「抵抗困難」認め逆転有罪 名古屋高裁、娘暴行の男に

2020/3/12 15:09
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名古屋高裁が入る合同庁舎(名古屋市中区)

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2017年、当時19歳の娘に性的暴行を加えたとして準強制性交罪に問われた男(50)の控訴審判決が12日、名古屋高裁であった。堀内満裁判長は、無罪とした一審・名古屋地裁岡崎支部判決を破棄し、懲役10年を言い渡した。一審の求刑は懲役10年だった。娘が当時「著しく抵抗困難な状態」だったと認めた。

準強制性交罪は、被害者が心理的、物理的に著しく抵抗困難な状態に乗じて犯行に及ぶことが成立の要件となる。19年3月の一審判決は、性的虐待があったことを認める一方、娘が過去に暴行を拒んだ時期があったことなどを理由に「人格を完全に支配され、服従するしかない関係ではなかった」と判断していた。

だが堀内裁判長は判決理由で一審の無罪判決について、「準強制性交罪の成立の要件を厳しく求めており、不合理だ」と指摘。「抵抗した後も殴られ、性的虐待が繰り返されたことで娘の抵抗の意思が弱まり、抵抗困難な状態がむしろ強まった」と判断し、同罪が成立すると結論づけた。

そのうえで、堀内裁判長は「犯行の常習性は明白で、被害者の肉体的、精神的苦痛は深刻で重大だ」と述べ、一審の求刑と同じ懲役10年を言い渡した。

娘は代理人弁護士を通じ、「『逃げようと思えば逃げられた』と周りから言われたが、幼少期に暴力を振るわれ、できなかった。無罪判決が出たときは取り乱した。今日の判決が出て、やっと少しホッとできる」とのコメントを出した。

判決後に記者会見する被害者の代理人弁護士ら(12日、名古屋市中区)

判決後に記者会見する被害者の代理人弁護士ら(12日、名古屋市中区)

控訴審判決によると、男は17年、愛知県内の事務所やホテルで娘に性的暴行を加えた。

検察側は控訴審で「娘は抵抗しても無駄という無力感を強めていた」と主張。弁護側は無罪判決の維持を求めていた。

19年は性暴力事件の無罪判決が相次ぎ、被害者らの団体が抗議活動を進めた。このうち、酒に酔った女性への性的暴行事件では福岡高裁が20年2月、「抵抗困難な状態に乗じた犯行」と認め、男を逆転有罪とした。男は上告している。

性犯罪の処罰を巡っては、厳罰化を柱とする改正刑法が17年に施行され、付則で必要に応じて3年後に検討を加えるとした。法務省の作業部会は法改正後の実態を調査しており、準強制性交罪の「抵抗困難」の要件撤廃などについて検討を進めるとみられる。

園田寿・甲南大法科大学院教授(刑法)の話 名古屋地裁岡崎支部の一審判決は、心理的に抵抗困難な状態を「人格を完全に支配された状態」と捉えており、判例よりも高い基準を求めていた。今回の二審判決は、その解釈を不合理と判断しており、妥当だろう。
2017年の刑法改正は、性被害者の視点や心理を重視したものだ。今回や2月の福岡高裁の逆転有罪判決はその趣旨を踏まえた判断といえる。
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