地球77周走ったリニアを待つ難路 JR東海が新型車

2020/3/25 17:47
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JR東海は25日、2027年のリニア中央新幹線品川―名古屋間開業に向けた改良型の車両を報道公開した。13年から山梨県で試験走行してきた初代営業仕様「L0系」の改良型となる。地球77周を走ったこれまでのデータを生かして、形状や性能をアップグレードした。5月にも走行試験に入るが、リニア開業までには走破する幾つもの難路が待つ。

空気抵抗を減らし流線形にした(山口県下松市の日立製作所の工場)

JR東海は日立製作所笠戸事業所(山口県下松市)で、改良型の先頭車両を公開した=写真。

「鼻」と呼ばれる車両の先頭部分は平らな部分が多かったL0系よりも凸凹が際立ち「鼻筋」が通った形状で、先端だけ従来より丸くなった。デザインは空気の流れをイメージし濃い青のラインを入れた。

同社のリニアは過去の車両で既に地球約77周分(約310万キロメートル)の走行試験を実施しており、そうした累積データを生かしている。

JR東海が開発する「超電導磁気浮上式リニアモーターカー(超電導リニア)」は品川―名古屋間を最速40分で結ぶ計画。時速150キロメートルまではタイヤで走行し、浮上して高速走行する。

最高時速500キロメートル出すために非接触で照明や空調の電気を供給する「誘導集電方式」を全面採用した。スマホの非接触充電と仕組みは似ており、地上と車体の下に設置したコイルを使って電流を生み出す。L0系は一部の採用にとどまっていたが、今回全面的に採用することでガスタービン発電装置の代わりとなり、空気抵抗の少ない形状を実現できた。スマートな見た目にグレードアップした。

約1万通りのシミュレーションから空気を逃がす最適な形を選んだ。先頭の空気抵抗を13%減らし、消費電力や車外騒音を減らせるという。誘導集電方式は地上設備が必要だが、車上装置や燃料も必要なくなり、数トン単位で軽量化できるという。リニア開発本部の寺井元昭本部長は新型車両について「営業運行に向け8~9割に近づいてきた」と自信をみせた。

改良型は先頭車両を日立が、中間車両を日本車両製造が製造している。日立は新幹線のノウハウが豊富で「量産など製造技術も高い」(JR東海)。L0系は三菱重工業も製造していたが、JR東海と価格面で折り合わず今回の試験車から手を引いた。

営業を始めるまでに新たな改良型を出すかは未定だが、量産車について改めてメーカーも選定される。今回の改良型はL0系と組み合わせた合計7両1編成として、5月末にも走行試験に投入する予定だ。

世界では異なる方式のリニアがすでに実用化されている。中国・上海で運行するのは常電導方式のリニアだ。

JR東海は自社の超電導リニア技術の海外展開も狙う。米東海岸ではワシントン―ニューヨーク間(約360キロメートル)に高速鉄道を走らせ、リニア技術の導入を目指す構想がある。まず、ワシントン―ボルティモア間(約70キロメートル)への導入を計画しており、同社は米政府関係者をリニアの試乗会に招くなど、積極的なプロモーションに取り組んでいる。

もっとも、国内で壁に突き当たり、東京―名古屋間の27年開業には暗雲も垂れ込める。静岡県の川勝平太知事が、リニアの建設工事により大井川の水資源に悪影響を与えると強い難色を示している。

難工事とされる南アルプストンネルの静岡工区は唯一、本体工事に着工できていない。JR東海と静岡県の協議は折り合いが付かず、建設スケジュールは遅れている。金子慎社長は「未着工の状態が続けば、27年の開業時期は難しくなる」と悩みを抱える。

新型コロナウイルスの感染拡大も影を落とす。出張自粛や観光旅行の取りやめが相次ぎ、稼ぎ頭である東海道新幹線の3月1日から9日までの利用者数は前年同期比56%減だった。

月次ベースでは1987年のJR東海発足以降、最大の落ち込み幅となる恐れもある。鉄道の運輸収入は1日平均で40億円弱にのぼり、業績への打撃は避けられない。

国鉄でリニアの研究開発が始まってから半世紀以上。民間企業による過去最大のプロジェクトとなり、ルート選定、建設着工と開業まで着実に歩んできた。乗客を安全に運ぶ技術を確立し、車両も進化させている。大動脈を支える使命を果たすためにも、いま突破力を試されている。(西岡杏、林咲希)

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