足元は新型コロナの影響で経営危機にある=大韓航空提供

【ソウル=鈴木壮太郎】大韓航空の持ち株会社、韓進KALは27日に株主総会を開き、趙源泰(チョ・ウォンテ)会長の取締役再任を決めた。「ナッツ姫」で知られる会長の姉、趙顕娥(チョ・ヒョナ)氏は私募ファンドと組んで弟の退陣を狙ったが、主要株主の支持を得られず源泰氏が辛勝した。だが、顕娥氏側は次の総会に向けて株を買い増しており、紛争の長期化は必至だ。韓国財閥は親族間の跡目争いがときに存続の危機につながるが、韓進グループも同じ轍(てつ)を踏みかねない。

「第3-1号議案は可決されました」。議長が木づちをたたいて源泰氏の再任を宣言した。賛成が57%、反対は43%だった。源泰氏は総会に出席しなかった。

総会の最大の焦点は、3年の任期を満了した源泰氏が取締役に再任されるかだった。顕娥氏は筆頭株主の私募ファンド、KCGI(コリア・コーポレート・ガバナンス・インプルーブメント)、建設中堅の半島建設と組み、独自の取締役候補を総会で提案していた。

姉弟の確執のきっかけは2019年4月、先代会長の趙亮鎬(チョ・ヤンホ)氏が後継者を指名せずに病死したことだ。妻の李明姫(イ・ミョンヒ)氏と長女の顕娥氏、長男の源泰氏、次女の趙顕●(日へんに文)(チョ・ヒョンミン)氏が、亮鎬氏が保有していた韓進KAL株をほぼ均等に分け合った。

韓国財閥は「総帥」を公正取引委員会に届け出るルールがある。顕娥氏は弟の源泰氏が「事前の合意もなく、自らを韓進グループの総帥と決めた」と強く反発した。

顕娥氏はKCGIの姜成富(カン・ソンブ)代表に接近した。KCGIは顕娥氏が14年、客室乗務員のナッツの出し方に激怒して滑走路に向かう飛行機を引き返させた「ナッツリターン事件」を皮切りに不祥事が噴出した韓進グループに18年から出資し、支配構造の改善を要求してきた。

そこに中堅ながら資金力は潤沢とされ、韓進グループ買収の野心を持つとされる半島建設も合流した。こうして「株主連合」が結成された。

韓進KALの株主総会は予定から3時間遅れで始まり、5時間半後に終了した(27日、ソウルにある韓進KAL本社)

韓進KALの株主総会は予定から3時間遅れで始まり、5時間半後に終了した(27日、ソウルにある韓進KAL本社)

株主連合と経営側は総会での議決権行使の委任状をめぐり、激しい争奪戦を演じた。

「好況期でも赤字を出した源泰氏に経営を任せるのは酔っ払いに車のハンドルを握らせるのと同じだ」(株主連合)

「航空産業に無知な非専門経営者に任せては6カ月も持たずに経営破綻する」(韓進KAL)

両陣営は連日のようにライバルを中傷する報道資料を発表し、泥仕合の様相を呈した。

「透明経営と株主価値の向上」を標榜する株主連合は、源泰氏ら現経営陣にまつわる疑惑を次々と提起した。株主に経営者としての資質を問う作戦に打って出たのだ。

そのひとつが欧州エアバスからのリベート授受疑惑だ。旅客機の大量受注の見返りにエアバスが韓進グループ傘下の教育機関に基金を拠出するなどのリベート慣行が続いているとし、徹底した捜査が必要だと主張した。

これに対し、経営側は「18年だけでも11の捜査機関から18回以上の家宅捜索、数十回の口座追跡など強力な捜査を受けたが、航空機取引と関連した違法事実は1件もなかった」と反論した。

株主連合の主張はキャスチングボートを握る国民年金公団のほか、経営側に立つ米デルタ航空に翻意を促す狙いもあった。株主連合の関係者は「米企業はコンプライアンスに敏感。デルタは源泰氏を応援したくても、違反があれば棄権する可能性がある」とみていた。

だが、株主連合の攻撃は決定打にはならなかった。いずれの疑惑も確定していないからだ。総会前に米インスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(ISS)など議決権行使助言会社が現経営陣への支持を表明した。国民年金も26日に源泰氏再任を支持すると発表し、源泰氏勝利の流れが固まった。

株主連合は総会終了後、「提案は通らなかったが、既存のオーナー経営を変えなければならないという多くの株主の熱望を全身で感じた。韓進グループが危機から脱せるよう、株主としてあらゆる努力を尽くす」とのコメントを発表した。

注目された27日の総会を乗り切った源泰氏だが、いばらの道は続く。

株主総会は昨年12月末時点の議決権が基準だが、KCGI、半島建設は年明け以降も株を買い増し、株主連合の持ち株比率は昨年12月時点の31.98%から、3月24日現在で42.13%に高まっている。来年の株主総会で取締役を送り込み、取締役会の掌握をねらう。

今回は源泰氏の側についた株主が、来年も同じ選択をするとは限らない。不祥事にまみれた趙氏一族に向けられる韓国社会の視線は厳しい。韓国検察はエアバスのリベート疑惑の捜査に乗り出す。事実なら議決権行使のあり方も変わりうる。

大韓航空は危機にある。19年12月期の連結売上高は前期比3%減の12兆6834億ウォン(約1兆1400億円)、営業利益は同62%減の2574億ウォン、最終損益は6227億ウォンの赤字となった。日韓関係の悪化でドル箱の日本路線の利用者が減ったことが響いた。

追い打ちをかけたのが新型コロナウイルスの感染拡大による航空需要の蒸発だ。路線の9割が運休に追い込まれた。同業のアシアナ航空は従業員に3月は10日間以上、4月は15日間以上の無給休暇取得を義務付けたが、大韓航空は役員報酬の一部返上にとどまり、リストラは必至だ。

韓国財閥は総帥の代替わりのさいに親族間の紛争が頻発する。最大財閥だった現代は創業者の鄭周永(チョン・ジュヨン)初代会長の息子らが「王子の乱」と呼ばれる跡目争いを演じグループが分裂した。ロッテも創業者の息子2人が鋭く対立し、経営が停滞した。世襲経営の負の側面が噴出する鬼門となる。

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