FRB、ドル資金逼迫に焦り にじむ米景気後退リスク

2020/3/16 10:32
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パウエルFRB議長=ロイター

パウエルFRB議長=ロイター

【ワシントン=河浪武史】米連邦準備理事会(FRB)が15日、再び緊急利下げに踏み切り、ゼロ金利政策と量的緩和政策を一気に復活させた。堅調だった米経済も、新型コロナウイルスの感染拡大で景気後退懸念が強まる。パウエルFRB議長は15日の記者会見で「資金の流動性に強いストレスがある」と、投資マネーの逼迫に強い警戒感を表明。金融機関や企業の資金繰り改善を急ぐ考えを強調した。

「世界経済は活動が落ち込み、世界的な供給網に依存している産業は困難な状態にある」。パウエル議長は新型コロナで米景気に大きな下振れ懸念があると認めた。

米経済は拡大局面が過去最長の11年目に突入したが、JPモルガン・チェースは1~3月期、4~6月期とも一転してマイナス成長に転落すると予測。市場では景気後退に陥るとの懸念が強まっている。米政権は入国制限を欧州などに拡大し、全雇用の1割を占める旅客・飲食など関連産業は大打撃が避けられないためだ。

ただ、日曜夕方という異例の時間帯に緊急利下げしたのは、金融市場で急激にマネーが逼迫して、一刻の猶予も許されなかったためだ。FRBは13日、金融機関を対象に中長期債を買い入れて資金供給する緊急策を発動したが、300億ドル(3.2兆円)強の予定額に対して各年限とも2倍前後のオファーが殺到。金融機関が安全資産の米国債を売却してまで手元資金を積み増す動きが鮮明になっていた。

邦銀などが外貨を調達するのに利用する「ベーシススワップ」市場では、代表的な期間3カ月の取引で邦銀が米銀に支払う上乗せ金利が3月以降大きく上昇。金融市場でのドル資金の逼迫ぶりを映している。

民間企業も手元資金をかき集め始めた。航空機大手のボーイングは、銀行と設定した138億ドル分の融資枠を使い切る方向とされ、ホテル大手のヒルトン・ワールドワイドも融資枠の取り崩しを検討していると報じられた。MMF(マネー・マーケット・ファンド)の解約などで、企業が短期資金を調達するコマーシャルペーパー(CP)市場も資金の逼迫が予想され、信用不安のリスクが各所にある。

ただ、パウエル議長は「民間銀行には十分な資本と流動性がある」と強調し、市場の不安は行き過ぎだとけん制した。08年のリーマン・ショックは民間金融機関のリスク投資などが市場の崩壊を招いたが、その後の資本増強で銀行の体力は高まっている。日欧中銀へのドル供給も拡充し、金融不安の芽を潰したい考えだ。

FRBが早々にゼロ金利と量的緩和というカードを切ったのは、短期決戦で景気を立て直す必要があるためだ。ホワイトハウスは13日に国家非常事態を宣言し、新型コロナの検査拡大など感染防止策に緊急資金を投じる。トランプ大統領も15日、FRBの緊急利下げを「素晴らしいことだ」と珍しく評価した。FRBの利下げは新型コロナの即効薬とはならないが、摩擦が続いてきた米政権とFRBの連携に道を開いたのは確かだ。

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