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ドラッグ再編を誘発、コスモスの異色の拡大路線

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NIKKEI MJ

大型再編の始まったドラッグストア業界で、一度もM&A(合併・買収)をせずに売上高で3位となった企業がある。九州発祥のコスモス薬品だ。小商圏に大型店を出店し、徹底したローコスト運営でEDLP(毎日安売り)を実現。日常の消費を総取りしている。西の雄の「東征」は競合大手を震え上がらせ、再編の触媒となる。

博多駅から車で20分の距離にある「ディスカウントドラッグコスモス下山門店」(福岡市)。来店客はショッピングカートを押し化粧品、日用品、加工食品、酒類などが並ぶ大きな店内を巡る。1階は50台以上入る大型駐車場。どれも都市部で見慣れたドラッグストアとは異なる光景だ。

福岡市内在住の30代の女性は「食料品から洗剤まで何でもそろう。それに安いから近くのスーパーやコンビニではなく、コスモスで買うようにしている」と話す。

一方、競合幹部らは「近隣に店を出されると一番身構える」「集客力があるとわかっていながら、あんなフォーマットは作れない」と恐れる。1店舗の日当たり平均客数は約1000人。業界標準を300~400人上回る。

ライバルが警戒するコスモスの経営の肝は、まず我流の出店戦略にある。人口1万人商圏に売り場1千~2千平方メートルの大型店を建てる「小商圏型メガドラッグストア」が基本戦略だ。

一般のドラッグストアは200~1千平方メートルが多い。競合より大きい理由は明快だ。横山英昭社長は「大きい店は品ぞろえで有利。買い物がワンストップで完結する形を目指している」と語る。なかでも食品の売上高構成比を6割弱まで高め、日常的に顧客を誘う。

コスモスは1973年、薬剤師の宇野正晃会長が宮崎県延岡市に創業した調剤薬局が源流だ。ドラッグストアへの参入は93年と大手では遅いが、後発だからこその勝算があった。大型店を出店規制する大規模小売店舗法(大店法)の撤廃だ。

ドラッグの多くは小さな薬店から発展し、当時は100~500平方メートルの小さな売り場が効率的だと信じられていた。宇野氏は競合店の良しあしを研究し、小商圏の大型店が秘める可能性を確信。制度廃止を待って大型店を一気に広げた。

もう1つの特徴がオペレーションだ。ドラッグ店の売上高販管費率は大手でも20%台前半が一般的だが、コスモスは16%と圧倒的に低い。売り場の棚割りまで全店でほぼ統一するチェーンストアオペレーションで、店舗作業を平準化。日替わりの特売はせず、ポイントカードもなく、余計な販促費はかけない。「EDLPのためには、毎日安い販管費で売る必要がある。EDLC(エブリデー・ロー・コスト)を全店で水平展開するのが安さの秘訣だ」(横山社長)という。

そのうえで商談は本部が担い、メーカーが全国販売するナショナルブランド(NB)商品を一括で仕入れる。店舗拡大でNB品の購買力を高めつつ、ドミナント展開で物流費を押さえ込む。

同じディスカウントでも、ドン・キホーテは季節ごとの売れ残り品などをメーカーから大量調達。店長に売り場作りの裁量を与え「掘り出し物」を探す非日常的な楽しさを演出し売り切る。コスモスはまさにこの対極。定番商品の品ぞろえと安売りで、日常使いの消費者に狙いを定める。

同社の19年5月期の売上高は前期比10%増の6111億円と18年度で業界3位に食い込んだ。大手各社がM&Aで規模を拡大してきたのに対し、単独路線を貫いてきたことも異色だ。横山社長は「M&Aをすれば、相手先の出店地に出せなくなる。大金をかけて古い店を買うより、目先3年赤字でも、競争できる店を作る方が将来は明るい」と説明する。

冒頭の下山門店は99年に福岡1号店として開店。18年に平屋を壊して1階駐車場・2階売り場とし、約990平方メートルから1320平方メートルに増床した。既存店を2千平方メートル級に引き上げていく。競合各社は90年代に業績と知名度が伸び、郊外に広げた500平方メートルクラスの店がいまだ多く存在する。こうした店はコスモス流大型店の格好の餌食になる。(池下祐磨)     ◇

マツモトキヨシホールディングス(HD)とココカラファインが2021年10月に経営統合すると発表したのが1月末。これが大手再編の発火点とするならば、コスモスの東征は再編を速める触媒となる。

コスモスは地盤の九州地方でドミナントを形成すると、04年に中国地方、05年に四国、10年に関西、15年に中部へと進撃。そして19年4月、東京・広尾に出店して関東に進出した。

東京進出は宇野会長の創業時からの宿願だったという。「地盤をしっかり固めてからでないと、東京に出てもすぐ倒れてしまう」と出店を急がず、店の強さを磨き込むことを優先した。「生きている間に出られて良かった」と周囲に漏らす。

慎重なコスモスは現在、調剤併設など様々なタイプの店を出して「市場調査」をしている段階。だが、シフトチェンジの時は近そうだ。「関東でも小商圏型メガドラッグストアを年間20~30店出店する計画。九州で勝ち進んだことと同じことをやる」(横山社長)

ドラッグストア業界はコスモスの東征とマツキヨ・ココカラの統合の脅威の挟み撃ちになる。マツキヨ・ココカラの20年3月期の予想連結売上高の単純合算は1兆円を超え、店舗数は3千店に達する。現段階でどちらも首位に立つ見通しだ。

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