勝利のメンタリティー(山本昌邦)

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リフティングでもミニゲームでも…自習のすすめ

2020/3/18 3:00
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新型コロナウイルスの世界的な感染拡大はスポーツ界に暗い影を落としている。日本のスポーツ界も開店休業のような状況が続く。見えない敵との闘いは出口の見えないトンネルにいるようで、肉体的にも精神的にもじわじわとむしばまれていく感じだ。

世界のスポーツ界が動きを止めた

9年前の東日本大震災の時も同じような気持ちになった。巨大な地震と津波で1万6千人近い人が亡くなり、福島第1原発の事故も重なって、ぼうぜん自失になった。しかし、西日本など直接的な被害が小さいところもあり、そのうち「元気な者から動いていこう」「前を向くしかない」という機運が少しずつ起きていった。国の内外からの活発な支援活動にも助けられた。

欧州CLのバレンシア戦でPKを決めるアタランタのイリチッチ。一時は無観客で行われた欧州CLや各国リーグもその後次々と延期となった=AP

欧州CLのバレンシア戦でPKを決めるアタランタのイリチッチ。一時は無観客で行われた欧州CLや各国リーグもその後次々と延期となった=AP

今回はそういう意味では勝手が違う。感染は世界中に拡大、どこの国も自分のことで精いっぱいという感じ。動くことよりも動きを止めることが求められ、新幹線も飛行機もがらがら、ホテルもキャンセルが相次いで、ヒトもモノもカネも回らない状態が続く。

経済学はまったくの門外漢だが、経済にとってヒトという実体が動くことの大切さをあらためて思い知らされた気がする。

JリーグはJ1とJ2が第1節を終えた後にリーグの延期を決め、再開を4月3日に設定し直した。感染の勢いが鈍らないと、さらなる延期や無観客試合も検討の対象になるのだろう。J1で資金的に余裕のあるクラブはともかく、それ以外は無観客試合を継続的にやるとなったら、経営的に苦境に追い込まれるところがかなり出そうだ。

J2やJ3の地域に根づいたクラブは、財政的には社長のトップセールスや営業部隊のこまめな努力、地場の企業の支援によって、支えられているところが多い。

またJリーグの成功はサッカーを産業化したけれど、それは、小なりとはいえビジネスの裾野が広がったことを意味する。試合が開催できない、できても無観客でとなると、クラブや協賛企業だけでなく、サポーターを運ぶ鉄道や航空、旅行会社、運営を担う警備、イベント会社など関係各方面にしわ寄せは及ぶのだろう。

横浜FCと引き分け、引き揚げる神戸イレブンとマスク姿のサポーター。この開幕節の後、Jリーグも長い中断に入った=共同

横浜FCと引き分け、引き揚げる神戸イレブンとマスク姿のサポーター。この開幕節の後、Jリーグも長い中断に入った=共同

いつまで耐えればいいのか先が見えない状況で、そういう現場の方々の苦労を思うと本当に胸が痛む。なんとか心を一つに、この難局を乗り切りたいものだ。

私は自宅近くの公園の周りをウオーキングするのを日課としている。最近は一斉休校によって行き場を失った子供たちが自発的に公園に集まり、ボールを蹴っている風景に出くわすことが増えた。楽しげな姿につい、ほほ笑んでしまう。

勉強がそうだが、本当に学ぶことが好きな人間は、親や先生に言われなくても自分から進んでやるものだ。本来、スポーツもそういうもの。顧問の先生や監督にがみがみ言われ、やらされるのはスポーツではない。

一人でもできる練習はある

学校に通えない子供たちは今、いわゆる部活にも参加できない。しかし、それは「練習ができない」ということではないだろう。いざとなれば練習は1人でもできるし、個人練習なら場所もそんなには取らない。

例えば、ボールリフティング。これはコツコツと自習すれば必ず上達するものだ。根気さえあれば5回を10回に、10回を20回に増やしていける。右足でできるようになったら左足でもできるようになる。

親御さんは、お子さんがその成果を披露したいと言ってきたら、見てあげて「上手になったねー」と褒めてあげてほしい。そして次の課題を与えてほしい。褒められた子供はどんどん新しいものにチャレンジする。そういう自主練の習慣と習得のサイクルを今は身につけるチャンスかもしれない。

そんなニーズに応えようと、日本代表選手やJリーガーがいろんなテクニックを"宿題"の形にして動画で披露している。日本サッカー協会(JFA)も、「JFAチャレンジゲーム」という動画を公式ホームページで4月5日まで無料公開中だ。

これは、8歳までを対象にした「めざせクラッキ!」と9歳以上を対象にした「めざせファンタジスタ!」の2部に分かれ、子供たちがスポーツに必要な動きやサッカーのテクニックを、段階を踏みながら見よう見まねで身につけられるようになっている。

パスを出す神戸・イニエスタ(中央)。彼のプレーは自習のいいお手本になる=共同

パスを出す神戸・イニエスタ(中央)。彼のプレーは自習のいいお手本になる=共同

子供のうちに身につけたボールタッチやフィーリングは一生の宝物になる。ヴィッセル神戸でスーパーなプレーを連発しているイニエスタも、自分のプレーの原点は幼少期の仲間とのミニゲームにあったと語っている。

もし、練習する相手がいるなら仕掛けるプレーを磨いてほしいとも思う。相手を惑わすフェイントと方向を変えるターン。特にターンは、ついているマーカーを外すだけでなく、視界を変えて攻撃の方向をがらりと変える上で有効。ここでもイニエスタは最高のお手本だ。

自分でやる、考えてみる

サッカーの上手な人から見れば、動画で公開されている宿題は他愛のないものかもしれない。物足りなければ「こういうリフティングをしてみよう」「こういうフェイントはどうか」と自分で工夫するのもいい。スポーツの根本は、自分の意思で創意工夫する人間しか本当の意味で成長できないところにある。そうやって子供のころからスポーツを通して身につけた習慣は社会に出ても、きっと役に立つはずである。

チームで練習できない今は自分でやりたいことをやる機会ともいえる。10歳から17歳までの選手としての成長期に1、2カ月というのは本当に貴重な時間だ。その時間を家の中でごろごろして過ごすのは、やはりもったいない。学校の宿題をし、家の手伝いもし、空いた時間でいいからボールに触る、少し体を動かしてみる。自分でやることと、人にやらされることでは、伸びしろも違う。

大人になって「あのとき、家で、公園で一人でやったことが自分の土台になった」と懐かしく振り返る時が来るかもしれない。

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