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延期に向かう東京五輪 緊急事態に今考えるべきこと
ドーム社長 安田秀一

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2020/3/25 5:30
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東京五輪の開催は延期に=ロイター

東京五輪の開催は延期に=ロイター

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、東京五輪・パラリンピックの開催時期が大きな話題になっています。各国や競技団体、選手らから様々な意見が噴出し、延期が決定しました。米スポーツブランド「アンダーアーマー」の日本総代理店、ドームで社長を務め、スポーツビジネスに詳しい安田秀一氏は、この状況を「人類が経験したことのない事態」と評します。当事者となってしまった日本はどうすべきか。同氏は「理性的な議論」を呼び掛けます。

◇   ◇   ◇

新型コロナウイルスの世界的な感染拡大のため、7月24日の開幕を予定していた東京五輪が正式に延期になったようです。むしろ、オリンピック開催うんぬんというよりも、世界中が一丸となって、この見えない脅威と立ち向かわねばならない、そんな緊迫した状況が続いています。

国際オリンピック委員会(IOC)や日本政府などが予定通りの開催を強調してきた流れが一変し、「延期」を軸に具体的な対応が議論されるようになりました。感染拡大が一向に収束する気配の見えない状況下、さすがに通常通りの開催は不可能ということだと思います。

この状況で軽々しく私見を述べるほどの専門知識は持ち合わせておりませんので、ここではまずファクトの整理から入りたいと思います。1つは新型ウイルスがパンデミック(世界的な大流行)となってしまったこと、次にそれが世界最大のイベントと言っても過言ではない、オリンピックの直前に起きてしまったということ。つまり、人類が経験したことのない事態に直面している、ということが最初におさえるべきファクトだと思います。

そのうえで、東京五輪の開催国である日本人が、今まさに向き合うべきは「我々はその当事者になってしまった」ということだと思っています。では、いったいどう向き合うべきなのか。僕なりに精いっぱい考えてみました。

感染症の専門家でありながら、オリンピックなどスポーツビジネスに精通している人、そんな人は世界中探してもいないでしょう。ですので、とにもかくにも我が国として最適な回答が出せるよう、「理性的な議論ができる環境づくり」が何よりも大事だと思っています。

つまり、「××の発言はけしからん」や「○○は絶対にやるべきだ」などと、断定的な意見は正解になり得ないことを、まず国民全体が認識することだと思います。同時にそういった「根拠なき上から目線」の発言を許さない空気の醸成が必要だと思います。

■人類の英知、問われている

僕個人の意見を言わせていただけるなら、議論の起点として「どうすれば最も経済的なダメージが小さいか」という目標設定をすべきだ、と申し上げたいです。もちろん、人の命に代えられる価値は存在し得るはずもありません。ただし、いまだに飢餓に苦しむ人々が8億人以上も存在している地球という「コイン」には、表に「命」、そして裏には「経済」と刻印されている実態が、良くも悪くも存在しています。困難な状況において、どのように経済を回していくか。人類の英知が今まさに問われているのだと思います。

具体的にはどうすればいいのでしょうか。

大事なことは、一にも二にもまずは経済的な損失を最小限にとどめる方向に思考も行動も切り替えることだと思います。人類が初めて体験する難局に五輪の開催国として対応しなければならないわけですから、コンティンジェンシープラン(緊急時対応計画)の発想で対処しなければなりません。もともとなかった「プランB」を新たに用意することです。

仮設スタンドの工事が続く自転車BMXの会場(東京都江東区)

仮設スタンドの工事が続く自転車BMXの会場(東京都江東区)

僕のオフィスがあるドーム本社(東京都江東区有明)の隣は自転車BMX競技の会場です。仮設施設として整備され、今も進行形で観客席の建設が続いています。おそらく、各地で同じような工事が変わらず続いているのだと思います。そもそも、オリンピック需要で工事が立て込んでいて、資材コストや建設費が高止まりしている現状です。つまり「最優先の突貫工事」でオリンピックに対処しているわけです。まずは、オリンピック向けのすべての仕事を停止、ないしは最小化すべきだと思います。

すなわち、現在の東京五輪の設計、つまり「プランA」では、すべてを最大値にした目標設定がなされています。観客数、チケット収入、グッズ売り上げ、開会式の盛り上がり、おもてなし体制など、すべて史上最高を目指して準備を進めています。でも、計画通りに開催できない可能性が生じた時点で、とりもなおさず「史上最高の大会を諦める」ことが何より早急に決断すべきことだと思います。奇跡的にウイルスが収束を迎え、大会が予定通り実現できるとしたら、それ自体が「快挙」となるはずです。観客席が未完成でも、選手村の部屋の壁紙が貼られていなくても、開催ができれば、そのこと自体を地球全体が大いなる喜びをもって受け入れてくれるはずです。

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