サムスン、ベトナム依存で打撃 往来停止拡大
新型コロナ、現代自は新車生産難航も

アジアBiz
2020/3/19 18:47
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サムスンは、ベトナムで2カ所の巨大スマホ工場を運営する(2月、北部のバクニン省)

サムスンは、ベトナムで2カ所の巨大スマホ工場を運営する(2月、北部のバクニン省)

【ソウル=細川幸太郎】新型コロナウイルスの感染拡大に伴う国境管理の厳格化がサムスン電子など韓国大手企業を揺さぶっている。韓国で早期に感染者が多数出たため115カ国・地域が同国からの入国を禁止・制限して、技術者や営業担当者らの往来が止まった。特にサムスンは最大の海外拠点ベトナムでスマートフォン生産が遅れる懸念も出るなど、ベトナム依存のリスクが表面化している。

「サムスンの新製品立ち上げのために韓国人技術者1000人の入国が必要だ。規定通り隔離されれば大きな損失が発生しかねない」。朴魯完(パク・ノワン)駐ベトナム韓国大使は6日、ベトナム政府に異例の要望を表明した。

ベトナム政府は2月末、韓国からの入国者に2週間の隔離措置をとると発表した。ビザ(査証)発給も止め「事実上の入国禁止措置」(韓国企業)を断行し、韓国の仁川国際空港とベトナム各都市を結ぶ航空路線の週436便はすべて運航中止となった。

サムスンは世界各地に生産拠点を持つ。中でもベトナムは、スマホの生産台数の5割強を占め、有機ELパネルや家電などの工場にも集中投資してきた国だ。韓国からベトナムに入国できなくなったことが同社の現地事業を直撃した。

新型スマホ向け有機ELパネルの生産ライン立ち上げを担当するサムスンの技術者らが現地入りできず、今夏発売の高機能スマホ「ギャラクシーノート」の生産が遅れかねない事態となった。文在寅(ムン・ジェイン)大統領の緊急要請もあり、ベトナム政府は例外措置として技術者182人の入国を許可した。チャーター便で入国し、生産体制の確立を急ぐ。

韓国では2月下旬から感染者数が急激に増え、一時中国に次ぐ感染者数になったため世界各国が注目した。韓国外務省によると、韓国からの入国を禁止する国・地域は100と1週間で倍増した。ベトナムのように、隔離措置を求めるのは15の国・地域だ。

金奇南副会長は「20年は半導体需要が拡大する」と語った=サムスン電子提供

金奇南副会長は「20年は半導体需要が拡大する」と語った=サムスン電子提供

サムスンはスマホ市場の縮小を警戒する。18日に開いた定時株主総会で、スマホ事業トップの高東真(コ・ドンジン)社長は「新型コロナウイルスのため今年のスマホ市場は萎縮する」と株主に説明した。特に「中国ブランドが作らない(高級)スマホでシェアを高める」と強調した。

市場は同社の先行きに懐疑的だ。韓国有進投資証券はサムスンの20年12月期の営業利益予測を33兆ウォン(約2兆8000億円)と、1月末時点から12%下方修正した。李承禹(イ・スンウ)チーフアナリストは「世界経済が鈍化しており、下半期に本当に良くなるかわからない」と語る。

サムスンの業績は半導体市況の改善で20年は回復基調が続くとみられていたが、感染症で期待は急速にしぼんだ。19日のサムスン株は前日比5.8%下げ、1月下旬に付けた過去最高値から2カ月間で31%も下落した。

同社は2月下旬に韓国中部、亀尾(グミ)市のスマホ工場で従業員が相次ぎ感染した。同工場は何度も生産を中断し折り畳みスマホ「ギャラクシー Zフリップ」など高級機種の供給懸念が高まる。

業績へのマイナス影響がより大きいのが米アップルなど主要顧客のスマホ減産だ。サムスンは自社でスマホを生産するだけでなく、半導体や有機ELパネルなどの部品を外販し、アップルには年間1兆円超分を供給している。やはり顧客の華為技術(ファーウェイ)やOPPO(オッポ)など中国ブランドの減産も長引けば、収益改善が大きく遅れることになる。

需要縮小に伴う販売減とともに生産面でのリスクが表面化したのは現代自動車も同じだ。2月上旬に中国から電装部品が調達できず、韓国の全工場が止まった。調達先の分散を進めてきたが、一部の部品で中国への依存度が高く代替調達ができなかった。

その現代自も入国制限の影響は避けられない。同社は世界7カ国に完成車工場を構えている。うちロシアやトルコ、チェコは韓国からの入国を拒んでおり、新モデルの生産立ち上げに必要な技術陣の派遣がおぼつかない。ウイルス感染を抑え込む入国制限が韓国企業の国際分業に与える影響は、今後さらに顕在化する可能性がある。

■ベトナム厳しい規制、外資系企業も苦慮

【ハノイ=大西智也】新型コロナウイルスの世界的な感染拡大を受け、ベトナムが厳しい防疫措置を続けている。2月初旬から厳しい入国制限を実施し、3月18日にはすべての外国人に対するビザ(査証)発給を停止した。外資主導で高い経済成長を実現してきたが、外国企業への打撃は大きい。

ベトナムにおける2019年の海外企業直接投資総額は前年比7・2%増の380億ドル(約4兆円)で、10年前の1・8倍に増えた。中国の賃金上昇や米中貿易戦争のあおりで、中国に工場を持つ日本企業などに人気の移転先になったことが追い風だ。

特に韓国からの投資が活発で2カ所のスマートフォン工場を抱えるサムスン電子はベトナムの輸出額の約25%を占める最重要企業に位置づけられている。

政府は早い段階から海外との往来を制限してきた。台湾系鉄鋼最大手フォルモサ・ハティン・スチール(FHS)では外国人従業員が旧正月休みから工場に戻れない状況が続いているもようだ。

中国との国境でも当初、中国へ荷物を届けたベトナム人運転手に14日間の隔離を求めた。両国間の物流は通常の8割程度まで回復しているとされるが、日系大手メーカーの幹部は「例外を許さない厳しい措置で他国からの原料調達を余儀なくされた」とこぼす。

ベトナムは中国と同様に共産党政権が続く。グエン・スアン・フック首相は「国民の健康のために短期的な経済的な利益を犠牲にしても構わない」と繰り返し述べている。域内最高の7%成長が続いており、逆風を受けとめる余力が大きいことも政府の政策に影響している。

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