株式投資は若者にとって最高の自己投資である
作家・山本一郎さん×経済アナリスト・森永康平さん 特別対談

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2020/3/22 17:00
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人生100年時代を迎え、計画的な資産形成の重要性が指摘される一方で、リスクをとって投資することに抵抗感を持つ人も少なくない。社会にもマーケットにも先行き不透明感が漂う中、資産運用をどう捉え、どのように向き合うべきか。自身も投資を手掛け、ネットやメディアで積極的に情報を発信し、若い世代の金融教育にも注力するオピニオンリーダーの2人に話を聞いた。

山本一郎さん(右)と森永康平さん(写真/都築雅人)

山本一郎さん(右)と森永康平さん(写真/都築雅人)

山本一郎さん 個人投資家、作家。1973年生まれ。IT(情報技術)関連のコンサルティングや知的財産権管理、コンテンツの企画・制作、社会調査に携わる。『ズレずに生き抜く』(文藝春秋)、『リーダーの値打ち』(アスキー・メディアワークス)など著書多数。
森永康平さん 金融教育ベンチャー企業マネネCEO(最高経営責任者)、経済アナリスト。1985年生まれ。証券会社や運用会社にてリサーチ業務に従事した後、アジア各国で新規事業の立ち上げや法人設立を経験。父は経済アナリストの森永卓郎氏。

──長い老後に備え投資による資産形成の重要性を指摘する声が高まっています。金融教育で接する若い世代の反応はいかがですか?

山本一郎さん(以下、山本) 大学生を相手に社会保障について話す機会があり、その中で人生設計や投資についても触れます。ですが、ピンときていない子が大半ですね。

森永康平さん(以下、森永) 同感です。私もそうですが、今の若い子たちはバブルが崩壊した後のデフレや低成長の時代しか知りません。彼らは終身雇用制度が採用され続けるとは思っておらず、転職するのが当たり前と受け止めています。年金も減額されると考えている。そうした中で自分を守る手段の一つが資産運用で、やった方がいいものだとは漠然と思っています。ですが踏み出せない。

原因の一つは、彼らの親の世代にあります。親の世代は「投資は危ないもの」と思っており、だから自分の子供に「やってはいけない」と言い続けてきました。そうした体験があるので、自分たちも「投資は危険」という考えを拭いきれず、ためらってしまうのです。

■「老後に備える」は響かない

──若い世代はどうしたら「投資は危険」という見方を改めて、投資を始められるのでしょう。

山本一郎さん

山本一郎さん

山本 難しいですね。投資は、儲かることもあれば損をすることもある不確実なものですから。基本的に自ら不確実なものを始める人はそう多くはいません。損をする可能性があれば、損をしたくないという気持ちが先に立ちます。

実際、老後に備えた資産形成について話しても、次のような反応が返ってきます。「老後のための資金づくりなら、確実に増えるものに投資すべきでしょう。なぜ損をする恐れがあるものに投資しなければいけないのですか」と。

それに老後と言っても、若者には想像が湧きません。自分も大学生だった時に同じことを言われたら、「そんな先のことを言われても」と感じたと思います。

森永 そうなんですよね。若い人には、老後の前に結婚や子育てといった出費を伴う別のイベントがあります。また収入が少なくて、投資に回すお金を大して捻出できない人も少なくありません。

それに個人投資家で、老後のためだけに投資をしているという人はあまりいない。私は20~30代の個人投資家のオフ会によく参加するのですが、個別株投資で億単位の資産を築いた人も、株価指数に連動するインデックス型の投資信託で積み立て投資をしている人でも同じです。なので若い世代を相手にした投資教育では、リアルタイムで享受できるメリットを伝える必要があると考えています。

■株でビジネススキルや知識を得る

──リアルタイムで受けられるメリットとは?

森永康平さん

森永康平さん

森永 投資を通してビジネスのスキルを磨ける点です。これは投資の中でも株式投資に顕著なメリットです。先ほど収入が少なくて、投資に回すお金を大して捻出できない人が多いという話をしましたが、そういう人はまず収入を増やすことが求められます。高い給料を払ってくれるところに就職や転職をすればいいわけですが、それにはビジネスのスキルや知識を身に付けることが必要です。恐らく今の大学でこれらを学んで習得することはできません。ところが、株式投資ではそれが身に付きます。決算書の読み方や業界動向の分析、企業の資金調達からマクロ経済の見方まで学べますから。

「株式投資をすれば確実に儲かる」とは言えませんが、ビジネスのスキルや知識は必ず身に付きます。それを生かして、高給を得られる職業に就くことも可能になります。給料が増えれば預貯金や投資の資金も増やせますから、結果として老後のための資産形成にもつながります。

山本 確かに大学で専攻した分野でスペシャリティー(専門性)を身に付けても、それを生かせる職に就かなければ何のパフォーマンスも発揮できません。どの職に就いたらいいのか。それを見定めるには現実の社会とつながった窓口をなるべく多く持つことが必要です。株式投資をしていれば、その窓口をたくさん持てます。投資で結果を出すには、世の中の仕組みを知らないといけませんから。

森永 株式投資では、企業の業績や戦略を調べて分析し、次にどのような手を打つのかを予測することが求められます。こうした作業を重ねることで、企業経営者の視点を持つことができます。これは、企業で働いてもなかなか身に付きません。例えば、営業部門に配属されて営業一筋となったら、営業のスキルは身に付いても、他のスキルは身に付かないでしょう。

山本 株式投資を通じて経済の動きを我が事として感じられるのも大きなメリットですよね。何かあると、すぐに影響を受けて相場が大きく動きますから。

森永 そうなんです。株式投資をしていなければ感じ取れない世界経済のダイナミズムを体感できます。株式投資では常に様々なことを考えなければならないし、局面ごとに判断を下すことも求められる。思考と決断を繰り返す中で、ビジネススキルが磨かれます。株式投資にはビジネスに関する全ての要素が詰まっている。そう思います。

■とにかく始めてみる

──株式投資には実に様々な利点があることが分かりました。それを理解して始めるとして、どうスタートしたらいいでしょう。

山本 「準備は要らない。まずは少額でいいから株を買ってごらん」。大学生などにはまずこう言っています。その際には好きなもの、関心のあるものに関係する会社の株を買うことを勧めています。「ゲームが好きならゲーム会社の株を買ってみなさい」「機械が好きなら素材や部品メーカーの株はどうか」と。興味があれば、その会社の製品やサービス、同業他社の動向、海外での展開などを調べるし、自然と頭にも入ってくる。実際に学生たちもよく調べますよ。

森永 それは良い始め方だと思いますが、一方で今の20~30代って、好きなものを聞かれても答えられない人も結構います。そういう人はまず株価指数に連動するインデックス型投信を買うといい。投信を購入すると、当然上がったり下がったりしますから、その理由を考えるようになります。

そうして1~2年たつと、指数の動きとその要因についておぼろげながら分かってきます。同時にインデックス型投信では年率で平均5~10%くらいの利益しか期待できないことや、個別企業の株では1年で2倍や3倍になっているものがあることに気付く。この段階で個別株の投資に興味を持ち始めるのも良いと思います。

山本 そうですね。

森永 個別株となるとインデックス型投信とは違い、買ったら取りあえずほったらかしておけばいいということにはならないので、企業や経済について調べるようになる。次第に調べる癖が付きます。

とにかく始めることがやはり大事です。身銭を切れば、誰でも減らしたくはない。そうすると勉強にも身が入ります。繰り返しになりますが、それで結果として儲からなくても、ビジネスのスキルや知識が身に付けば、収入が増えるチャンスが広がります。

■投資を人生の全てにしない

──一方で、株式投資を始める際に「これだけはやってはいけない」というアドバイスはありますか。

森永 一番やってはいけないと思っているのは、他人が売買していたり、推奨していたりする銘柄をよく考えずに買うことです。これでは成長できません。

山本 のめり込み過ぎないことが大事ですね。投資を始めると、中にはギャンブラーになってしまう人が出てくる。ずっと相場に張り付いてデイトレードをするとか、個別株の信用取引や先物取引、FX(外国為替証拠金)取引で大きなレバレッジを掛けるとか。こうした人たちは必ずどこかで大損して立ち直れなくなります。

株式投資を長く続ける秘訣は、自分の持ち株の値動きや相場を気にし過ぎないことです。でも、どうしても見たくなってしまうんですよね。それが人間の心理です。そうした場合には、保有する銘柄を減らした方がいいと思います。

森永 投資を人生の全てにしないことが大切ですよね。実は自分もかつてFXにのめり込んだことがあります。投資は人生を豊かにしてくれるものですが、その手段の一つであって、必ずやらなければならないものではない。投資が最優先になって、生活や家族を犠牲にするのは違うと思います。

山本 その点は私も気を付けたいところ。投資には魅力がある分、人生と投資の間に線引きをして両方を楽しんでほしいですね。

(中野目純一、大松佳代)

[日経マネー2020年5月号の記事を再構成]

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