泥と血、画面にあふれる野生の力 淺井裕介個展

文化往来
2020/3/26 2:00
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淺井裕介個展「なんか/食わせろ」
(C)Yusuke Asai
Courtesy of the artist,ANOMALY
三嶋一路撮影

淺井裕介個展「なんか/食わせろ」
(C)Yusuke Asai
Courtesy of the artist,ANOMALY
三嶋一路撮影

国内外で採取した土を使った壁画のほか、小麦粉、テープなど身近な素材を用いた作品を手がける現代美術家、淺井裕介の個展「なんか/食わせろ」がギャラリーのANOMALY(東京・品川)で開催中だ(4月18日まで)。今回がほぼ初めての制作となる油絵も並ぶ。

展示の中で目を引くのが、代名詞ともいえる大きな泥絵「その島にはまだ言葉がありませんでした」だ。画面には、人間や動物、植物が共存し、広がりのある神話的なイメージを作り出している。モチーフが生命力を持って立ち上がってくるのは、土の持つ温かみのためだろう。

その横にはシカの血で描いた同じ構図の「野生の星」が並ぶ。この数年間、生命力や野生をテーマに制作を続けてきた。野の中で生まれ育つ思考や生み出される形への関心が高まる過程で宮城県石巻で猟師と出会い、血を使うことを決めたという。淺井は「抵抗はあったが、僕にとって安心感がある土と水の真逆にあるような物質と向き合うことで、取り組んできたことの一つの答えが得られると感じた」と話す。従来は土地から土をもらい、空間そのものをキャンバスにした「植物的な思考」で作品を作ってきたという。「今はその上で、動物的なものがはしゃぎだしたように感じている」

油絵の具を使った制作はその延長線上にある。淺井は「水に溶けないし、絵を描くためだけに特化しすぎている。不自然でずっと避けてきた。ただ、血を使ったことで不思議と抵抗感が薄れた。挑戦するなら、今だと思った」と振り返る。展示されている複数の油絵は10日ほどで描き上げた。「今は、今まで自分がやってきたことの対にあるようなものに挑戦している。これまでの手法と行き来することで、制作の幅が広がっていくのではないか」

(赤塚佳彦)

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