トランプ氏、非常時対応を連発 新型コロナは「戦時」

2020/3/19 16:21
保存
共有
印刷
その他

トランプ米大統領は18日の記者会見で、新型コロナウイルスとの「戦争に打ち勝つ」と強調した=ロイター

トランプ米大統領は18日の記者会見で、新型コロナウイルスとの「戦争に打ち勝つ」と強調した=ロイター

【ワシントン=河浪武史】トランプ米大統領が新型コロナウイルス対策で非常時対応を連発している。過去最大の1兆ドル(約107兆円)規模の経済対策は週内決着へ調整を加速。18日には朝鮮戦争時の国防生産法を発動してマスク増産を指示した。国内の感染者は2日間で倍増し、株価も大統領就任前の水準に逆戻りした。弾劾裁判など数々の逆風を受けた同氏だが、11月の大統領選を前に最大の試練を迎える。

「自分は戦時の大統領だと思っている。戦争には打ち勝たなければならない」。トランプ氏は18日の記者会見で「戦時」を強調した。同日には朝鮮戦争時の1950年に成立した「国防生産法」をわざわざ発動して、マスクの増産をメーカーに要求。国防総省も500万枚ある備蓄マスクを医療機関に拠出し、医療ベッドを備えた「病院船」をニューヨーク州に派遣することも決めた。

トランプ政権は国家非常事態を宣言した13日、100ページに及ぶ新型コロナ対策の内部資料をまとめている。米紙ニューヨーク・タイムズが明らかにした同資料には「米国防生産法」の発動も盛り込まれ、政権の対処方針を読み取ることが可能だ。そこでは「新型コロナの大流行が18カ月かそれ以上続きうる」と長期化する可能性も明示。11月の選挙を前に短期で終結させたいトランプ政権が、危機意識を一気に高めた一因となった。

18日には隣国カナダとの国境を一時閉鎖するとも決定。カナダからの米国訪問者は年間2千万人を超えて国別では最も多く、全体の27%を占める。五大湖周辺では自動車や鉄鋼のサプライチェーンが両国をまたいで一体化しており、国境閉鎖は極めて異例だ。中国や欧州からの入国を既に禁じたほか、メキシコとの南部国境の閉鎖も検討しており、感染ルートの封じ込めを徹底する。

米経済は11年ぶりに景気後退の懸念がにじんでおり、経済対策も急務だ。ムニューシン財務長官は18日も与野党の議会指導部と相次いで会談し、景気刺激策の詰めに入った。当初は8500億ドル規模を想定したが、トランプ氏が1兆ドルへの増額を指示。実現すれば21兆ドルある国内総生産(GDP)の5%近い巨額の財政出動となり、08年の金融危機直後の経済対策を上回る規模になる。

18日明らかになった素案では、5千億ドル分の現金給付枠を用意。家計に4月と5月の2回に分けて支給する。野党・民主党は高所得層を除外するよう求めており、対象者や規模を詰めている。トランプ氏が当初から要求する給与税の減免も引き続き検討しているという。

ほかには企業支援に5千億ドルを充てる。航空会社やホテル、レストランなど「影響の甚大な産業」を対象に2千億ドルの資金支援を検討。中小企業などの運転資金対策として3千億ドルの融資枠も設ける。18日には、有給休暇を付与した中小企業を税優遇する緊急対策も先行して成立した。

トランプ氏は株価が最高値を更新するたびに「ダウ工業株30種平均が1万ドルも上がった」などとツイッターで自賛してきた。ただ、そのダウ平均も18日には1338ドル安い1万9898ドルとなり、同氏が大統領に就任した17年1月20日(1万9827ドル)の水準まで下落した。政権発足3年で株価は3割以上も上昇したが、その「貯金」はあっという間に消えた。

株価というよりどころを失ったトランプ氏。ムニューシン財務長官も18日、米テレビ番組で「戦争には打ち勝つ」と主張し、ホワイトハウスはこぞって「戦時」を前面に出し始めた。「戦時の大統領」が過去、支持率を高めたのは事実だが、感染増と景気悪化に歯止めがかからなければ、トランプ氏にとっては「敗戦」となる。

トランプ氏は新型コロナを盛んに「中国ウイルス」と呼んで、米生活者の目を外にそらそうともする。米国内では新型コロナでの死者が150人に達したが、ワシントンのロビイストは「株価や経済はともかく、犠牲者がさらに増えればトランプ政権には大打撃となる」と警告する。

保存
共有
印刷
その他

電子版トップ



[PR]