今日も走ろう(鏑木毅)

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乗り越えられぬ難局はない 冷静な判断、難しさ実感

2020/3/26 3:00
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新型コロナウイルスが国内外で猛威をふるっている。その影響で4月24~26日に予定されていたアジア最大級のトレイルランニングレース、ウルトラトレイル・マウントフジ(UTMF)を中止とした。客観的には大多数のイベント自粛の流れでやむを得ないが、主催者としてはあまりにもつらい。というのも実行委員長を務める私自身が現役の100マイルランナーでもあり、選手の気持ちが痛いほどわかるからだ。

ランナーの100マイルにかける思いはさまざま(2019年UTMFのスタート)

ランナーの100マイルにかける思いはさまざま(2019年UTMFのスタート)

160キロメートルを走れる体作りには数年の準備が必要になる。今年のUTMFを目指す人々からは口々に「ゴールで必ず迎えてほしい」「100マイルに挑戦すると思うから今を頑張れる」と聞いていた。なかには親の介護で今回を最後のレースとした人、自身の健康上、唯一のチャンスとなる人など、それぞれがここに注いできた膨大な熱量がある。

多くのボランティアも年間を通じ、世界中から集う選手に思いをはせて、富士山の周囲の登山道の整備を進めてきた。誰もがお祭りのようなこの舞台を待ち望んでおり、彼らの胸中を思うとこの決断は断腸の思いだった。

ランナーとして2010年の世界最高峰の舞台UTMBで、悪天候によるレース途中での中止を経験している。その一報を聞いた時、この1年の努力は何だったのだろうと、あまりの喪失感にその場に崩れむせび泣いたものだ。

そもそも国内のトレイルランニングのレースには昨年の台風19号の被害でいまだに開催目途が立たない大会が多数ある。この重苦しい雰囲気を払拭したくて、2月27日の時点では、式典やサブイベントは中止し、エイドステーションでの感染防止の対策を練った上で実施すると判断した。それから2週間、状況を見据えつつ、多くのボランティアと大会に向けてトレイル整備を行った。この中には選手として参加する人も多く、もし中止になったらと思うと胸が痛んだ。

そして今、一番危惧するのは、UTMFが国内最大規模のトレイルランニング大会のため、これからのほかの大会の開催の判断に影響しないかという点だ。

UTMFでは選手のエイドステーションでの仮眠や、ボランティアも長時間に及ぶため、感染のリスクがあるとの判断から中止を決断した。大会規模、形式、時期が変われば判断もそれぞれだ。世の中の同調圧力をしっかり受け止めてもらい、リスクを入念に分析し大会の可否を冷静に判断することを願っている。

選手として挑んだ100マイルのウルトラトレイルでは最悪の局面を乗り越える力を学んだ。特にUTMBではあまりの苦しさに何度も心が折れそうになったが、その都度私を支えたのは「必ずこの局面は打ち破ることができる」との思いだった。これこそがウルトラトレイル魂といえよう。

そして今回は主催者として、参加者の想いに寄り添いながらも、冷静な判断を下すことの難しさを痛感している。今回の中止は残念無念。人々の思いを紡ぎ上げ、来年こそは最高の大会にしたいと思っている。

(プロトレイルランナー)

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