広島・岡山駅周辺 商業地上昇けん引、中国5県公示地価

2020/3/18 16:50
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国土交通省が18日発表した公示地価(1月1日時点)は中国5県の商業地の平均変動率が1.4%の上昇と3年連続でプラスとなった。中心部で再開発が進む広島市や岡山市が全体をけん引した。西日本豪雨の被災地では変動率が災害前の水準に戻りつつある。ただ新型コロナウイルスの感染拡大を受け、観光客頼みのエリアの先行きには不透明感が漂う。

「エキキタ」と呼ばれる広島駅北口エリアでの地価上昇が目立つ(広島市)

「エキキタ」と呼ばれる広島駅北口エリアでの地価上昇が目立つ(広島市)

広島市の商業地で地価上昇が目立つのは、通称「エキキタ」と呼ばれる広島駅北口エリアだ。市内中心部の紙屋町・八丁堀地区と比べて割安感があることを追い風に、再開発の需要が増している。昨年4月にはオフィスやホテル、飲食店などが入る複合施設「グラノード広島」が開業するなど、新たなにぎわいも生まれている。

商業地の上昇率トップはエキキタにあるイズミ本社の近辺で、20.0%の上昇。広島県内で上昇率が20%を超えるのはバブル期の1991年以来だ。現在工事中の広島高速5号の開通によるアクセス改善への期待も、同エリアの上昇を下支えしている。

広島県福山市でも地価は上昇基調にある。福山駅前で閉鎖が続いていた旧商業ビルCASPA(キャスパ)の解体が始まったことで「再開発が肌で感じられるようになってきた」(林克士福山商工会議所会頭)。周辺で老朽ビルを改修したシェアキッチンが開業1カ月で全ての曜日で利用者が決まるなど需要も広がっている。

岡山県の商業地の最高価格地点はJR岡山駅から東に向かってすぐの岡山市北区本町2の1で、32年連続の首位。上昇率も8.6%と県内でトップとなった。駅と地下通路で直結しているイオンモール岡山は開業から5年以上が経過したが集客力を維持し、ビジネスホテルの建設など駅周辺の再開発が続いている点も追い風になった。

不動産鑑定士の日笠常信氏は「(岡山市や倉敷市がある)南部と中北部の二極化は依然として進んでいるが、全体として下落傾向に歯止めがかかってきた」と分析。特に岡山市や倉敷市では、中心部での上昇の流れが外周部に波及してきたという。

山口県では商業施設が集積する新下関駅近辺や、山口市で再開発が進む新山口駅近くの地点での上昇が目立つ。同県の商業地の変動率はマイナスが続くが、下落幅は縮小傾向にある。ただ、不動産鑑定士の藤井正隆氏は「土地の需要が利便性のいい場所や大型商業施設の周辺など特定のエリアに偏っていて、商業地全体の回復は鈍い」と話す。

■山陰も県都は上向き

山陰両県でも最高価格地点の地価は上向きつつある。鳥取県の商業地で最高価格となった鳥取駅前の地点(鳥取市栄町710)は2001年の調査開始以降、下落を続けてきたが、今回初めて横ばいとなった。

同地点付近では鳥取大丸が19年9月に新装開業したほか、同11月には同駅南側で鳥取市役所の新庁舎が全面開庁するなど、人の流れを生む動きも起こっている。不動産鑑定士の村上保雄氏は「同地点の評価は迷ったが、直近の動きを前向きに評価した」と話す。

鳥取大丸は4月に5階と屋上部分を追加改装し、付近には新規出店の動きもある。一方、「現状で同駅付近で大型投資の動きは見られない」(村上氏)状況。直近の振興ムードをいかに盛り上げていくかが付近の地価動向のカギを握りそうだ。

松江市の商業地の最高価格地点は朝日町字伊勢宮。松江駅前で商業施設が集積するエリアだ。38年連続で県内1位となり、上昇率もトップ。この付近では堅調な観光需要や低金利に支えられ、ビジネスホテルやオフィスビルなどの建設が相次いでいる。

住宅地の上昇率1位は出雲市斐川町直江。一般住宅と工場が混在する地域で、付近には出雲村田製作所や島根島津などの工場が集積する。従業員向けの住宅建設も盛んなことが支えとなっている。

一方、人口減少が深刻な山陰では、都心部と周辺部の二極化の傾向は続いている。不動産鑑定士の竹内義和氏は「島根県内では人口減少を背景に地価下落に歯止めがかからない県西部などと、地価回復の兆しがみられた松江、出雲両市に二極化してきた」と話す。同様の傾向は当面続きそうだ。

■被災地は豪雨前の変動率に

西日本豪雨の影響で地価の下落幅が昨年大きかった地点は、変動率が災害前の水準まで回復しつつある。豪雨による河川の氾濫で大規模な浸水被害を受けた広島県呉市安浦町中央は4.2%の下落で、昨年(11%下落)より下落幅は縮小した。

岡山県倉敷市真備町地区では、この1年間で山陽マルナカ真備店など多くの被災店舗が営業を再開した(16日)

岡山県倉敷市真備町地区では、この1年間で山陽マルナカ真備店など多くの被災店舗が営業を再開した(16日)

岡山県倉敷市真備町地区の3地点、総社市下原地区の1地点は、いずれも1.9~2.1%の上昇に転じた。うち真備町地区の3地点は昨年が平均17%下落だったことから、「底を打って若干の上昇傾向が見られる」(不動産鑑定士の日笠氏)としている。

同地区の中心部では今なお「がんばろう真備」の文字が目立つ。この1年で食品スーパーの天満屋ストアや山陽マルナカ、吉備信用金庫の被災店舗が相次ぎ営業を再開。人口は回復傾向にあり、仮設住宅の退去者が自宅の再建に向けた準備を進める動きもある。ただ、建設業の人手不足が響き「着工しにくい状況になっている」(日笠氏)との声もある。

■新型コロナ、先行きに影

豪雨影響が和らぎつつあるなか、地価に影響を与えかねないのが新型コロナウイルスだ。収束が見通せないなか、足元では観光地への入り込みが大きく落ち込んでいる。先行きへの不透明感が、土地の活発な取引を抑制する可能性もある。

今年に入り観光需要が落ち込んでいる松江市や出雲市でも不安視する向きがある。既に松江駅前のホテル建設計画に影響が出ており、「(回復の)つぼみが出た状況だったが、大雨が降り出した。今後は投資マインドが落ち込むことが予想される」(不動産鑑定士の竹内氏)との声もある。

広島県廿日市市の宮島地区でも商業地の地価は上向いているが、飲食店や土産店などは観光客頼みの面が強い。広島市中心部を含めたホテル稼働率の低迷が長引けば「高い金額で土地を買い、ホテルを建設するといった投資をためらう例も出てくる」(不動産鑑定士の中村真二氏)。

新型コロナの収束や観光需要の盛り返しの時期が見通せないだけに、先行きは不透明だ。

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