1週間献立で休業日もあり 帰宅後20分で楽々晩ご飯

忙しい共働き世代の強い味方である、料理レシピ投稿・検索サービスの「クックパッド」。その初期メンバーかつ初代編集長であり、現在はブランディング・編集担当VPとして活躍する小竹貴子さんに、平日帰宅後に20分で晩ご飯を作るためのこつを教えてもらいました。これまで数多くのレシピに触れ、プライベートでも2児の母として子育てに奮闘してきた小竹さんならではの時短テクニックや、晩ご飯をおいしく楽しく作るためのヒントも満載です。
食事作りを頑張りすぎて疲弊 食生活のスタイルを変えた
日経DUAL編集部(以下、――) いろんなレシピをご存じの小竹さんは、きっと毎日の食事もテキパキと素早く作られているんだろうなというイメージがあります。

小竹さん(以下、敬称略) いえいえ、そんなこともないですよ。実は料理を作るのはそんなに早いほうではなくて、子どもに「わ~」っと話しかけられるとすぐ手が止まってしまって、なかなか進まないこともしょっちゅうなんです(笑)。急いでいるときは、「もう、あっちに行ってて!」とキツく言ってしまうこともあって、後で「悪かったなぁ」とシュンとなることも……。もともと料理は好きなんですけど、特に子育てが始まってからは食事作りに悩み、苦労してきました。
―― そうなんですか。ちょっと意外です。
小竹 1人目の子が生まれた頃は張り切って、毎日別のおかずを作ったり、小鉢にきれいに盛ったり、毎日の食事をきちんとしようと頑張っていたんですけど、仕事で残業になるとそのペースが途端に崩れて、「できないことへのストレス」が積み重なっていったんです。かなりしんどくなってしまって、「これは食生活のあり方を変えないといけない!」と思ったんですね。そして2人目の子が生まれたのを機に、食事作りの計画を立てることを決めました。まずは「1週間分の献立」を作って、週末にまとめて買い物をすることにしようと。そうすると1週間の見通しが立つので慌てなくなるし、安心できるんですね。それに週1回は「ファミレスに行く」と決めて、その日は食事作りをお休みすることにしたんです。
―― 週1回は休むと決めたんですね!なるほど!
小竹 これが意外にも子どもに好評で(笑)。「お母さんとちゃんと話せるからうれしい!」って言われたんです。そのときに食事の時間って、おなかを満たしたり、体に栄養を与えたりするだけじゃなくて、親子の会話を通して「心を満たす時間」なんだと気づきましたね。私自身が頑張ることをやめて、手を休めることでかえって家族が喜ぶ。これは新しい発見でした。
―― 思い切って家事を休むことも家族みんなの幸せにつながるのかもしれませんね。1週間分の献立作りをしているそうですが、どのように作っているんですか?
メインは決まった料理を 副菜でバリエーションを持たせる
小竹 週末の時間のあるときに1週間分の献立をメモに書くようにしています。メインは新しい料理に挑戦するというより、子どもが好きなものを中心に10~20個のレパートリーをローテーションで作るようにしています。すると、あれこれ献立に迷うこともないですし、何度もリピートして作り方を体で覚えているので、動きもスムーズなんですね。カレーは子どもたちも大好物なので、2週間に1回ぐらいは作りますし、肉じゃがや炊き込みごはん、夏場は冷製パスタや冷やし中華などもよく登場させます。その代わり、副菜やスープは旬の食材を使いながら、味付けのバリエーションを持たせるようにしています。
―― なるほど。どんな風にバリエーションを持たせているんですか?
小竹 副菜はサラダが中心なのですが、オイルとお酢を変えるだけで、全く味が変わるので、いろんな種類をそろえるようにしています。例えば、オリーブオイルと白ワインビネガーで、イタリアン風味になりますし、ごま油と米酢(または黒酢、ポン酢)などを合わせれば中国料理風の味に。贈り物などでいただくような果実系のお酢も、ドレッシングにするとフルーティーでおいしいです。オイルはアマニ油やアボカドオイルなどと合わせてヘルシーにするなど、そのときの気分やメインとの相性で決めますね。オイルとお酢の黄金比は、1対1。そこに塩、しょうゆなどお好みの調味料で味付けしたり、しらす、たらこ、カニかま、ちくわなどちょっと味のする食材を足したりすると、いろんなバリエーションの副菜ができて飽きが来ません。

―― 確かに、オイルやお酢、調味料、食材の組み合わせをちょっとずつ変えるだけで、味のバリエーションが広がりそうですね。ちなみに、短時間で晩ご飯を作るために何かされていることはありますか?
小竹 帰宅後に一から作るとバタバタしてしまうので、朝のうちにその日に使う材料を切っておいたり、ある程度作っておいたりします。朝材料を仕込んで冷蔵保存しておくと、帰宅後の調理がグッと短縮できます。特に子どもが小さいと、夕飯作りの忙しいときにくっついてきたりして、調理がなかなか進まないことも多いと思うんです。夜にバタバタするよりも、朝30分早く起きて誰もいない中で準備しておくほうが、負担も少なく、心にゆとりが生まれる気がします。
―― 確かに。朝食を作るのと同時に夕食も仕込んでおけば、かなり手間が省けますものね。帰宅時の「これから晩ご飯、作らなきゃ!」という焦りや憂鬱(ゆううつ)もなくなります(笑)。
小竹 本当、そうですよね。後は自分だけでやろうとしないで、「周囲の力を借りる」ことでしょうか。
―― と、言いますと?
簡単でもいい 親が子どもを思って作る姿を子どもは見ている
小竹 仕事柄、夜遅いときも多いので、ベビーシッターさんにも時々子どもの見守りや食事のサポートをお願いしているんですね。朝のうちに夕飯の材料を切っておいたり、ある程度仕込んでおいたりして、シッターさんに続きの調理をしてもらっています。他の方に食事作りをお願いすることを考えると、カレー、肉じゃがなど献立を聞いてすぐ味が想像できるもののほうがスムーズかなと。メインをメジャーどころの10~20種類に絞ってローテーションしているのは、そうした意味もあります。長女も小5になって、簡単な調理なら任せられるようになったので、助かっています。
―― それは心強いですね! 娘さんにはどんな調理を任せているんですか?
小竹 例えば、オムライスを作るときにチキンライスを包んでもらったりします。仕上がりが完璧でなくても、子どもに調理を任せることで時間が短縮できますし、料理を覚えてもらうことにもつながるかなと。というわけで、たっぷりお手伝いしてもらっています(笑)。

―― お子さんにとってもお母さんから料理を教わることができて、実りある時間になるでしょうね。
小竹 そう思ってくれていたらうれしいですが。毎日、趣向を凝らしておかず作りを頑張っていた頃は、大好きなはずの料理が嫌いになるほど、自分を追い詰めてしまっていました。でも、「それって違うよなぁ」と気づいて。その大きなきっかけとなったのが、以前「お弁当」をテーマに対談した、児童心理学の横尾暁子先生の言葉でした。先生から「子どもはお弁当の中身よりも、親が忙しい中でも一生懸命作ってくれる、その姿を見ているんですよ」とお聞きして、ふっと肩の力が抜けたんですね。確かに子どもって、少々手抜きをして作ったごはんも喜んで食べてくれるから、きっとクオリティーじゃないんだなと。簡単でもいい、凝ってなくていい、親が子どものことを思って作る。それが子どもにとっての一番の栄養なんじゃないかと思うんです。

(取材・文 伯耆原良子、写真 佐々木睦)
[日経DUAL 2019年12月2日付の掲載記事を基に再構成]
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