「誕生日に株をプレゼント」お金に強い子供の育て方
OECD東京センター所長 村上由美子さん

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2020/3/28 2:00
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2013年、民間出身者としては初の経済協力開発機構(OECD)東京センター所長を務めることとなった村上由美子さん。国際連合からスタートしたキャリアは、ゴールドマン・サックス証券、クレディ・スイス証券、そしてOECDと、民間と公的機関の間を行き来してきた。ビジネスとパブリック、両方の視点からお金を見つめてきた村上さんは、自身の子供に対してどのようなお金教育を行っているのだろうか。

村上由美子(むらかみ・ゆみこ)上智大学外国語学部卒。米スタンフォード大学大学院国際関係学修士課程修了後、国際連合に就職。その後ハーバード大学大学院経営修士課程(MBA)を修了。ゴールドマン・サックス証券及びクレディ・スイス証券での勤務を経て経済協力開発機構(OECD)東京センター所長に就任。著書に『武器としての人口減社会』(光文社新書)がある

村上由美子(むらかみ・ゆみこ)上智大学外国語学部卒。米スタンフォード大学大学院国際関係学修士課程修了後、国際連合に就職。その後ハーバード大学大学院経営修士課程(MBA)を修了。ゴールドマン・サックス証券及びクレディ・スイス証券での勤務を経て経済協力開発機構(OECD)東京センター所長に就任。著書に『武器としての人口減社会』(光文社新書)がある

──3人の子供はインターナショナルスクールに通っているそうですね。

家族での米国暮らしが長いため、そうしました。長男と長女は、仕事で米ニューヨーク(NY)在住だった時に出産。第3子を産む直前、東京に転勤が決まりました。

ただ本当のところ、すごく迷いました。今の学校の自己肯定感を育む教育は魅力的ですが、日本の学校の方が、数学や国語の基礎力を鍛えることができるので。なので、公文式にも通わせています。

──日本の教育レベルが高いという感覚はそれほどありませんでした。

日本でタクシーに乗ったら、運転士さんが当たり前のように暗算でお釣りを返してくれますよね。色々な国に住んで分かりましたが、実はすごいことです。実際にOECDのデータでも、基礎的な数学的思考力・読解力において日本の子供は高い水準にいます。

■日本とは違った金融教育

──金融教育に関しては、インターナショナルスクールの方が幅広く行っている印象です。

そうですね。せっかく「数字に強い」というデータが出ているにもかかわらず、そこが残念です。子供たちが通っている学校の金融教育は、投資教育までカバーしている点が面白い。例えば、中学生ぐらいになると学校で投資について教え始めます。長男と長女は、学校で架空の投資ポートフォリオを作っていました。加えて我が家は職業柄、家庭で金融関連の話題をすることも多い。彼らにとってお金は身近な存在かもしれません。

■変わった誕生日プレゼント

──ご主人は金融業だとか。

金融機関での勤務を経て今は個人投資家です。彼がちょっとユニークだなと思うのが、誕生日には子供たちに株をプレゼントしていること。投資額は1人当たり約50ドルで、子供が銘柄を選び、夫名義の口座で管理します。子供たちが20歳になった頃、その株を売却するのか、持ち続けるのか分かりませんが、「うまく選べば50ドルが100ドルになるかも」と伝えると子供たちも本気に。彼らにとって、その差は大きいようです。そういえば長男は、先ほど言った投資のポートフォリオを作る授業で、クラスで一番良いリターンの成績を上げたそう。喜んでいました。

──お誕生日で実践を積んできた結果ですね。

そうですね、投資先を探す訓練ができていたのかもしれません。とはいえ、やはり自分がなじみのある会社の株を買いたいようで。最近の誕生日には、長男は米ナイキ、「ユーチューブ」好きの長女は米アルファベット(米グーグルの親会社)の株を買っていました。

■株を通して議論する

──お子さんが投資先を選ぶ際、どんなアドバイスをしていますか。

そもそも、「"ユーチューブの株"っていうのはないんだよ」というところから始まります。ユーチューブだけでなく色々な事業を抱えている米国のグーグルが運営しているんだよ、と。ユーチューブがこの先有望だからという単純な理由だけでなく、他の事業も調ベた上でアルファベット株を買うかどうか決めなさいと教えます。そこから、短期の業績だけでなくESG(環境・社会・企業統治)要素がなぜ重要なのかなどといった議論へとつなげていくことも可能です。中学生ぐらいなら、優しい言葉を使えば分かってくれます。理解してもらえない時もありますけどね。そんな時は、粘り強い夫に説明を任せます(笑)。

──ちなみに、お小遣いはあげていますか。

お小遣いは長女と長男に週1000円ずつ。足りない足りないといつも言っています。

お金が足りないのならば、どうすればいいか自分で考えなさい、と言うと、長女が「お掃除プロジェクト1回500円」なるものを提案してきました。長男は最近、スクールバスに乗る低学年をモニターするアルバイトを始めたみたいです。往復で2000円ぐらい手に入るようで、最近は結構潤っている様子(笑)。

■"青かった"国連時代

──それぞれ、自分なりにお金の稼ぎ方を編み出していますね。

お金儲け=悪ではない、ということは理解してほしいです。この考えのベースは、国連時代に思いがけない問題に直面したところからきています。

──思いがけない問題、とは?

国連に入って、発展途上国の開発援助をすることになったのですが、当時の私はまだ青かったというか……。とにかく「恵まれない国の人たちを助けるんだ」と意気込む気持ちが先行していました。

ですが実際に中南米の開発途上国などに行って仕事をしてみると、自分は本当に必要な知識が不足していると気が付きました。

──何が不足していたのでしょうか。

民間のお金の流れについての知識です。国連が途上国に対して行うべきなのは、いずれ援助が不要になるぐらいに経済を自立させること。そのためにはビジネスが分かっていなくてはいけません。

求められるのは、地元企業が他国を含めた民間企業からの投資を得て、自分たちでリターンを上げていく仕組みづくり。援助する側にも、民間企業から投資を引き出すスキルが必要です。なのに私はそれを持ち合わせていなかった。

国連に勤めた3年間、自分の至らなさを痛感しながら仕事をしました。そこで「民間のお金の流れを知りたい」と考え、米ハーバード・ビジネス・スクール(HBS)に入り勉強。その後20年近く金融関連企業に勤め、今に至ります。

──OECDという公的機関に勤めることは、原点回帰ですね。

若い時は、お金儲けにポジティブなイメージがなかったのですが、社会貢献したいからこそ、お金の流れを理解することが一番重要なのだと今なら分かります。

だから子供たちにも、「投機」は教えるべきではないけど、「投資」は教えるべきだと思うのです。

──企業や社会について調べることで、自分たちの将来についても考えることができる。

そうですね。子供たちが就職する15~20年後、雇用形態も大きく変わっているはず。終身雇用制度や年功序列の仕組みも、当たり前ではなくなっていると思います。

女性の働き方についても、日本は変わっていかなければなりません。NYで子育てをして日本に戻って来た時、「ナニーを雇いながら仕事をする」と言うと周囲からは驚きの声。飛び立つ前と何も変わっておらず残念でした。多様な生き方があるということを、自分の働く姿を通して子供たちに伝えていくことも広い意味での金融教育なんじゃないかと感じています。

もちろん、全ての人にとって共働きが必ずしも正しいわけではありません。色々な選択肢がある中で、自分はどう生きていくのか。投資などを通して社会を捉え、考えてほしいですね。

(大松佳代)

[日経マネー2020年5月号の記事を再構成]

日経マネー 2020年5月号 1万円からの勝てる株式投資入門

著者 :
出版 : 日経BP
価格 : 750円 (税込み)

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