/

商業地、再開発が上昇けん引 九州・沖縄公示地価

国土交通省が18日発表した2020年の公示地価(1月1日時点)で、九州・沖縄8県の商業地は大規模再開発が進む各県のターミナル駅周辺などでの上昇が目立った。沖縄県のほか、大分県ではインバウンド(訪日外国人)増加の恩恵も受けた。住宅地では利便性が高いエリアを起点とした上昇が周辺にも広がり、北九州市や長崎県で21年ぶりに地価上昇に転じた。

商業地は福岡県が5年連続で上昇した。福岡市天神の商業施設「天神コアビル」が九州・沖縄全域での最高価格地点となり、1平方メートル当たり1100万円だった。隣接する2軒のビルとの再開発を追い風に上昇し、1993年につけた天神地区での最高額(同1200万円)に迫った。

九州・沖縄の商業地で最高価格の「天神コア」(福岡市)

市は天神に続き、JR博多駅周辺でも老朽ビルの再開発を促す施策を19年に発表。「オフィス需要は空前の活況で、踊り場のホテル開発をカバーした」(不動産鑑定士の高田卓巳氏)という。

沖縄県も13.3%上昇と7年連続で上昇し、上昇率は前年より3.0ポイント拡大して過去最大の上昇率となった。市町村別上昇率トップは宮古島市の27.3%で、那覇市の20.1%、読谷村の18.8%が続いた。宮古島では観光客増加でホテルの建設ブームが起きるなど、需要が増大している。

大分県は前年より上昇率が0.2ポイント高い1.1%で3年連続のプラス。別府市北浜地区は10.7%上昇し別府駅前通りの地点も8.3%上昇。別府では星野リゾート(長野県軽井沢町)が高級旅館を建設中で「集客力や知名度の割に箱根などより地価が安く、積極的な投資が生まれた」(不動産鑑定士の坂本圭氏)。

熊本県は前年とほぼ同じ3.5%の上昇だった。19年9月に熊本市中心部に開業した「サクラマチ クマモト」効果で中心部ににぎわいが生まれ、周辺の割安な地点の上昇率が伸びた。店舗やホテルの新規開業が相次ぎ、同じ市中心部のアーケード街地区とともに価格を押し上げた。

福岡県の商業地で上昇率が最も高かった、福岡市中央区の天神4丁目周辺

長崎県も3年連続で上昇した。5.3%上昇の長崎市がけん引した。JR長崎駅周辺で22年度の「長崎新幹線」暫定開業や駅前再開発への期待が地価にも表れた。佐賀県は0.6%上昇。JR佐賀駅前のオフィス街には関東の企業を中心に投資目的の需要が継続的にあり、佐賀市と鳥栖市で上昇した。

宮崎、鹿児島両県は29年連続で下落した。ただ、いずれも下落幅は縮小した。宮崎県は0.7%下落だったが、マイナス幅は0.3ポイント縮小した。一方、宮崎市は0.4%のプラスになった。JR宮崎駅西口前では大型複合ビル2棟が今秋開業し、「水面下で周辺物件の高値取引もある」(不動産鑑定士の上村芳朗氏)という。

鹿児島県も0.9%下落したが、下落幅は0.1ポイント縮小した。鹿児島市が0.9%上昇した。中心部の天文館地区で大型商業施設や鹿児島銀行新本店ビルなど再開発の動きが加速しているほか、JR鹿児島中央駅周辺でも再開発工事が進展し、周辺の取引も活発化しているという。

住宅地では福岡県が3.5%上昇した。北九州市が21年ぶりに上昇に転じた。超低金利環境を背景に不動産業者による戸建てやマンションの用地取得が旺盛で、福岡市中心地区から始まった上昇が、市外にも波及している。

福岡県の住宅地で上昇率が最も高かった、福岡市博多区博多駅南5丁目周辺

長崎県は21年ぶりに上昇に転じた。長崎市では人気の平たん地を中心に1.3%上昇して地価を押し上げた。佐世保市も上昇に転じた。

沖縄県は7年連続で上昇し、上昇幅は1.0ポイント拡大して住宅地も過去最大の上昇率となった。125地点のうち、横ばいの1地点以外はすべて上昇した。県内経済が好調で、県内人口も増え住宅需要が拡大した。市町村別では読谷村が21.2%、糸満市は17.1%それぞれ上昇し、那覇市近郊に需要がシフトしたという。

佐賀県は0.6%の上昇。佐賀市や鳥栖市など福岡にアクセスしやすい地域が割安感から買いが入っている。市町別の平均上昇率でトップ(3.0%)だった基山町も福岡県への通勤者需要が強い。豪雨による浸水の影響は「ほとんどなかった」(不動産鑑定士の後藤修氏)。

大分県は3年連続で上昇した。大分市は4年連続上昇で、上昇幅を0.8ポイント拡大した。行政が手がけた住宅地を安く分譲するなど移住促進に積極的な豊後高田市は、29年ぶりに上昇した。

熊本県も3年連続で上昇した。熊本市中心部は引き続き人気が高く、同市北区や近郊の嘉島町など割安感のある地区も上昇傾向にある。

鹿児島、宮崎両県は住宅地も下落した。鹿児島県は22年連続でマイナスとなったが、下落幅は縮小した。鹿児島市が2年連続で上昇し「上昇地点が値ごろ感の出た郊外にも広がっている」(不動産鑑定士の大吉修郎氏)。

宮崎県も20年連続の下落となったが、幅は縮小した。0.3%のプラスになった宮崎市は、交通の便がよく、学校や病院など公共施設に近い地点の上昇が目立つという。

新型コロナ、影響注視

 2020年の九州・沖縄各県の公示地価は都市部を中心に、上昇や下落幅縮小が相次いだ。ただ調査は1月1日時点で、新型コロナウイルスの感染拡大による景気の変調はほぼ織り込まれていない。今後、地価にも影響が及ぶのか注視する必要がある。
 インバウンド(訪日外国人)需要を当て込んだ精力的な用地取得で地価上昇をけん引してきた九州・沖縄のホテル業界は19年夏以降、日韓関係の冷え込みなどの影響を大きく受けている。「確保した土地を手放す業者もみられる」(不動産関係者)という。
 住宅も販売状況は「好調とはいえない」(福岡市の不動産鑑定士)。建設費高騰などで販売価格が上昇し「買い時ではない」との認識が広がりつつあるためだ。購入時の頭金には投資信託などを解約した資金を充てる場合も多く「株価急落で思いとどまる顧客が増えそう」(マンション販売会社社長)。
 オフィス再開発では今後完工する大型案件で、投資規模に見合った賃料を設定できるかに注目が集まる。外資など有力企業を呼び込めるかがカギで、不調に終われば機運が萎む可能性もある。
 一方で工業用地は上昇が続くとの見方が多い。インターネット通販の拡大で物流施設へのニーズが強まっているほか、生産の国内回帰が進めば押し上げ要因になる。

すべての記事が読み放題
まずは無料体験(初回1カ月)

関連企業・業界

セレクション

トレンドウオッチ

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン