松井社長が退任「価値観、時代にそぐわず」 記者会見一問一答
松井証券は25日、松井道夫社長が退任し、和里田聡専務取締役が社長に昇格すると発表した。6月の株主総会後に就任する。松井社長は都内で開いた会見で「急速な変化の真っただ中にあって価値観が時代にそぐわないのではという危惧をずっと抱いてきた。ずっと悩んだ末、世代交代が必要だと決断した」と述べた。証券業界で手数料競争が激化するなか、トップの若返りで他社との協業や新たなビジネスモデルの構築に力を入れる。主なやりとりは以下の通り。
――なぜ今社長を退任する決断をしたのか。

松井氏「30年近く社長をやってきて、山あり谷ありだった。小さな証券会社をそれなりの会社にした自負がある。だが、ネット証券のビジネスモデルは過当競争で既に崩壊している。今後もAIやロボットなど想像もしていない変化が起きることは間違いない。若い人が担っていくべきだ。以前在籍していた日本郵船の社長だった菊地庄次郎氏は『企業の生命を延ばすためには経営者の見事な交代がなければ実現不可能』と言っていた。長年社長を務めているなかでその通りだと思って決断した」
――30年間を振り返ってどうだったか。
松井氏「古いものを捨てなければ新しいものは生まれない。捨てるのは反対も多い。新しく始めたネット証券は米国のまねにすぎないが、証券会社の外交営業を捨てたことが私にとって1番だったと思う」
――今後の松井証券はどうなる。
和里田氏「手数料無料が騒ぎになっているが、各社が無料にしても個人投資家の裾野は広がっていない。証券会社が顧客に提供できる価値はいかに(投資家の)利益が出るかということ。効率的なコスト体質を武器にして価値を提供したい」
「証券業界内だけでなく、IT大手や携帯キャリアとも競争しなければならない。我々は独立した証券業オンリーなので、顧客との接点をどう広げていくのかが非常に大きな課題。異業種との提携をオープンな形で考えていきたい」
――松井社長は今後会社とはどう関わるのか。
松井氏「経営の一つ一つに口を出すことはしない。経営者は数字が全てだ」
和里田氏「非常に近いところにアクティビストに近い株主がいると思って緊張感をもってやっていく。実際に経営していた方で、厳しい目で評価いただけると思う。他の外部株主と同じように建設的な会話が大事だと思っている」
――後任社長にはどのような言葉をかけるか。
松井氏「私の経営の路線を踏襲する必要はない。社長は一切言い訳がきかない立場だ。結果責任を問われる。多分夜も眠れない日がずっと続くだろう。これ以外にふさわしい言葉はない。ご苦労さま」