米「1強景気」も後退懸念 旅客・宿泊・飲食に打撃

2020/3/17 22:52
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トランプ氏は新型コロナの沈静化に時間がかかるとの見方をにじませた(16日、ホワイトハウス)=AP

トランプ氏は新型コロナの沈静化に時間がかかるとの見方をにじませた(16日、ホワイトハウス)=AP

【ワシントン=河浪武史】新型コロナウイルスの感染拡大で、世界で「1強」とされた米景気にも後退懸念が強まってきた。ニューヨーク市などでは飲食店の営業を大幅縮小し、航空路線の減便も相次ぐ。打撃を受ける関連産業は雇用全体の1割強を占め、トランプ米大統領も景気後退が「ありうる」と認める。一時的な「供給ショック」にとどめるには、雇用環境の維持が条件となる。

トランプ大統領は16日の記者会見で、新型コロナウイルスの拡大で景気後退に突入する可能性を問われて「ありうる」と答えた。新型コロナが沈静化する時期も「7月か8月ではないか」と述べ、景気停滞が長引くとの見方をにじませた。

トランプ氏の発言で米国市場では株安が加速し、ダウ工業株30種平均は3000ドル近い下落幅となった。米大統領は市場参加者に比べて極めて多くのデータを把握できる立場にある。投資家は景気後退のリスクが想定以上に大きいのではないかとの不安を強める。

実際、民間金融機関も米景気の先行きを厳しく見始めた。米銀大手ウェルズ・ファーゴは16日、成長率見通しを大きく引き下げ、4~6月期は前期比年率換算で3.3%減、7~9月期も同2.3%減と2四半期連続でマイナス成長になるとの予測を公表した。

米ゴールドマン・サックスも、米経済は1~3月期がゼロ%成長と停滞し、4~6月期は5%減と大幅なマイナス成長に陥ると予測する。四半期ベースでマイナス成長に転落すれば6年ぶりだ。2期連続マイナスとなれば、2009年以来11年ぶりの景気後退と判定される可能性が出てくる。

米ブルームバーグは、景気の山と谷を認定する全米経済研究所(NBER)が11月の米大統領選より前に景気拡大の終了を認定する可能性があると報じた。

当初は新型コロナを「アジアの出来事」と楽観視していた米国だが、感染者数が4千人を超えて焦りを強める。15日にはビジネスと観光の一大拠点であるニューヨーク市が、飲食店の営業を「持ち帰り」や宅配に限定すると決めた。西海岸のサンフランシスコ市でも16日、市民の外出を原則禁じる命令を出した。米政権が16日、15日間は10人超の集会を避けるよう要請するなど、経済活動を一段と制約しつある。

民間企業も全米ベースで営業縮小の動きが相次ぐ。米スターバックスは直営店の飲食スペースを閉鎖し、小売業最大手のウォルマートは24時間営業を中止した。ナイキやアップルも直営店を一時休業しており、大幅な減便が相次ぐ航空会社は従業員に無給休暇の取得を求めている。

旅客や宿泊、飲食など新型コロナが直撃する関連産業は、雇用全体の1割強を占めて大きい。米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は「感染症の封じ込め策は、短期的な経済活動に重大な影響をもたらす」と指摘した。アメリカン航空が国際線を75%も減便するなど売上高の急減は避けられず、米経済もマイナス成長のリスクが強まる。

もっとも、ゴールドマンは景気が急激に落ち込む「谷」は3~4月と予測。5月以降は落ち着きを取り戻し、国内総生産(GDP)も7~9月期には3%増、10~12月期も4%増と想定する。新型コロナによる旅客や宿泊、飲食などの売り上げ減は一時的で、本格的な長期の景気後退には陥らないとの見方だ。

そのV字回復の条件は、企業の倒産と労働者の失業を防ぐことだ。FRBは市場に大量の資金を供給する量的緩和を再開し、民間金融機関を通じて企業の資金繰りに目詰まりが生じないよう注視する。米政権も航空会社などの資金支援の検討に入った。米国は失業率の悪化が常に景気後退の引き金となる。雇用環境を維持できれば内需の落ち込みも回避でき、新型コロナは一時的な「供給ショック」で終わる。

もう一つの条件は、感染者の拡大に歯止めをかけることだ。医療費が日本の3倍もかかる米国では、低所得層が病院に行ったり医薬品を調達したりするのをためらうため、インフルエンザが毎冬のように猛威を振るう。米議会は検査費用を無償にする法案を審議中だが、感染増が止まらなければ経済活動の停滞も長期化し、失業者の増加は避けられない。

米経済は拡大局面が過去最長の11年目に突入し、世界で「1強」とも評されてきた。日本は消費税増税などで19年10~12月期に大幅なマイナス成長に転落し、ユーロ圏もほぼゼロ成長だった。米経済までマイナス成長に落ち込めば、世界は「同時景気後退」に突入しかねない。

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