米、新型コロナで巨額財政支出検討 政権・議会に溝も

2020/3/17 11:45
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民主党のシューマー上院院内総務は大型の経済対策をとりまとめた

民主党のシューマー上院院内総務は大型の経済対策をとりまとめた

【ワシントン=河浪武史】米ホワイトハウスと米連邦議会は、新型コロナウイルス対策として巨額の財政支出の検討に入った。トランプ米大統領は2020年だけで8千億ドル(約84兆円)という異例の大型減税を提案。野党・民主党にも家計や中小企業を対象に7500億ドル規模の財政支出案が浮上する。米経済は景気後退の懸念がにじみ、財政刺激策の迅速な策定が求められている。

米議会は3月6日、ワクチン開発などに充てる83億ドルの緊急補正予算を成立させた。14日には下院で新型コロナの検査無償化などを盛り込んだ「第2弾」の経済対策を可決済みだ。ホワイトハウスと議会は「第3弾」として航空会社などの資金繰り支援策も検討。米航空業界は16日、連邦政府に500億ドルを超す支援を要請した。

ただ、米経済は小売店や飲食店の営業停止や欧州などからの入国制限で、景気全体に後退懸念が浮上している。米政権と議会は本格的な景気浮揚策の検討にも着手する。

トランプ大統領は社会保障財源である給与税を20年中は免除するよう議会に提案。同税は労使それぞれが給与の6.2%を納税する仕組みで、税収は年1兆ドル強と全歳入の3分の1を占めるほど規模が大きい。

今春から全納税者を対象に全面免除すれば「少なくとも8千億ドルの減税になる」(ホワイトハウス高官)。17年末に決めた「トランプ減税」は大型減税とされたが、それでも年平均にすれば1500億ドル程度だ。トランプ氏は前例のない巨額減税で米景気のV字回復と11月の大統領選での再選をともに狙う。

野党・民主党も巨額の財政出動に傾きつつある。上院トップのシューマー院内総務は16日、総額7500億ドルという大型財政支出案を議会に提出すると表明した。無給休暇や失業を余儀なくされた雇用者に補助金を支給するほか、ITを使った遠隔教育システムなどにも政府資金を拠出する。高齢者には医薬品や食料の確保を保障する。

トランプ氏の給与税免税は「11月の選挙対策」と民主党に異論が強い。共和党内にも「給与税減税では、給与のない失業者や休業者に恩恵がない」と否定的な声が残る。ただ、ホワイトハウスと米議会の提案には内容に大きな差があるものの「巨額の財政支出が必要」との考えでは一致しつつある。

米連邦準備理事会(FRB)は15日の緊急会合でゼロ金利政策と量的緩和政策の復活を決めたが、翌16日にはダウ工業株30種平均が再び2000ドルを超える過去最大の下落幅を記録し、企業家や投資家の不安は全く拭えていない。市場は景気が短期回復できるか注視しており、それには雇用や産業を支する財政出動が欠かせない。

08年の金融危機時は米議会が銀行への資本注入策を迅速に可決できず、金融システムが崩壊の瀬戸際に追い詰められた。今回も08年時と同じく11月に選挙を控えており、与野党は簡単な妥協を嫌う側面がある。米議会が「決められない政治」を返上できるか正念場だ。

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