顧客重視か従業員の安全か Amazonを襲うジレンマ

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ネット・IT
北米
2020/3/27 6:44
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4月1日まで閉鎖を決めたアマゾンの物流施設(米ケンタッキー州)=ロイター

4月1日まで閉鎖を決めたアマゾンの物流施設(米ケンタッキー州)=ロイター

【シリコンバレー=白石武志】外出規制に伴うネット通販需要の急増に直面する米アマゾン・ドット・コムが、従業員の安全確保に悩んでいる。同社の米国内の物流施設でも新型コロナウイルスの感染例が増え始め、従業員や当局から対策が不十分だという声が上がり始めたためだ。働き手の不安をいかに解消しながら、消費者のサービス継続への期待に応えるか。経営陣は難しいかじ取りを迫られている。

アマゾンは26日、従業員3人の新型コロナ感染が確認されたケンタッキー州ルイビル郊外にある物流施設を4月1日まで閉鎖すると明らかにした。米国内ではこれまでも複数の物流施設や小売店舗で従業員らの感染例が報じられているが、多くの施設は消毒作業後に短期間で営業を再開しており、1週間の閉鎖を決めたのは初めてとみられる。

米メディアはケンタッキー州の施設についてアマゾンはもともと早期の再開を予定していたが、感染拡大を懸念する従業員が反発したことで長期の閉鎖を余儀なくされたと報じている。同社の広報担当者は閉鎖の判断について「知事の命令によるものだ」としており、「再開するために保健当局や知事と緊密に連携していく」とコメントした。

全米の多くの都市で外出禁止などの行動制限がかかるなか、アマゾンは急増する生活必需品や医療用品などのネット通販需要に応えるため物流施設の稼働を続けている。梱包や配送などの能力を引き上げるため、16日には米国で10万人を新たに採用する計画を表明。新型コロナの影響で職を失った人々の一時的な雇用の受け皿となる考えを示していた。

ネット通販は外出が困難な高齢者らにとっての「ライフライン」ともなりつつあり、ジェフ・ベゾス最高経営責任者(CEO)は従業員に宛てた21日付のメッセージの中で「我々の仕事が最も重要な時だ」と強調した。犬猿の仲で知られるトランプ米大統領の発言まで引き合いに出し、「皆さんの仕事に感謝しているのは私だけではない」とも述べていた。

アマゾンでは従業員らの働きに報いるため、米国では最低時給を15ドルから17ドルに引き上げるとともに、感染が確認された場合には最大2週間分の給与を支払う措置を表明している。ただ、米マサチューセッツ州のヒーリー司法長官は2週間の有給休暇について「公衆衛生を保護するには不十分だ」として15州の司法長官の連名で改善を求める書簡を25日にアマゾンに送っている。

米国では同僚の感染を報道や社内の噂などで知った従業員もいると報じられており、会社側の情報開示姿勢に対する不満も強まっている。ベゾス氏も「皆さんがストレスを感じていることは知っている」と社内に広がる不安を率直に認めている。

外出禁止に伴う「巣ごもり消費」の拡大は、アマゾンのネット通販サービスの顧客基盤を広げる結果になるとの見方もある。過去1カ月間のアマゾン株の下落率は3%と、10%を超えるアップルなど他の米IT(情報技術)大手に比べ落ち込みは小幅にとどまる。株式市場はベゾス氏らの危機管理能力を慎重に見極めようとしているようだ。

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