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米軍、親イラン武装組織空爆 対立再燃の恐れ

緊張避けたい思惑も

(更新)

【ワシントン=中村亮、ドバイ=岐部秀光】米軍は12日、イラン傘下にあるとされるイラクの武装組織を攻撃した。イラクで前日に米軍駐留基地を狙ったロケット弾攻撃があり、米兵2人が死亡したことに報復した。対立が再燃する恐れがある。ただ両国は新型コロナウイルスへの対応に専念する必要に迫られており、緊張が再び高まるのを避けたい思惑もにじむ。

トランプ米大統領は新型コロナウイルスへの対応で批判を浴びている(12日、ワシントン)=ロイター

トランプ米政権はかねて、米国人の死傷者の発生を「レッドライン(越えてはならない一線)」と強調。トランプ大統領は12日記者団に、11日の基地への攻撃について「反逆者による犯行だ」と非難した。エスパー米国防長官は12日の声明で「米国人に対する攻撃は許さない」と強調した。

米軍は報復としてイラクのシーア派武装組織「カタイブ・ヒズボラ」の5つの武器貯蔵施設を空爆。米軍駐留基地の攻撃に使われたロケット弾の貯蔵施設も標的にした。

ロイター通信によると、イラクの警察は声明で米軍の攻撃によって3人のイラク兵が死亡し4人が負傷したと指摘した。イラン外務省スポークスマンは13日、「トランプ氏は、危険な行動に出る前にイラクへの違法な駐留をやめるべきだ」と指摘した。

米兵に死者が出たことを考えれば、米軍の対応は抑制的とも映る。トランプ氏は12日、記者団に「まだイランが関与したと完全には断定していない」とも発言。イランからも米軍の空爆への報復の動きは出ていない。

新型コロナの感染拡大に直面する両国は、ともに、対策が正念場を迎えている。

イランの感染者数は1万人を超え、中東で突出する。長引く国際社会からの制裁で医療システムが大打撃を受けたイランでは、感染症対策に大きな制約がある。

イランでは聖地コムで最初に感染拡大が確認されたが、検査キットの不足が政府の対応出遅れの原因とみられている。対策の陣頭指揮にあたる保健省の副大臣が感染し、せきをしながら記者会見を開くなど政府対応のまずさも批判を浴びた。このタイミングで米国への挑発を増すと、国民の批判の矛先は指導部に向かいかねない。

カタイブ・ヒズボラは2007年ごろにイラク戦争に従事した米軍主導の多国籍軍の排除を目的に設立し、その際にイランの最高指導者ハメネイ師に直属する革命防衛隊が支援したとされる。米政権はイランがカタイブ・ヒズボラに武器を提供し、イラク駐留米軍に対する攻撃を間接的に支援していると主張する。

米軍は19年12月末、カタイブ・ヒズボラのロケット弾攻撃で米軍に死傷者が出ると、すぐさま報復を実行した。この直後に駐イラク米大使館の襲撃事件が起きると米国はイランの関与を主張。米軍はイランで英雄視された革命防衛隊の精鋭「コッズ部隊」の司令官を殺害し、イランは弾道ミサイルでイラクの米軍駐留基地を報復攻撃した。

もっとも、強硬派が主導するイランと、トランプ流の予測困難さが目立つ米国の間には常に偶発的な衝突のリスクがつきまとう。

米国の元国防総省高官は「トランプ氏はこれまでの政権運営で外交政策のかじ取りに自信を深めた。周囲のアドバイスに耳を傾けず政策を決める傾向が強まっている」と指摘する。トランプ氏は新型コロナへの対応で批判を浴びており、イランに一段と強硬姿勢を示して世論の関心を新型コロナからそらす可能性も否定できない。

国民の不満を、対米批判によってそらそうとするのはイランも同じだ。イランのザリフ外相は12日、国連に宛てた書簡で「米国の経済制裁のせいで医療品や医療器具の輸入が事実上不可能になっている」と非難した。米国務省のオルタガス報道官はツイッターで「新型コロナに関して支援を申し出ているがイランの政権が拒否している」と真っ向から反論した。

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