「原油クラッシュ」で負の連鎖 エネ企業の不振が金融へ

2020/3/19 5:18 (2020/3/19 5:59更新)
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原油価格の急落でシェールガス生産業者の資金繰り悪化が懸念される(テキサス州)=ロイター

原油価格の急落でシェールガス生産業者の資金繰り悪化が懸念される(テキサス州)=ロイター

原油価格の急落が米エネルギー企業の経営を直撃している。18日までにテキサス州の原油・ガス生産会社など複数の企業が破産申請に追い込まれた。大手でも設備投資を抑制する動きが相次ぐ。同業界への融資が多い米金融機関は与信コストが上昇し、貸出余力は低下する。社債市場からも資金が流出し、M&A(合併・買収)には逆風となる。「原油クラッシュ」が生む負の連鎖は米経済に暗い影を落とす。

■PE傘下のエネルギー会社が破綻へ

米テキサス州のトリポイント・オイル・アンド・ガス・プロダクションは16日、米連邦破産法11条(チャプター11)を申請した。同社はエネルギー専門の有力未公開株(PE)ファンド、米ファーストリザーブの投資先だ。年金基金などがPEへの出資を増やしてきただけに、市場の一部で波紋を呼んでいる。

3月に入って経営難に陥る企業が目立ってきた。ニューヨーク上場のオイル採掘会社、米パイオニア・エナジー・サービシズも1日、チャプター11を申請した。米アムンディ・パイオニアで低格付け債(ハイイールド債)運用を手掛けるケン・モナハン氏は「2015年前後と同じように債務不履行(デフォルト)に陥る企業が今後増えるだろう」と身構える。米オキシデンタル・ペトロリアムなど大手も採算悪化に備え、設備投資の削減に動いている。

エネルギー企業が相次ぎ経営難に陥ったのは原油価格の急落が大きい。国際指標のWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)先物は16年2月につけた1バレル26.05ドルを一時下回り、02年2月以来、約18年ぶりの安値をつけた。前日比の下落率は2割を超えた。一般的に1バレル50ドルを下回ると採算は悪化しやすい。新型コロナウイルスの感染拡大で世界的な景気減速に直面し、原油需要が減ると予想される。産油国が協調減産で合意できなかったことも、価格急落につながった。米債券運用大手ピムコは今後数カ月間、価格低迷が続くとみる。

■低格付け債投信から史上2番目の流出額

懸念されるのはエネルギー企業の不振が金融市場にも広がる「負の連鎖」だ。同業界は多額の設備投資費用をまかなうために社債を発行したり、銀行融資を活用したりしてきた。米格付け会社ムーディーズによると、探査・生産会社発行の社債のうち、24年までに満期を迎える社債は860億ドル、パイプライン輸送など「中流企業」は同1230億ドルだ。今後は業績悪化による格下げが増えるとみられる。16年の原油価格低迷では、低格付け債の債務不履行率が3割に達した。

投資家は警戒を強める。米バンク・オブ・アメリカによると11日までの1週間で低格付け債ファンドから112億ドルが流出し、史上2番目の大きさとなった。シェールガス開発などエネルギー関連企業の発行が多く、原油安になると資金が流出しやすい。債券価格も下落しており、保有者にとっては痛手だ。投資家が低格付け債運用から手を引けば、エネルギー業界以外にも影響が及ぶ。例えばM&A(合併・買収)資金を起債でまかなえなくなる、といった事態が起こりそうだ。

■エネ企業と地銀の不振が経済に波及

突然の「原油クラッシュ」は米地方銀行の経営をも揺さぶりかねない。米オクラホマ州など産油エリアにある一部の地銀は、自己資本を上回る融資をエネルギー企業に提供している。融資先の業績悪化で与信コストが増加しかねない。金利低下で利ざやが圧迫されるなか、二重の苦しみとなる。エネルギー企業と地銀の苦境は地域経済の冷え込みにつながる。

米投資銀行キーフ・ブルエット・ウッズ(KBW)が各行の自己資本に対する原油・ガス会社への融資額の比率を調べた。19年10~12月期時点でオクラホマ州のBOKファイナンシャルが108%と融資額が自己資本を上回っており、KBWが調査対象とする米銀の中で最大だ。同州のバンク7が104%で続く。大手ではシティグループ(同15%)の比率が最も高かった。

エネルギー企業の業績悪化は、地銀にも波及する。融資先の信用力が低下し、債務不履行の懸念が高まれば、銀行は貸倒引当金を積み増さなければならない。米連邦準備理事会(FRB)の利下げで貸出金利と預金金利の差である「利ざや」が縮小するとみられ、地銀の経営には大きな逆風となる。

地銀が収益悪化でエネルギー業界以外への融資にも慎重になれば、地域経済にとって痛手だ。エネルギー企業が原油安を受けて地元雇用を削減する可能性もある。原油安は本来、ヒーティングオイルやガソリン価格の下落で消費に追い風となるが、新型コロナの感染拡大でヒト・モノの移動が止まり、原油安効果は期待できない。強力な財政出動や資金繰り支援で負の連鎖を止めなければ、景気の落ち込みはより深いものになる。

(ニューヨーク=宮本岳則、伴百江)

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