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僕のファッションはスキだらけ ビームス設楽社長

ビームス 設楽洋社長(上)

「僕自身がビームスのイメージそのまんま、ハッピーそうだ、楽しそうだ、と思っていただける笑顔でいたい」と、ビームス社長の設楽洋さん(東京都渋谷区のビームス本社)

米西海岸スタイル、トラッドにアイビー、ストリート――。日本を代表するセレクトショップ、ビームスの品ぞろえは枠(カテゴリー)にとらわれない。それは社長である設楽洋さんのファッション哲学そのものだ。幼い頃から流行を追いかけ、髪形も服装もクルクル変えて、あらゆるスタイルに挑戦した自称ミーハーは、徹底して装いを楽しんできた。ポリシーは「隙のある服装」。果たしてそのココロは。ファッション好きが高じて集めに集めた服の山はどう整理しているのか。装いのテクニックから断捨離(だんしゃり)まで、笑いを交えて語った。




休日は着古したスエットによれよれTシャツでリラックス

――ファッション企業の社長は、四六時中おしゃれに気を使っていると思われがち。それはそれで大変そうです。

「困ります。休みの日はめっちゃくちゃリラックスした格好で、『それがビームスの社長の格好ですか』と妻にたしなめられます。外出の予定がないオフの日は、らくちんが一番。でもこの前、まあいいだろうとそのまま犬の散歩に出たら、知り合いのファッション関係の社長さんに声をかけられて。向こうはレセプションに出席するビシビシのスタイルですよ。こっちは穴の開いたスエットによれよれのTシャツにサンダルばきで……」

――家では新しい服よりも体になじんだ服の方が解放されます。

「(漫画『ピーナッツ』の)ライナスの毛布と一緒で、一度なじんだ服は手放せません。散歩に着たスエットはビームス原宿のもの。Tシャツだって70年代から着ている。ずーっと着て、なじんで、くたくたになって、たばこで穴を開けて。何で捨てないの、といわれてもこの感じがいいんだな。もちろん普段は、次の日に会う人のことを考えて、前日にコーディネートを決めています」

――スケジュール次第では1日の間に着替えることもありますか。

「毎日堅いところから柔らかいところまで、あらゆる業界の人に会いますが、いちいち着替えてはいられません。ですから、どちらにも適した格好を意識します。一番難しいのが午前中は銀行の上の方、夕方にはデザイナーやアーティストに会うといった場合です。アーティストに寄った服だと銀行の方が『この人にお金を貸して大丈夫か』と見るでしょうし、ビシっとスーツで行くとアーティストからは『自分の感性が分からないだろうな』と思われる。そこで、これです」

毎日2~3本のストールを持ち歩く。「巻物はちょっと変化をつけたいときに便利ですよ」

――巻物ですね。

「両方に通用する服を選んだうえで、ストールなどの巻物で変化させます。いま着ている服装は銀行の方と面会しても失礼はない。午後にはネクタイを巻物に替え、帽子をかぶると雰囲気が変わります。巻物は便利ですよ。色々なタイプを50本ほど持っていて、その日の服装に合わせて2~3本持ち歩いています」

「センスって何かというと、相手の気持ちが分かること」

――装いは相手への気遣いが大事ということですか。

「僕はスタッフに、『センスのいい人になってほしい』と言っています。センスって何かというと、相手の気持ちが分かること。僕はファッションが好きですが、コミュニケーションのツールであるとも考えています。ビームスの社長がスーツをビシっと着て隙が無くて、となると相手はなかなか打ち解けられませんよ」

タラちゃん(設楽社長)の絵柄のスマホケース。よくみると「007」?「7」がタとなり「タラ」と読めるのだが……

――ファッション関係の方に会うとなると構える人もいると思います。

「だから、極力、隙をつくるんです。自分のことは会社でも社長ではなくボス、外の人にも極力『タラちゃん』と呼んでもらっています。服装ではまず最初に話題になるような、ひっかかりを1つ身につけています。バッグに付けた自分の人形のキーホルダーだとか、アイフォーンのケースだとか。ケースはタラちゃん仕様で、置いておくだけで『何ですか、これ!』と聞かれます。名刺入れは昭和初期のたばこ入れですよ」

――こちらは和装小物の合切袋(がっさいぶくろ)ですね。スーツに合わせるのが面白いです。

「ダークスーツ&ネクタイのときに持てば抜けた感じになり、堅い印象が和らぎます。あるとき結婚式で親しいお坊さんがタキシードに合切袋を合わせていた。かっこいいよなあ、やっぱりクラッチバッグよりこっちの方がいいよなあ、と思っていたら、あげますよ、とくださって、持ち方まで教えてくれました。気に入ったので同じ形でクロコのタイプも作ったんです」

――好きな色や組み合わせを教えてください。

「基本は紺×白。この間クローゼットの服を並べてみて、紺×白のチェックのジャケットがあまりにもたくさんあって、びっくりしました。スーツも紺がほとんど。ワイシャツは白無地か白紺のストライプです。トリコロールカラーが好きなので、ここに赤を差し色にすることも多いな。身につけているものは全身ビームスですね。義務感で着ているのではなく、好きなものが何でもそろいますから」

帯につるす根付けの付いたたばこ入れ(手前)には名刺やカードを入れる。後ろはクロコダイル革と印伝(鹿や羊の革)の合切袋

――これまで、ご自分のファッションの方向性が変わった時期はありましたか。

「常にめちゃくちゃ変わっていますよ。それが自分の特徴であり、コンプレックスなんです。副社長の遠藤(恵司氏)はアイビー一筋でモードの服を着てもアイビーになっちゃうタイプですが、僕はミーハーで流行に洗脳されちゃうタイプ」

「中学の後半にフォークバンドを始めて、アイビーカット、ロンドンストライプのボタンダウン、コインローファーという完全なアイビー少年。高校を卒業するころにはロックの洗礼を受けて突然髪を伸ばし始めて、親指以外ぜんぶに指輪をはめてパッチワークのベルボトムにロンドンブーツ。髪形も格好もそれぞれの時代のものに染まっていました。だからビームスは僕の子供のよう。スタートは西海岸のアメリカンカジュアルで、ストリートも、40~60年代の全盛期のアメリカも、ヨーロピアンクラシックもある。僕は全部着るから大変です。スタイルによって靴から何から全部変えるのだから」

むずかしい断捨離、寝るときは服をまたいでベッドに

――服が大好きで、何でも着たい、という意識は変わらないのですね。

「ぜんぜん変わっていないから断捨離ができない。このまえの日曜日に、やろう、と思いたって、90リットルのゴミ袋に10袋、捨てる洋服をまとめました。それなのに一体どこに入っていたの?、と思うくらい他の服が納まらない」

紺×白が大好き。ジャケットとパンツはタリアトーレ。ビームスのカスタムオーダーシャツにグランサッソのニットジレ。靴はチャーチの紺を合わせた

――10袋も。売るのですか。

「まだ処分していなくて廊下に並べてあります。以前はZOZOが古着の宅配買い取りサービスをやってくれていたのだけど、やめてしまって。メルカリのやり方も分からない。実は1回だけフリーマーケットをやったことがあるんです」

――ご自分でですか!

「自分でです。本当は代々木公園あたりでやりたかったのですが、すぐばれちゃいますからね。ビームスの社長がフリマをやって、ビームスのものを売っている、なんて恥ずかしいじゃないですか(笑)。だから、所沢(埼玉県)の先の方まで行ってひっそりとやりました。それでも気付かれてしまうんですね。いつか社員と一緒に、ビームスのフリマみたいなものをやったら楽しいだろうなあ」

――相当な数の服や靴をお持ちですが、収納はどうされているのでしょう。

「服以外もものすごい数でなかなか捨てられなくて。帽子やスニーカーが好きで、キャップは200個以上、ハットは50個以上。部屋の壁に並べたり、寝室に積み上げたり。スニーカーはシューズクローゼットに入りきらず、床に並べて、さらに自分の部屋に下りていく階段の一段一段に2足ずつ置いてある。横に通れるスペースを開けてね。なおかつ僕のベッドはシングルベッドなんです。でもダブルにみえる。なぜか。両サイドにベッドの高さまで、しまいきれないTシャツなんかを積みあげて、恥ずかしいから、そこに大きいダブルベッド用のカバーをかけるので、ダブルにみえるというわけ。寝るときには服をまたいでベッドに入ります(笑)。だから人生の3分の1は探し物をしているなあ」

――何でもトライする設楽さんでも着ない、履かないものはありますか。

「スニーカー好きといっても、最近はやりのハイテクスニーカーは履きません。時計もいっぱい持っていますが、デジタルは1つだけ。ローテクが僕の好みなんですよ」

(聞き手はMen's Fashion編集長 松本和佳)

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