EU首脳会議、危機時でも結束示せず 市場に不安も

2020/3/27 15:30
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【ブリュッセル=竹内康雄】欧州連合(EU)は26日、首脳によるテレビ会議で新型コロナウイルスを巡る経済対策を先送りした。感染者の多いイタリアやスペインを念頭に支援策を議論したが、財政の認識を巡って溝を埋めきれなかった。危機時でも結束できなかった事態はウイルス封じ込めの対応の遅れから、感染拡大を招いた状況に重なる。金融市場に不安を与える可能性がある。

EU首脳によるテレビ会議後に記者会見するミシェルEU大統領(ブリュッセル)=ロイター

会議の焦点は大きく2つあった。一つは欧州債務危機時に設けられた安全網、欧州安定メカニズム(ESM)の活用だ。ESMは4100億ユーロ規模の融資能力を持ち、資金繰りに困った国を国債購入などを通じて支える常設機関。ユーロ圏財務相会合のセンテーノ議長(ポルトガル財務相)は25日、ミシェルEU大統領への書簡で首脳間で合意するよう促していた。

首脳が活用に合意すれば、各国は国内総生産(GDP)の2%に当たる額を予備的な信用枠として申請できる。新型コロナの感染拡大後、イタリアやスペインの国債利回りが上昇する場面があり、ESMの活用が合意されれば、市場に安心感を与えると期待されていた。

反対したのはオランダだ。ESMの支援を受けると、欧州委がその国の財政状況を監視するルールがある。イタリアなどは無条件の活用を求めたが、オランダのルッテ首相は「条件が必要だ」と反論した。「ESMはラストリゾート(最終手段)」とも語り、活用は時期尚早と主張した。

とはいえ、ドイツもESMの活用には理解を示しており、最終的にはEUとして合意する可能性が高い。首脳らは会議後の声明でユーロ圏財務相会合に2週間以内に、条件などを含めた具体案をまとめるよう指示した。

もう一つは「ユーロ共同債」だ。新型コロナ対策に使われることから「コロナ債」とも呼ばれるこの債券構想について、フランスやスペイン、イタリアなど9カ国は25日、ミシェル氏に送った書簡で実現を呼びかけた。「一致団結してこの危機に対応するとのメッセージを送るため」という。

だが共同債はESMの活用よりもハードルが高い。「ESMで十分だ」。メルケル独首相は26日に明確に反対した。ルッテ氏も「どんな条件でもオランダが共同債を支持する姿が見えない」と拒否した。オーストリアやフィンランドも慎重だ。債券の共同発行は債務を共通にすることを意味する。財政規律を重視する北部欧州諸国にとっては、財政状況の悪い南欧の借金を肩代わりすることにつながりかねず、簡単には認められない。

「危機に直面して欧州は迅速に行動する必要がある」。会議後に記者会見したミシェル氏は歩み寄りを訴えた。会議は予定を大幅に超過して6時間に及び、対立の根深さを印象づけた。財政を巡る北部欧州と南欧の認識の違いはもともとあるが、危機にひんしてもなお団結を示せなかった。

S&Pグローバルは26日、20年のユーロ圏の成長率が前年比2%減になるとの予測を公表した。対応が遅れれば、経済面への悪影響は一段と深くなりかねない。

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