/

FRB議長「試練乗り切るまでゼロ金利維持」 会見要旨

(更新)
FRBのパウエル議長=共同

米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は15日午後6時半(米東部時間)、臨時の米連邦公開市場委員会(FOMC)後に記者会見を開いた。冒頭発言と質疑応答の要旨は以下の通り。

冒頭発言

本日、FRBは米国の家庭や企業、そして経済全体を助けるために数多くの手段をとった。信用取引の流れを促し、新型コロナウイルスによる傷を乗り切るためだ。新型コロナは米国ならびに世界中の人々に深刻な影響を及ぼしている。

我々の最初の懸念はコロナによって傷つけられた人がいるということだった。家族、ビジネス、学校、政府といったあらゆる規模の組織で人々の健康を守るための手段を取っている。感染拡大を防ぐために不可欠なこれらの手段は、当然のことだが、近い将来の経済活動の停滞につながる。

これらの試練への最初の反応は我々の医療保険の提供会社や当局の担当者から出るだろうが、経済政策の担当者もこの混乱からもたらされた困難を和らげるためにできることをしなければならない。経済活動を、これまで歩んできた通常の状態に戻す手助けをする必要がある。

FRBの役割は議会から我々に与えられた義務として、米国民のために最大の雇用を促し、物価を安定させることだ。さらに金融システムの安定・維持に努めるということがある。

本日、我々は政策金利目標を1%引き下げた。政策金利をゼロに近づけ、この金利水準を維持するだろう。経済が直近の出来事を乗りきったと自信が持てるまで、そして最大の雇用と、物価安定目標の達成に向けた軌道に乗れると判断できるまでは、この金利水準を維持するだろう。加えて、我々は家計や企業のために信用取引のフローを支援する他の行動を取った。

詳しく説明する前に、私と同僚の現在の経済への見方を共有しよう。力強い足元において、経済は試練のときを迎えた。失業率は2月に3.5%で、約半世紀ぶりの低水準をほぼ2年にわたって維持している。雇用者数の増加は底堅く、労働市場への新たな参加者に与える仕事量は十分だ。25~54歳の労働参加率はここ10年超において最高水準で、賃金は特に低所得層において上昇している。

海外経済の弱さや、貿易交渉がいくつかの業種に重くのしかかってきたものの、経済活動全体としては緩やかに拡大している。米国の銀行は力強く、資本と流動性は高水準にあり、家計と企業に信用を提供するのに十分な立ち位置にある。

これらの好ましい状況に反して、新型コロナは経済にとって重大な試練となっている。他の人と同じように、我々は感染症とそれを封じ込めようとする施策は、近い将来の経済活動に重大な影響をもたらすと予想している。旅行や観光、サービス産業は既に深刻な落ち込みを示している。加えて、感染拡大は多くの諸外国の経済活動を下押しし、世界的な供給網に頼る米国の産業に困難をもたらしている。

海外経済の弱さは、当面の我が国の輸出を下押しするだろう。さらに、世界的な原油価格の急落でエネルギー業界が直近で下押し圧力にさらされている。物価上昇率は、目標の2%目標を下回ってきたが、今年は感染拡大の影響でさらに下がるだろう。

金融環境も著しく引き締まった。信用コストは最も強い借り手を除いて上昇し、世界中の株式市場は急激に下落している。急速な状況の変化は、誰もが今後の道筋を見極めようとする中で、金融市場の高いボラティリティーにつながっている。過去1週間、米国債市場を含むいくつかの重要な金融市場では、時として圧迫や流動性の低下の兆しが見られた。

国債市場は世界の金融システム基盤の重要な部分を占めている。一般的に、すべての市場の中で最も流動性が高く、他の多くの金融資産を評価する基準となる。家計と企業が安全なリターンを得て、彼らのリスクを管理する上で重要な役割を果たす。国債市場でストレスが生じると、金融システム全体や経済全体に波及する可能性がある。

こうした事態を回避し、米国債市場の円滑な機能を助けるため、米国債を今後数カ月で少なくとも5000億ドル購入することを本日発表した。似たような圧迫は米国債市場と密接に連動する住宅ローン担保証券(MBS)でも生じている。MBSは住宅ローンで家を購入したり、既存の住宅ローンを借り換えたりする人々を支援している。

この市場における機能を改善し、借り手に対して金融政策の効果を伝達するため、今後数カ月の間に少なくとも2000億ドルのMBSを購入し、我々のポートフォリオにおけるこれらの証券の流出を直ちに止める。これは円滑な市場機能を回復させ、信用の流れを継続させることが第一目的だが、緩和的な金融環境を醸成することにもつながる。

FRBは家計と企業の信用の流れを支援するため、数多くの施策を本日公表した。これらの中で2つ触れておきたい。まず我々は(金融機関への貸出金利にあたる)公定歩合の金利を1~0.5%引き下げ、0.25%とした。公定歩合は銀行システムにおける流動性と安定性を助ける上で重要な役割を果たす。家計や企業からの信用需要を満たすために、銀行が公定歩合を利用することを奨励する。より効果的にするために、公定歩合における貸し出しを90日間提供する。

ドルの世界経済における重要性を考慮すると、海外に対してドルを借りたり貸したりする市場の緊張は、米国の金融環境を損ないかねない。不確実性が高まっているいま、市場における潜在的な圧力に対処するため、我々は、カナダ銀行、イングランド銀行、日本銀行、欧州中央銀行およびスイス国立銀行と協調して、米ドル資金を供給する枠組みを拡充することで合意した。

本日発表した措置は、米国の家庭や企業、そして経済全体がこの困難な時期を乗り切り、新型コロナによる混乱が収まれば、より活発に通常の状態に戻ることを促すだろう。我々は、引き続き、経済・金融情勢およびそれらが経済見通しに与える影響を注視する。我々は、家計および企業への信用の流れを助け、経済の健全性を維持し、最大の雇用と物価安定目標のために、あらゆる手段をとる用意がある。

最後に、本日のFOMCは、17~18日に予定されていた会議の代わりであることを伝える。

米連邦準備理事会(FRB)の建物=2018年8月、ワシントン(ロイター=共同)

質疑応答

――新型コロナの影響を見極める上で、どのような経済指標に着目しているのか。景気後退は避けられないと思うか。

「新型コロナがくる前には米経済はかなり力強い状態にあった。我々がとる措置は、旅客業や観光業の活動の落ち込みから我々を守るだろう。4~6月期の成長率は生産が落ち込み弱まるだろう。その後の経済への影響がどの程度深刻なのかを判断するのは非常に難しい。新型コロナの感染次第で、極めて不透明だ。いずれ感染は収まり、米経済は通常の活動に戻るだろう。当面は、我々は家計と企業への信用のフローを支える手段をとり、金融政策で経済の立ち直りのためにできることをする」

「短期的には市場機能の正常化を見極める。中央銀行の役割は金融システムに流動性を提供することなので、大変重要な仕事だ。経済指標は新型コロナの感染動向に連動するだろう。しかし感染動向は6カ月後の経済を示すものではない。まずは感染状況とその経路を把握し、経済にどのような影響を及ぼすのか見極めることになる」

――マイナス金利政策を検討しているか。

「我々の政策手段、戦略、対話について1年以上研究したが、フォワード・ガイダンス、資産購入、それら異なった組み合わせを、我々の政策の基本的要素と見なしている。政策金利がゼロ金利に近づいたなら、フォワード・ガイダンスや資産購入、その組み合わせになる。世界金融危機の際にはマイナス金利について、他国の政策も含め調べたが、米国では適切だとは考えていない」

――量的緩和策の規模と期間について、どの程度を見込むのか。

「月や週で購入額は決めず、市場機能を回復させることができる力強い水準で購入していく。月に何億ドルと決めて実施するわけではない。明日から米国債や住宅ローン担保証券(MBS)の購入を始め、必要な手段を駆使して市場機能の正常化を図る。政策金利については、経済が新型コロナを乗り切り、雇用と物価安定の目標を達成できることを確信できるまで維持する。本日、我々は政策金利だけでなく流動性措置でも非常に強い対応を取った。金融市場全般に恩恵をもたらすものだと思う。家計と企業の信用フローを支えるためにあらゆる手段をとる準備がある」

――本日の措置が、具体的に家計や企業にどう信用を提供するのか。

「国債とMBS購入は、両者の市場が適切に機能するのを確保する。国債市場は世界に最も重要な市場の1つで、最も流動性が大きい。MBS市場も国債市場と強く結びついている。先週、大量の資金を投入して流動性を支える資産を購入した。役には立ったがさらなる支えが必要だったため、本日の資産購入計画をとることになった。これらの市場が通常の機能を取り戻せるようにする」

「これらの市場は、国際金融システムおよび米国の金融システムの基盤となっている。うまく機能しないと他の市場にひろがり、家計や企業の信用市場にも影響する。金融危機によって、機能不全の金融市場が経済に非常に深刻な打撃を及ぼすことを学んだ。今は当時とは異なるが、重要市場の適切な機能を支えるために強い措置が必要だと考えた」

――ホワイトハウスとの連携はしているのか。

「我々の管轄外である財政政策の権限を持つ財務省とはかなり緊密に連携している。財政政策は直接労働者にアプローチできる。従来も財政政策の効果をみると重要な役割を果たしている。より広範な財政刺激策の必要性については経済の動向によるが、幅広い可能性があると思う。我々には個人や小規模事業者を助ける手段がない。様々な政府機関の対応が必要だ。一義的に重要な対策は医療関係者などが担うが、その後に個人や企業を救済するのが財政政策だ」

――パウエル議長は新型コロナの検査を受けたのか。また在宅勤務はしているのか。

「私の体調は良好で、検査を受ける理由はない。在宅勤務についてはどういった体制が良いのかどうか、注意深く見ている。我々の仕事は大人数がまとまって行うものではないため、専門家の意見を聞いたうえで対応している。前例を作るために私も今後在宅勤務する可能性がある」

――ここ数週間で様々な政策が展開され、市場はその一部に否定的な反応を示した。FRBが持つ道具は残り少ないのでは。

「我々が最重要と考える流動性の手段は金利だ。利下げは借り手が安心感を得るために重要だ。現在最前線にあるのは流動性ツールであり、その仕事を我々は上手にこなしている。資産購入を進めるために、将来のガイダンスを提供し、必要なことをする余地がある。ただ通常は、過去の多くの景気後退局面では財政政策が大きな役割を果たしてきた」

「財務省を含め他の規制当局、世界中の中央銀行と連絡を取り合い、市場で起きていることを絶えず話している。市場関係者は、高い不確実性の中で何が起こっているのかを理解しようとする。こうした時には金融の安定性により多くのリスクが生じる。我々は金融の安定性に重点を置き、慎重に状況を監視し、弾力性のあるシステムを構築した。銀行は非常に資本が厚く流動性は高く、リスクの理解と管理に優れ、ストレス耐性もある。過去10年間で、従来よりはるかに回復力のある金融システムだ」

――数日前、レポ市場に資金供給したが、需要はそこまでなかったように見えた。

「米国債とMBS市場は非常に逼迫していた。トレーダーが資金を調達しやすくするために大量のレポを提供することにした。指摘のようにレポの需要は多くなく、ディーラーを通してではなく直接介入する必要があった。実際に証券を購入して我々のポートフォリオに組み入れる必要があると気付き、先週金曜に長期国債を購入した。市場機能は少し回復したが、我々の求めているものには届かなかった。それで本日緊急でFOMCを開き追加策を発表した」

国内外の編集者が執筆するニューズレターを平日毎日配信しています。「世界のいま」がつかめ、ビジネスや就活に役立ちます。登録はこちら(電子版有料会員限定)。https://regist.nikkei.com/ds/setup/briefing.do?me=S001&n_cid=BREFT038
新型肺炎

すべての記事が読み放題
有料会員が初回1カ月無料

新型コロナ

新型コロナウイルスの関連ニュースをこちらでまとめてお読みいただけます。

ワクチン・治療薬 休業・補償 ビジネス 国内 海外 感染状況

関連企業・業界

企業:

セレクション

トレンドウオッチ

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン