米の入国制限で大混乱 猶予2日、欧州空港に長蛇の列

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2020/3/13 10:28 (2020/3/13 14:44更新)
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パリのシャルル・ドゴール空港には米国行きのチケットを求める人々の列ができた(12日、ロイター)

パリのシャルル・ドゴール空港には米国行きのチケットを求める人々の列ができた(12日、ロイター)

【ニューヨーク=高橋そら、ロンドン=篠崎健太】トランプ米大統領が欧州大陸からの外国人の入国禁止措置を表明したことで、欧米の航空会社や旅行客に混乱が広がっている。入国禁止まで2日しか猶予がなく、欧州の主要空港には駆け込みで米入国をめざす旅客が殺到した。入国禁止後は欧米間の航空便が大幅減となる見込みで、運輸・レジャー業界には大きな打撃となる。

■欧米便のチケット高騰も

仏パリのシャルル・ド・ゴール空港には12日、米国行きのチケットを求める顧客の長蛇の列ができた。米国籍や永住権を持たない外国人は13日深夜から30日間、欧州大陸からの入国が禁止される。米国行きのチケット価格は高騰し、エールフランスの公式サイトでは、13日出発のパリ―ニューヨーク便の片道最安値が2000ドル(約21万円)を超えた。

ニューヨーク市の旅行会社には「欧州滞在を切り上げて明日までに帰国したい」という問い合わせが相次いだ。担当者は「フランスやドイツからの帰国便を求める客が多いが、空席が限られており全員分の手配は難しい」と話す。米アメリカン航空は駆け込み需要によるチケットの高騰を抑えるため、欧州から米国に向かう便の運賃に上限を設けた。

欧米の航空会社の顧客向けコールセンターはパンク状態に陥った。欧州大陸から米国への入国禁止を受け、不安に駆られた消費者が電話窓口に殺到したためだ。

北欧に旅行中だったライアン・ユートフさん(26)は「すぐにデルタ航空に電話したが、6時間待ちの状況だった」。慌ててロンドンへの便を予約したが、米国人は検疫を受ければ14日以降も入国可能と知り、元の旅程にこだわってキャンセルしたという。

■従業員解雇の動きも

14日以降は欧米間の運航便が大幅に減少する見通しだ。米デルタ航空は12日、パリと米国の主要4都市を結ぶ直行便など欧米間の7路線を運休すると発表した。独ルフトハンザ航空もミュンヘンやジュネーブなど欧州の一部空港と米国の運航便の運休を決めた。

ノルウェー格安航空会社(LCC)のノルウェー・エアシャトルはロンドン発着を除く欧米便の4月末までの全面運休と従業員の最大5割の一時解雇を決めた。ジェイコブ・シュラム最高経営責任者(CEO)は米国の入国制限によって「厳しい状況にさらに負荷がかかる」と窮状を訴えた。

「米空港での発着枠基準を一時的に緩和する」。米連邦航空局(FAA)は新型コロナ拡大で減便を余儀なくされている米航空各社に配慮し、空港に発着する運航便数の基準を少なくとも5月末まで緩和した。通常、米国では割り当てられた分の80%以上が使われない発着枠は、継続利用する権利が失われるためだ。

これまで航空各社は発着枠を維持するため、乗客のいない便を飛ばすなど負担を強いられていた。世界のハブ空港で基準緩和が進まなければ、業績への打撃は避けられない。FAAは「外国当局による同様の措置を期待している」と説明。「相互措置にならない場合は米空港で外資航空会社に(基準の)緩和を認めない可能性がある」ともけん制した。

■航空旅客の収入12兆円減見通し

国際航空運送協会(IATA)は12日、経営悪化が見込まれる航空会社への財政支援を各国政府に要請した。IATAは5日に2020年の世界の航空旅客収入が最大1130億ドル(約12兆円)減るとの見通しを公表。これには米国の今回の措置を含んでいない。

アレクサンドル・ドゥ・ジュニアック事務総長は「移動制限は数日間にとどめるべきで、大規模な休止は経済に重大なマイナス影響をもらたす」と警告した。

観光産業への影響も大きい。米ヒルトン・ワールドワイドは12日、入国禁止がかかった欧州の26カ国について4月12日までキャンセル料金を求めない方針を発表した。業界団体によると、3月第1週の米国のホテルの稼働率は62%と前年同期から7ポイント低下し、宿泊料金も5%下落した。

米旅行協会のロジャー・ダウ会長は「旅行業界は中国からの渡航制限で打撃を受けており、欧州にも制限がかかれば極めて厳しい状況に陥る」と話す。同協会によると、欧州(英国を除く)からの米国への旅行客は19年3月に85万人と訪米客全体の29%を占めた。

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