新型コロナ・原油安直撃 プラント業界に延滞金リスク
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2020/3/30 2:00
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米ルイジアナ州キャメロンのLNGプラント

米ルイジアナ州キャメロンのLNGプラント

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「原油価格の低迷が続けば、世界のエネルギー会社の設備投資に影響が出かねない」。重工大手幹部は市場環境についてこう警戒する。

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プラント業界はここ数年、世界のエネルギー会社の旺盛な設備投資意欲を追い風に大型案件を受注してきた。千代田化工建設や三井E&Sなど建設中の案件で巨額損失を計上し、受注案件の精査を強化する動きもあったが、経営の安定性が高い日揮ホールディングスは大型案件を次々と獲得。18年にカナダの大型液化天然ガス(LNG)プラント工事、19年秋のアフリカのモザンビークでのLNGプラント工事など、大型案件を次々と獲得してきた。

日揮は昨年11月の決算発表の場で「2、3年前は投資が控えられていたが、最近は原油価格が50~60ドルあたりで推移しており、顧客も積極的に投資をしようという動き」と話しており、市場環境が明るいことを示していた。

しかし3月6日に開かれた石油輸出国機構(OPEC)と非加盟産油国で構成する「OPECプラス」の交渉が決裂し、協調減産が終了することで原油価格は急落。1バレル20ドル台で推移している。3月25日には国際石油開発帝石が原油価格の下落を受けた影響についてコメントを公表し、グループの投資計画を見直すなどの対策を講じる考えを明らかにした。26日にはJXTGホールディングスも原油価格の下落などで20年3月期の連結最終損益が3000億円の赤字に転落する見通だと発表するなど、客先の設備投資意欲の低迷は避けられない状況だ。

受注環境の悪化とともに、プラント会社を悩ませる要因がもう1つある。世界中で広がる新型コロナウイルスだ。

プラント建設地に機器を輸送するプラント業界にとって、新型コロナウイルスによる世界の荷動きの低下は、プラント工事の納期に影響する。最近の大型プラントは、プラントを複数のブロックに切り分けて、建設地から離れた場所でブロックごとに建造する「モジュール工法」を採用しているものもある。モジュールは人件費の安い中国や東南アジアの造船所などで建設することも多く、一工程の遅れが全体の納期に影響を及ぼす可能性が高まっている。

あるプラント会社関係者は「中国では2月、感染拡大を防ぐために人の移動を制限していた。造船所の稼働や船の荷役が遅れたりなどの影響が出ている。これが中長期でプラントの納期に影響が出る可能性がある」と警戒する。

基本的に客先とプラント会社は、契約を締結する際に、契約の不履行や遅延の免責を認める「不可抗力条項」を定めている。プラント会社では、新型コロナウイルスのような予測や制御のできない外的要因については同条項が適用されるとの見方が強いものの、ある業界関係者はこう警鐘を鳴らす。「発生した遅延のうち、どこからどこまでが新型コロナウイルスによるものかを証明するのは難しい。その判断を争うケースが多発するだろう」。

エネルギー会社も原油価格の急落だけでなく、世界的な経済低迷でエネルギー需要の低迷が懸念され、資金は喉から手が出るほど欲しい状態だ。新型コロナウイルスの影響で生じる遅延損害金を誰が負担するかの争いが激化するのは避けられそうにない。

プラント業界は相次ぐ経営危機で業界全体の経営体力が低下していた。新たに忍び寄る2つのリスクを乗り越えられるかどうか、再び各社の経営体力が問われている。

(日経ビジネス 長江優子)

[日経ビジネス電子版2020年3月26日の記事を再構成]

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