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まずは転職してみよう ポスト終身雇用のキャリア戦略

2020年 変わる働き方(4) リンクトイン・ジャパン代表 村上臣

リンクトイン・ジャパン代表 村上臣氏
comemo
次代を担う「旗手」は何を感じ、何を考えているのか――。日本経済新聞社が運営する投稿プラットフォーム「COMEMO」から、「キーオピニオンリーダー」が執筆したビジネスパーソンにも役立つ記事を紹介します。ビジネスSNS(交流サイト)で人材サービスを展開するリンクトイン・ジャパン(東京・千代田)の代表でもあり、複数のスタートアップ企業で戦略・技術顧問を務める村上臣さんに、第4回は、令和時代のキャリア戦略について語ってもらいます。

<<(3)山ごもり休暇で職場は変わる 働き方改革は休み方改革

これまでお話してきたように、終身雇用を前提とする働き方が大きく変わり、令和時代には個人がキャリア戦略を考えることが必要になってくるでしょう。いったん立ち止まって自身を振り返り、違う業種や会社にも目を向け、転職や独立を視野に入れた上で、必要なスキルをはっきりさせて学ぶ。このように「自分のキャリア戦略」を考える上で、ポイントとなることは何でしょうか?

令和時代のキャリア戦略とは?

2019年6月、カジュアル衣料品店「ユニクロ」を運営するファーストリテイリングが優秀な若手の確保に向けて人事制度を見直すというニュースが話題になりました。入社後最短3年で、年収は最大3000万円程度とするというものです。今後はこうした人材獲得競争が激しくなりそうです。

こうしたなか、個人はどのようなキャリア戦略をとればよいのでしょうか。その準備段階として、どのような戦略をとるにしても必要不可欠であり、かつ重要なスキルが「環境適応能力」です。

これまでは終身雇用を前提とする会社が多く、働く環境の多くは勤務する会社に依るところが多かったでしょう。しかし、これは悩ましい話で、人は働く環境に慣れれば慣れるほどそれを変えにくくなるものです。いかにしてこの「コンフォートゾーン」(心地よい空間)から出る努力ができるか、常に学ぶ姿勢をもてるかが何より重要になります。そのために一番手っ取り早い方法が、会社を変える経験をすることでしょう。

とはいえ、成果を出さずにすぐに転職を繰り返すのも良くありません。20歳代の終わりで1回、30歳代後半から40歳代前半でもう1回。ここがピークになるつもりで頑張るというのが、多くの方にとって良い転職になるのではと思います。

もちろんこれを過ぎたとしても「学ぶ姿勢」さえもっていれば、まだまだ大丈夫です。世の中には60歳を過ぎて起業し、上場まで果たした人もいます。人生100年、楽しく働き世の中をより良くする一翼を担う実感が得られたならば、充実した人生といえるのではないでしょうか。

今こそ考えたい「40歳定年制」

日本企業ではかつては社内の異動(ローテーション)を通じてそのときに必要な知識やスキルを追加してくれる制度が機能していました。今は会社側にそのような形での人材育成の余裕がなくなってきており、むしろ即戦力を求めて外部人材に目を向けるようになりました。その際には、職務を明確にした専門人材として「ジョブ型」での雇用が広がっています。

終身雇用がもはや前提ではない時代、個人はどうすればよいのでしょうか? 一つの解として、東京大学の柳川範之教授は「40歳定年制」を提唱しています。

村上さんはキャリア戦略を考えるうえでまず会社を変える経験を勧める

「40歳定年制」を念頭におけば、一旦立ち止まって自身を振り返り、違う業種や会社にも目を向けることで、自身の強み・弱みを知り、弱みを補完するために必要なスキルもはっきりするでしょう。国や企業はこのようなスキルアップを応援することで、より労働市場が活性化し、ひいてはより経済が発展することにもつながるでしょう。

楽しくやりがいを感じられる働き方を実現するために、一度は「自分のキャリアの棚卸し」をしてみると良いでしょう。

増えるフリーランス、社員の独立支援をする会社も

内閣府が19年7月に公表した調査によると、フリーランスとして働く人の数は国内の就業者のうち約5%を占めているそうです。つまり「20人に1人はフリーランス(副業含む)」ですから、意外と多いという印象ではないでしょうか。

一方で、健康保険や社会保険、労働者としての権利保証などは終身雇用を前提に作られています。働き方改革が「より個々人が希望する働き方を柔軟に受け入れることで、社会全体の生産性をあげ、ひいては経済成長と個人の幸せを最大化する」ことだとすると、まだまだ制度面が遅れている状況です。

この状況を打開するヒントが、健康機器大手タニタ(東京・板橋)の取り組みです。体組成計や食堂などでおなじみの会社ですが、率先して大胆な働き方改革を実施している健康経営企業でもあります。

タニタはなんと、副業推進よりさらに踏み込み、希望する社員にはタニタの仕事を続けながらフリーランス(個人事業主)として独立することを支援しているそうです。フリーランスになれば、それこそ時間も場所も制約なく働けるので自由度は格段にあがります。また、経費計上枠も増えるので、実質手取りが増えることもあります。

独立するにあたって不安なのは、仕事が受注できるかということと、社会保障が心もとない点です。この点もタニタではサポートしています。

タニタの谷田千里社長は社員が個人事業主として独立するのを支援する

会社から見ると支払いコストはほぼ変わらないですし、自由に働きたい社員にはこれ以上ない制度。そして、スキルアップのための費用はフリーランスであれば経費化できるので、成長したいと思っている人にはもってこいでしょう。もちろん、従業員の社員化には偽装請負にならないかなど、慎重に検討すべき課題があることも事実です。しかし、自身の専門性を活かしながら様々な形で社会に貢献していきたい、独立してがんばりたいという方には良い制度だと思います。

もちろん、住宅ローンや各種制度がまだまだ「正社員」前提で構成されているのも事実です。実際には、全労働者のうちフリーランスは5%、37.9%は非正規社員です(総務省「2018年労働力調査」)。これらの状況からも、国としての法整備、社会保障の改革は待ったなしだと思います。

社会でどんな価値を発揮できるか

自分のキャリア戦略を考える上で大事なことは、まずは「総合職」中心の考え方が終わり「専門職」という働き方の時代がくることを理解することです。そして、自分が社会の中でどういうバリューを出していけるのかということを意識していかなければなりませんし、そこに自分の思いなども反映させていく必要もあります。

私自身、エンジニアからキャリアをスタートさせ、ディレクターとしての立場を経て経営へと、キャリアチェンジしながらここまで進んできています。経営者としてものづくりの現場経験があることは私の強みですし、結果的には理想的なキャリアを積み重ねてくることができたと思います。しかし、私自身、すべて戦略どおりというわけではありません。与えられた環境の中で、自分がどういうバリューを出せるか、それを常に考えていました。キャリア戦略では、自分の戦略を現場でどう実現していくかを考えていくことが大切なのです。

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村上臣
青学大理工卒。在学中に電脳隊を設立。経営統合した携帯電話向けソフト開発、ピー・アイ・エムとヤフーとの合併に伴い、2000年ヤフー入社。ソフトバンク(当時)による買収に伴い06年、英ボーダフォン日本法人出向。11年ヤフー退社、12年同社復帰、執行役員チーフ・モバイル・オフィサー(CMO)。17年リンクトイン・ジャパン代表。

=この項おわり

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