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産油国、増産でサウジに続く OPEC同士でも競争

サウジは価格下支えの戦略を転換した(サウジ東部アブカイクにあるアラムコの石油貯蔵タンク)=ロイター

【ドバイ=岐部秀光】産油国による市場シェアの争奪戦が本格化する。価格下支えの協調をやめたサウジアラビアとロシアに続き、アラブ首長国連邦(UAE)やイラクが生産を増やしたり、売値を下げたりしはじめた。ロシアとの協調減産が決裂したことで、石油輸出国機構(OPEC)内部の協調も事実上くずれた。新型コロナウイルスの感染拡大で需要が減るなか、原油価格には下押し圧力が増す。

国際指標の北海ブレント先物価格は足元で1バレル34ドル近くで推移する。OPECとロシアなど非加盟産油国による協調減産の決裂でサウジが大幅な増産を表明。価格は一気に30%も下がり、年初のピークの半分となった。

日量970万バレルを生産するサウジは、備蓄放出とあわせて4月に日量1230万バレルを市場に供給する。政府は国営石油会社サウジアラムコに生産能力の上限を現在の推定の日量約1200万バレルから100万バレル引き上げるよう指示した。

ロシアは国営石油最大手のロスネフチが4月から生産を日量30万バレル引き上げる方針とみられる。UAEのアブダビ国営石油(ADNOC)は現在の日量300万バレルから日量100万バレルを増産する準備があると表明した。ADNOCもアラムコとおなじく生産の能力を引き上げる方針だ。

サウジが北米、欧州、アジアの顧客向けに4月の販売価格を大幅に引き下げたことを受け、イラクやクウェート、UAEなどの有力な中東産油国もあいついで追随値下げの立場を表明した。

OPECは産油国の利益保護のため1960年に設立され、価格の大幅な引き上げで2度の石油危機を起こすなど、価格形成に影響力を行使してきた。一般に価格カルテルは、相場の上昇局面での協力がたやすい一方、下落局面では利害の対立が表面化しやすい。サウジが伝統的に担ってきた需給調整役を放棄したことで、加盟国同士での競争を強いられている。

石油は値下げをしても、すぐに消費量が増えるような商品ではない。このため価格の低下は産油国の歳入減少に直結する。サウジやナイジェリアなど、経済構造が石油の販売収入に依存する国にとっての影響は大きい。サウジの20年予算は1バレル80ドルの原油価格を前提にしている。歳出削減などの緊縮を一段と進めざるをえない。

これまで中東産の原油に依存してきた米国はシェールオイルの開発で、世界最大の原油生産国に躍り出たが、生産コストが高く相場急落の打撃は大きい。資本調達コストが急上昇し、市場からの退場を迫られる企業が増えそうだ。

世界経済にとっては「石油マネー」の行方をめぐる不安がある。湾岸アラブ産油国が抱える金融資産は2兆ドル(約210兆円)とみられる。伝統的に米国債などに振り向けられていたが、近年は政府系ファンドが、より大きなリターンを得るため、資金を米国のテック産業などに振り向けている。

日本のソフトバンクグループが創設した「ビジョン・ファンド」では、サウジのパブリック・インベストメント・ファンド(PIF)やUAEのムバダラが大口の出資者として名を連ねた。産油国側の投資姿勢がふたたび慎重になり、米国などのスタートアップ企業を支えた資金の流れが目詰まりを起こす可能性がある。

国際通貨基金(IMF)によると、2014~15年の前回の原油安局面では産油国から消費国に6.5兆ドルの所得移転があった。産油国の石油収入が減った分、消費国では巨額の減税と同じ効果がもたらされた。

ただ、今回は原油安が米シェールなど企業の信用問題に飛び火したり、産油国の混乱が深まったりして世界経済に跳ね返るリスクも指摘される。原油急落を受け、米国の株価が大幅下落したのはこのためだ。

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