女性起業家の手で蔵の町に新風、宮城県村田町
東北6県 気になる現場

2020/3/19 18:38
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2月に財政非常事態宣言を出した宮城県村田町で、温めていた地域創生の事業が動き出した。「まちづくり村田」は一般社団法人の伊達女(だてのくのいち)と連携し、女性起業家による同町での事業展開を促す。その拠点となるのは大正時代から続く蔵だ。国の保存地区にも指定されている蔵の町並みが再びにぎわいを取り戻そうとしている。

伊達女の小濱さん(右から2番目)らは使用されていなかった蔵を整備し、起業を目指す女性の「インキュベーション・ラボ」としてよみがえらせた

女性の起業支援などを手掛ける伊達女の小濱裕美代表は長年使用されていなかった村田町にある蔵を団体の拠点とすると決め、2019年11月に自ら改装を始めた。蔵ではカフェ運営などを通じて実践的に経営を学んだ後、同町で起業を目指す女性の「インキュベーション・ラボ」とする。

伊達女の活動はまさに土くさい。当初の蔵の中は足の踏み場もない荒れた状態で「マスクを2重にしても鼻の穴が真っ黒になった」と小濱さんは笑う。入居予定の女性3人と化学洗剤を一切使わず、昔ながらの方法で蔵の隅々を磨き、よみがえらせた。

1階はその日入った食材で作ったメニューを提案するカフェ「ル・ココン藍」として4月4日にオープン。運営を担当する佐々木芳美さんはカフェで経営を学び、いずれは村田町でゲストハウスを開く目標がある。店内では有機野菜や地元食材も販売し、藍染めなどの体験教室を受け付ける。2階は女性起業家のコワーキングスペースだ。

店名の「ル・ココン」はフランス語で「繭」を意味する。かつて蚕を飼っていた町の歴史と「ここから羽ばたいてほしい」(小濱さん)という希望を込めた。

17年に町と民間の共同出資で設立された「まちづくり村田」の千葉勝由専務は「他の地域にはない強みを伸ばすには、町の歴史を掘り起こして、時代にあったものに磨き上げることだ」と話す。

町はかつて京都など上方と紅花や藍の交易で栄え、その名残である蔵が20以上残る。ただ、使われていない蔵も多いのが現状だ。「人を呼び込むポテンシャルはあるが、担い手が必要だった。伊達女にはプレーヤーとして活躍してほしい」と期待を込める。

一方、村田町の財政は待ったなしの改革が求められている。2月には財政非常事態宣言を公表。町の貯金である財政調整基金は18年度末時点で2億9500万円と5年間で66%減少したためだ。

貯金を切り崩さざるをえなかったのは、人口減少による自主財源の減少や、福祉や医療費にかかる扶助費が10年前から6割程度膨らみ約5億円と高止まりしているからだ。財政規模に対する借金返済の割合を示す「実質公債費比率」も県内では最も高い13.6%(19年11月時点)に達し、財政を圧迫しているという。

町は当面の対策として、20年度は役場職員の月の基本給を一律3%削減するほか、管理職手当を10%減らす。さらにふるさと納税の強化などで歳入拡大に努める方針だ。22年ごろには自動車部品メーカーのケーヒンの新工場が稼働する予定で、一定程度の税収の増加は見込める。

ただ、現在の同町の人口減少率や高齢化率は、県内の他の市町村と比べて突出しているわけではなく、今後もこの傾向が続く可能性がある。19年の同町の推計人口は5年前と比べ5%減と南三陸町(19%減)や女川町(15%減)より減少は緩やかで、総人口のうち65歳以上が占める割合を示す高齢化率も33%と県内の35市町村の中では18位だ。

人口減少や高齢化といった地方の自治体の多くが抱える共通の課題とどう向き合うか。伊達女の小濱さんは「かっこつけず、かっこよく」を団体のモットーに掲げる。土くさい新風の行方が気になる。

(仙台支局 渡辺絵理)

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