公示地価5年連続上昇 20年、台風被災地には爪痕

2020/3/18 16:50
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国土交通省が18日発表した2020年1月1日時点の公示地価は、商業・工業・住宅の全用途平均(全国)が1・4%のプラスと5年連続で上昇した。札幌など中核4市を除く地方圏も0・1%上昇と28年ぶりにプラスに転換した。ただ、訪日客の増加や都市の再開発がけん引する構図で、新型コロナウイルスの経済への打撃が長引けば影響は避けられない。

住宅地は堅調な雇用や超低金利に支えられ、0・8%上昇した。商業地は3・1%上昇となり、それぞれ前年より伸び幅が拡大した。

商業地は東京、大阪、名古屋の三大都市圏では5・4%のプラスとなった。企業が人材獲得のため、ゆとりのあるオフィスや通勤時間を減らせるサテライトオフィスを確保する動きが影響した。訪日客の多い地区を中心にホテルや店舗向けの引き合いも強かった。

地方の中核4市(札幌・仙台・広島・福岡)は伸び幅が11・3%と2桁に達した。訪日客の消費も見込んだ商業施設やオフィスの開発が活発。東京などの不動産価格が上昇したことを受け、より高い投資収益を求めるマネーが地方に流れた。

地価上昇の動きは中核4市を除く地方にも広がった。商業地では香川県がプラスに転じ、24都道府県で上昇した。秋田市では秋田駅周辺で複数の再開発が進んでいることが評価され、27年ぶりに上昇に転じた。住宅地では山形、長崎の両県でプラスに転換した。

もっとも、調査地点に占める上昇地点は全国で48%、地方で37%にとどまり、広がりを欠く。調査後の2月から新型コロナの経済への打撃が強まり始め、地価回復のけん引役である観光地と大都市に影を落としている。

商業地の上昇率が13・3%、住宅地が9・5%で、ともに全国首位となった沖縄県。中国発などのクルーズ船の寄港キャンセルや航空路線の減便により、足元では国際通りなどの繁華街では人出がめっきり減っている。

県内の商業施設でも営業時間短縮などの動きが相次ぐ。地元の不動産鑑定士の浜元毅氏は「影響が長期化すれば不動産の価格にも影響を及ぼしかねない」と話す。

訪日客数は経済情勢や2国間関係に左右されやすく、19年は日本全体で2・2%増にとどまった。地価上昇を持続させるには、暮らしやすい街づくりなど地域の魅力を高める取り組みが欠かせない。

■長野や福島で大幅な下落

2020年の公示地価は19年に日本列島を襲った大型台風が爪痕を残した。浸水被害のあった長野市の住宅地は全国で最大の下落率となった。18年に西日本を襲った豪雨など頻発する自然災害が地価を押し下げる状況が続く。地価上昇が続いた都心でも一服感が見える地域も出始めた。新型コロナウイルスによる逆風も強まり、地価上昇の持続力が試されている。

台風19号で千曲川の堤防が決壊して大規模浸水した長野市の地価は下落した(2019年10月)

台風19号で千曲川の堤防が決壊して大規模浸水した長野市の地価は下落した(2019年10月)

19年10月の台風19号の被災地では地価の下落が目立った。長野市では千曲川の氾濫で浸水した4カ所が下落した。堤防が決壊した場所から近く、住宅全壊などの被害が特に大きかった豊野地区(住宅地)の地点の下落率は13・6%と全国最大になった。同地区の3月1日時点の人口は台風前と比べて3%減り、地価下落に拍車をかけた。

台風19号では豪雨により全国71河川の140カ所で堤防が決壊した。

福島県いわき市では上昇基調だった地価を今回の被害が直撃。市役所に近い地点では横ばいまで回復してきた地価が3・1%減となり、浸水があった商業地の地点では19年の1・9%上昇から4・6%減へとマイナスに転じた。宮城県丸森町でも1%未満まで下落幅が縮小していた住宅地の2地点が3~5%のマイナスに落ち込んだ。

公示地価からは長く続いた上昇局面の一服感を示す数字も見て取れる。

19年7月1日時点の基準地価と今回の公示地価の共通地点(約1600地点)の変動率を見ると、半年間の地価上昇率は東京圏の住宅地で0・8%。19年前半の半年間は0・9%で、今回5年ぶりに伸び率が縮小した。商業地でも三大都市圏の上昇率は19年前半が3・2%、後半が3・3%と落ち着いてきている。

全国最高額は今回も東京都中央区銀座4丁目の「山野楽器銀座本店」だったが、伸び幅は19年の3・1%からほぼ横ばいの0・9%に鈍化した。1平方メートルあたり5770万円と既にバブル期の最高価格を上回っている。商業地の価格で2位だった銀座5丁目の「対鶴館」も上昇幅は4・5%から1・2%に縮んだ。

銀座の場合は再開発が一巡したことや、有名店の出店が緩やかになっていることも背景にあるようだ。一般的に不動産価格は都心から地方へ上昇の波が広がっていく。都心の一等地で価格の一服感が出てきたことは地価の潮目の変化を示しているとの見方も多い。

同様の傾向は名古屋圏でも見て取れる。全用途平均の上昇率は1・9%で、19年の2・1%より小幅になった。「名古屋市中心部の中村区や中区の価格水準が上がった」(国土交通省)ことが背景にある。

都市未来総合研究所によれば、国内の不動産取引は6年ぶりに4兆円を割った18年度からやや増加し、19年度は2月までの時点で約3・9兆円に回復した。ただ5兆円前後の取引があった14年度や17年度に比べれば低い水準だ。海外勢の投資意欲はなお強いが、都心の物件価格の高騰による投資利回りの低下もあり、投資に慎重になっている様子がうかがえる。

中核4市を除いた地方圏の商業地では、基準地価との共通地点で比べると19年の前半と後半で伸び率が0・8%で変わらなかった。景気が後退局面入りした可能性も取り沙汰されており、今後は子育て世代の支援や高齢者に優しい街づくりなどの努力がより重要になる。

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