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トランプ新減税の規模焦点 給与税なら巨額財政出動

【ワシントン=河浪武史】トランプ米政権は10日、米議会指導部に年1兆ドル規模の税収がある給与税の免除など経済対策の策定を要請した。米景気は拡大局面が11年目に突入したが、新型コロナウイルスの逆風が強まる。ただ、民主党は減税案を「11月の選挙対策」と強く警戒し、議会審議は簡単には進まない。市場の混乱と政治の混迷が重なれば「1強」とされた米景気も傾きかねない。

トランプ大統領は10日の記者会見を見送り、ペンス副大統領らが経済対策を説明した。10日=ロイター

トランプ政権の経済対策の柱は、社会保障の財源となる給与税の免除だ。同税は労使がそろって給与の6.2%分を納税し、税収規模は年1.2兆ドルと巨大だ。全歳入の3分の1を占め、個人所得税や連邦法人税と並ぶ基幹税の一つでもある。

米政権は年内の時限措置として給与税免除を提案するが、全納税者の税率をゼロにして4月からスタートすれば、減税規模は8000億ドルに達する。労使の税率を2ポイント下げただけでも、数千億ドルの巨額減税となる。17年末に決めた「トランプ減税」は30年ぶりの大型税制改革だったが、年平均の減税規模は1500億ドルだ。

トランプ氏は「米政権の新型コロナ対策は順調だ」と長く強弁し、景気対策の準備を怠ってきた。市場はその政権の不備を危惧し、9日にはダウ工業株30種平均が2000ドルを超す過去最大の下げ幅を記録。トランプ氏も慌てて議会と財政出動の調整に入った。

ただ、野党・民主党は新しい「トランプ減税」を11月の選挙対策とみて、はなから成立に否定的だ。民主党の上院トップ、シューマー院内総務は「広範な減税ではなく失業保険など雇用対策に注力すべきだ」と主張する。トランプ氏は自ら10日に記者会見すると表明していたが、協議の遅れを嫌ってか出席を見送った。

17年末の大型減税で財政赤字は既に年1兆ドルに膨らんでおり、共和党内にも追加減税に慎重論が残る。新型コロナのショックはサプライチェーンの混乱や旅客需要の落ち込みから始まっており、コロナ対策を主導するペンス副大統領らは「低利融資など資金繰り支援を優先すべきだ」との立場だ。与野党の妥協点は大型減税ではなく、失業保険の拡充と中小企業への資金繰り支援が軸になる可能性がある。

米ゴールドマン・サックスは米経済の実質成長率が1~3月期、4~6月期とも0%台に落ち込むと予測する。米中の貿易戦争で企業心理が弱含んでいたところに新型コロナが直撃。さらに原油急落によって過大債務を抱えるシェール関連企業の信用不安まで浮かんできた。米政権と議会が対策に手をこまねいている間に、次々と火種が広がっている。

金融市場は米財政支出を切望する。3日に緊急利下げした米連邦準備理事会(FRB)は17~18日の米連邦公開市場委員会(FOMC)でも追加緩和に踏み切る可能性が大きい。ただ、政策金利は0%に近づき、先行きの利下げ余地は極めて乏しい。金融政策と財政の両輪が動かなければ景気不安を拭えなくなった。

もともと米議会は税財政の審議に時間がかかり、景気対策の発動まで通常は6カ月ほどかかる。11月の大統領選を前に議会審議が混迷すれば、米景気だけでなくトランプ氏の再選シナリオにも黄信号がともる。

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