移動制限、米欧企業を直撃 運輸・小売業など

2020/3/17 0:32 (2020/3/17 1:34更新)
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ドイツは16日、外国人の入国を原則禁止するため国境での検問を始めた=AP

ドイツは16日、外国人の入国を原則禁止するため国境での検問を始めた=AP

【ワシントン=河浪武史、ブリュッセル=竹内康雄】新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、米欧でも人の流れを制限する動きが広がってきた。米国は50人以上が参加する行事の自粛を勧告、欧州連合(EU)の欧州委員会は域外からの外国人旅行者流入の30日間停止を提案した。観光や運輸、小売業を中心に打撃が避けられず、雇用減少や個人消費の不振を招き、日米欧がそろって「同時不況」に突入するリスクがある。

米疾病対策センター(CDC)は15日、50人以上が参加する集会や行事を8週間にわたって自粛するよう全米規模で勧告した。世界的な飲食店が集まるニューヨーク市もレストランやバーは持ち帰りに限定し、営業の大幅縮小を求める方針だ。

欧州委は16日、パスポート提示など国境審査なしに自由な人の移動を認める「シェンゲン協定」の加盟国に関し、域外からの外国人旅行者の流入を30日間停止することをEU首脳に提案した。

加盟国にはすでに感染者の自国への流入を防ぐため、国境を閉鎖する動きが広がっていた。デンマークやポーランドに続き、ドイツも16日、フランスやスイスなど隣接5カ国との国境で検問を始めていた。

ただ自由な人の移動の制限はEUの理念を傷つけるとともに、経済に悪影響を及ぼしかねない。特に深刻なのが、入国制限の広がりで需要が急減する航空業界だ。KLMオランダ航空が最大2000人の削減計画を公表するなど、減便やリストラ策を発表する航空会社が相次ぐ。

オーストラリアの航空調査会社CAPAは「5月末までに大半の航空会社が経営破綻する」可能性があるとの見方を示した。航空会社は機材のリースや人件費など固定費の負担が重く、収入が急に落ち込むと資金繰りが厳しくなる。世界の航空大手約60社が加盟するワンワールド、スカイチーム、スターアライアンスの3航空連合は16日、各国政府などに支援を求める共同声明を発表した。

民間部門の営業自粛も広がってきた。スポーツ用品大手のナイキは15日、全米や西欧などの直営店を27日まで休業すると決定した。米アップルも中華圏を除く全直営店を27日まで閉鎖する。スウェーデンの衣料品大手、ヘネス・アンド・マウリッツ(H&M)は16日、フランスやスペインなどで店舗を一時閉鎖する方針を明らかにした。

企業業績の急速な悪化は雇用削減や個人消費の低迷を通じて経済全体を下押しする公算も大きい。

米景気は拡大局面が過去最長の11年目に突入し、2020年も2%前後の成長を見込んでいた。だが新型コロナの感染拡大を受けて、JPモルガンは1~3月期の米経済成長率は2%減、4~6月期も3%減と2四半期連続のマイナスを予測する。EUの欧州委員会も13日、20年はマイナス成長に陥る可能性が高いとの見解を示した。従来の見通しは1.2%増だった。

EUのミシェル大統領は16日、新型コロナ対策を話し合うため、加盟国首脳による臨時ビデオ会議を17日に開くとツイッターで明らかにした。

米欧が外出や移動制限を急ぐ背景には、感染の急拡大がある。米ジョンズ・ホプキンス大学の調べによると、16日時点でイタリアの感染者数は2万4000人を超え、スペイン(約7000人)、フランス、ドイツ(約5000人)が続く。

米国でも感染者が3000人を突破し、不安が急速に高まっている。米CDCは「最悪期はこれから」とみており、移動や外出を制限する措置は長引く可能性がある。

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