街の記録届け続けた 60号で「閖上復興だより」終刊へ

2020/3/11 21:27
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閖上復興だよりを発行する格井直光さん(宮城県名取市)

閖上復興だよりを発行する格井直光さん(宮城県名取市)

11日午後2時46分、宮城県名取市の閖上(ゆりあげ)地区。海に近い災害公営住宅のエントランスで、静かに黙とうする被災者らにカメラのファインダーを向ける男性がいた。情報紙「閖上復興だより」編集長、格井直光さん(61)だ。

この日は最終号となる第60号向けの取材。「自分も静かに祈りながら、しっかり記録できた」。最終号は11日の様子や読者の声などをまとめる。住民の佐藤美恵子さん(77)は「毎号楽しみにしていた。知り合いが載ると、『励みになる』という言葉では表せないほど元気をもらった」と惜しむ。

創刊は2011年10月。格井さん自身が震災直後、地域や知人の安否に関する情報を得られず不安を感じたのがきっかけだった。取材や編集は未経験だったが知人らと協力して復興計画の進捗確認や住民へのインタビューなどをし、記事にして無料で地元の住民らに郵便などで届け始めた。

「記事に出ていた知人に連絡したい」「掲載された店の人は元気?」。反響は大きく、格井さんのもとには問い合わせが相次いだ。自身も津波に巻き込まれた両親の遺体が見つかるまでの数カ月間、必死で手掛かりを捜した。「被災者はひとつでも多くの情報を欲している」と痛感した。

会社員として働きながら連日深夜まで編集作業を続け、脳卒中で一時入院した際も病室にパソコンを持ち込んだ。毎号7千部を刷り、発行部数は累計約55万部に達した。

発行は閖上が復興するまでと決めていた。19年5月には閖上地区の「まちびらき」が行われ、商業施設が開業し、新しい小中学校や災害公営住宅の完成を祝った。住民が喜び合う姿を見て「区切りかな」と感じた。

終刊はちょうど60号でキリが良く、3月11日の命日を見届けられる20年3月。「多少は目的を達成できたかな」。今後は「閖上だより」と名前を変えて町内会行事などを伝えるが、発行頻度や発行部数は減らす。

新たな目標もできた。県が募集する東京五輪都市ボランティアの中に震災体験の語り部があると知り、手を挙げたのだ。一人の被災者として閖上を訪れた人たちに災害の恐ろしさや備えの重要性を伝えていくつもりだ。

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