苦境オケ、配信に託す調べ 関西でも相次ぐ公演中止
文化の風

2020/3/27 2:01
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新型コロナウイルス対策のため、オーケストラなど多くのコンサートが中止を余儀なくされている。音楽家たちはインターネットを通じた演奏で、配信ならではの表現を探っている。苦境の中、新たなファン獲得につながる可能性もある。

動画を収録するセンチュリー響のメンバーら

動画を収録するセンチュリー響のメンバーら

動画の強み発揮

「我々演奏家は演奏する場所を失いつつあります。そんな今、私たちにできることは演奏すること」――。日本センチュリー交響楽団コンサートマスターの松浦奈々が動画サイト「ユーチューブ」を通じて語りかけた後、弦楽セクションのメンバーとともに演奏を始めた。披露したのは、チャイコフスキーの弦楽セレナード第2楽章。沈みがちな気分が晴れるような曲だ。

楽団は12日の定期演奏会を中止。「お客様のために何かできないか」と考えた松浦ら楽員の有志が集まり、配信を計画した。同日以降、弦楽や木管と様々に編成を変え、クラシック音楽だけでなく卒業ソングなども断続的に配信している。

松浦は「普段当たり前のように演奏会をしていたが、それがなくなることがこんなに寂しく、不安なのだと感じた」と語る。自粛が長引くことで、生活に不安を感じる楽員がいるという。楽団のツイッターが配信の告知とともに寄付を募ると、約1週間のうちに200件超の寄付が集まった。「楽団を知らない人に知ってもらえる機会になった」(松浦)

ライブドローイングの作品を前に話す指揮者の井上道義(左)と、グラフィックアーティストのカズ・オオモリ=飯島 隆撮影

ライブドローイングの作品を前に話す指揮者の井上道義(左)と、グラフィックアーティストのカズ・オオモリ=飯島 隆撮影

出会いの契機に

大阪フィルハーモニー交響楽団は、19日の定期を無観客とし、クラシック専門配信サイト「カーテンコール」で無料配信した。指揮は元首席指揮者の井上道義。もともと自粛には懐疑的だった。「音楽は命をかけてやるもんだ」。戦時下でも行われた演奏会を引き合いに、こう強調していた。

そんな井上だけに、転んでもただでは起きない。グラフィックアーティストのカズ・オオモリに、ストラヴィンスキー「春の祭典」の演奏に合わせたライブドローイングを急きょ依頼した。「多くの人はクラシックに出合っていない。配信はこんな面白い世界があるんだと知ってもらえるチャンス」(井上)。ライブの視聴者は19万4千人に上った。ドローイングと演奏の様子を合わせたアーカイブも見られるようにする。

びわ湖ホール(大津市)は7、8日にワーグナーの楽劇「神々の黄昏(たそがれ)」を配信。延べ約36万人が視聴し、話題を呼んだ。公演から数日間で約300万円の寄付を集めたほか、チケットの払い戻しをせずに代金を託す人も相次いでいる。

ただ、払い戻しによる損失は約6千万円に上る見通し。動画配信に注目したファンを、自粛が解けた後のホールにいかに呼び込むかが課題となる。

演奏者 入国制限で足止め

政府は大規模イベントの再開に関し、引き続き慎重な対応を要請している。さらに、欧州からの入国制限が強化されたことが、海外アーティストの出演が多いクラシック音楽界に追い打ちをかけている。

関西フィルハーモニー管弦楽団は31日の定期演奏会の中止を決めた。動画配信の可能性も探っていたが、ソリストのイタリア人クラリネット奏者、アレッサンドロ・カルボナーレが来日できなくなった。

ドイツのベルリン・コンツェルトハウス管弦楽団第1コンサートマスターの日下紗矢子は4月、地元の兵庫県芦屋市で「芦屋国際音楽祭」の初開催を予定していたが、入国制限を受け断念した。来年3月、改めて開催する予定だ。

びわ湖ホールでは6月、イタリアのパレルモ・マッシモ劇場のオペラ公演を控える。現段階で公演の予定に変更はないが、山中隆館長は「入国制限で公演がなくなれば、損失が拡大する恐れもある」と気をもむ。

(西原幹喜)

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