大阪発の高級鉄道模型 リアルな阪急電車、窓枠まで
匠と巧

関西タイムライン
2020/3/30 2:01
保存
共有
印刷
その他

窓枠や床下機器など細部にこだわり阪急3300系の組み立てキットを製品化する=松浦弘昌撮影

窓枠や床下機器など細部にこだわり阪急3300系の組み立てキットを製品化する=松浦弘昌撮影

乗り鉄、撮り鉄……数ある鉄道趣味の中でも「模型鉄」、鉄道模型の世界はファンのこだわりが特に強い分野として知られる。スタートアップのTabuchi Train Models(大阪府高槻市)が提供するのは、レール幅16.5ミリメートルで80分の1サイズの「HOゲージ」だ。

レール幅9ミリメートル、150分の1サイズの「Nゲージ」は車両、レールや制御機器など一式が1万数千円程度のいわば入門編。一方、HOゲージは車両が大きい分、ファンは実車に忠実な再現を求める傾向がある。職人が製作した精巧な金属部品で作られ、車両1両分で数万円する超高級品だ。4~6月に5セットを販売する予定の組み立てキットは、7両セットで35万円程度を想定する。

田淵悠真社長は大阪府高槻市出身の29歳。幼少のころから「プラレール」に親しみ、年を重ねて鉄道模型にステップアップ。阪急電鉄京都線を走る「3300系」の模型製作を夢見るようになった。3300系は地下鉄堺筋線への乗り入れ用に1967年に導入が始まった主力車両。だが、HOゲージでは製品化されておらず、自ら製作する機会をうかがっていた。

ポイントは設計図だ。「HOゲージはファンのこだわりが強いだけに実際の設計図と寸分違わぬものが求められる」(田淵社長)。10年ほど前から車体、床下機器などを様々な角度から写真撮影。数万枚の写真データと市販の書籍を参考に、CAD/CAM(コンピューターによる設計・製造)を駆使して設計図を完成させた。起業後は阪急電鉄の商品化許諾を取得したのに伴い、設計図の提供を受けた。田淵社長は「自力で書いたことに驚かれた」と胸を張る。

車体は厚さ0.4ミリメートル、床板は同0.6ミリメートルの真鍮(しんちゅう)製。厚紙で車両を自作するファンも多いが、金属製に比べて重厚な走りは望めない。

田淵社長が力を入れたのが窓枠や床下機器など細かな部品だ。阪急電車は窓にアルミサッシが使われている。大手メーカーが販売する阪急電車の模型では簡素化されている。

床下機器などは3Dプリンターで忠実に再現したものをベースにシリコーンゴムで型を金属加工業者に製作してもらい、鋳造で実物に近づけ製作した。車体のプレスや部品の製作など加工業者は模型店などの情報を頼りに大阪を中心に探し、見つからなければ東京まで出向いた。

矢野経済研究所の調べによると鉄道模型の市場規模は年100億円程度で、業界推計では80%を占めるNゲージに比べて、HOゲージは15%程度。もっとも、樹脂製で量産されるNゲージに対しHOゲージは職人の技が欠かせない「伝統工芸」だ。高齢化、後継者難で加工業者が減少し、ものづくりのネットワークを使って加工委託した車両を独自販売する模型店も減っている。

田淵社長は床下機器など部品単品での販売や旧国鉄時代の車両製作なども視野に入れ、「職人の技が生きる鉄道模型の分野から、大阪のものづくり振興に貢献できたら」と話す。

(東大阪支局長 苅谷直政)

保存
共有
印刷
その他

電子版トップ



[PR]