春季労使交渉きょう回答 賃上げ縮小相次ぐ
集中回答日ドキュメント

2020/3/11 10:25 (2020/3/11 16:39更新)
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UAゼンセン本部(東京・千代田)のホワイトボード

UAゼンセン本部(東京・千代田)のホワイトボード

日本の賃金水準を決める2020年の春季労使交渉が11日、集中回答日を迎えた。米中貿易戦争の影響に加えて、新型コロナウイルスの感染も拡大している。景気の先行きに不透明感が漂う中、基本給を底上げするベースアップ(ベア)や一時金について、前日までギリギリの交渉を続けてきた会社と労働組合はどのような答えを導きだすのか。現場の1日を追う。

■~22時

イオン子会社のイオンリテールは正社員について月額6236円相当(2.10%)の賃金引き上げで労働組合と妥結した。前年実績(同6515円相当、2.21%)は下回った。パートは時給を29.2円(2.83%)引き上げることで妥結した。

■~21時

セブン&アイ・ホールディングス(HD)傘下のイトーヨーカ堂は2020年春季労使交渉で、賃金改善に当たるベースアップ(ベア)を月額427円にすることで労働組合と妥結した。ベアは8年連続。定期昇給分などと合わせた賃上げ幅は1.68%(月額5997円相当)となった。労組は定昇分含めた賃上げ幅2.33%(同8325円相当)を要求していた。パート従業員は1.89%(時給20.15円相当)の賃上げで妥結した。

■~19時

流通や外食、繊維などの労働組合が加盟するUAゼンセンは本部(東京・千代田)5階の組織局で交渉の妥結結果を書き込んだホワイトボードを公開した。旭化成帝人など化学繊維が昼頃に相次いで妥結した。夜にかけて小売やサービス、外食などの妥結が見込まれているという。

■~18時

経団連の中西宏明会長は記者団に「経済情勢が不透明ななか(賃上げで)従業員に報いようという姿勢は全体として感じられた」と語った。新型コロナウイルスの感染の広がりで収益悪化懸念が広がり、経営側は難しい判断を迫られたとの認識を示したうえで「11日の大手企業の回答を見る限り、新型コロナに大きく振り回された感じは持っていない」と強調した。

パナソニックは2020年春季労使交渉で、基本給の底上げに当たるベースアップ(ベア)と確定拠出年金(DC)の掛け金増加を合わせて、1000円の賃金改善を回答した。組合員には直近の生活の不安にベアで獲得した賃金を、将来の不安の解消にDCを活用してもらいたい考えだ。パナソニックグループ労働組合連合会の広田典昭委員長は「うまく着地できたと思っている。(賃金改善額すべてをベアで獲得できなかったからといって、)悔しいという感じはない」と話した。

■~17時

トヨタ自動車の労働組合は愛知県豊田市で記者会見を開いた。西野勝義執行委員長は「会社から組合員が頑張っていることは認めてもらっている。(満額の)一時金にはそういう思いが入っている」としたうえで、ベースアップ(ベア)がゼロになったことについては、「組合員に対して大変申し訳ない気持ちだ」と固い表情で述べた。来年のベアを要求できるかについて問われると「その年々で検討する」と答えた。組合側の幹部は当日朝までもつれた交渉を終え、疲れた様子だった。

機械・金属関連の中小メーカーを中心に構成するものづくり産業労働組合(JAM)は労使交渉の状況を発表した。組合員が300人未満の労組は月1752円、100人未満は同2000円のベアを獲得した。ともに全体平均の1624円を上回っている。

安河内賢弘会長は「中小企業は人手不足感が強く、この危機を労使が一体となって乗り越えていきたい」と語った。新型コロナウイルスの感染拡大による中小企業への影響については「まだ先行きが見通せないが、リーマン・ショックの時は中小企業の価格交渉力が大幅に下がり、生産性の低下につながった。同じようなことがないように注視していく」と述べた。

■~16時

経済同友会の桜田謙悟代表幹事が「新型コロナウイルスなどの影響で先行きに不透明感が増すなか、全体として水準は前年を下回り、業種・企業によっては厳しい結果も見られた」とのコメントを発表。「賃上げと総合的な処遇改善の基調は維持された」との認識も示した。

マツダは2020年の春季労使交渉でベースアップ(ベア)に相当する部分の賃上げを見送ると回答した。ベア部分でのゼロ回答は13年以来、7年ぶり。組合側はベアに定期昇給などを含めた総額で9000円を要求していた。一時金は4.8カ月に6万円を上乗せする。組合側は5.0カ月を求めていた。また、賃金部分とは別に、福利厚生や人材活用分野の基盤整備二使う原資として、組合員一人あたり1500円相当を拠出する。

記者会見する自動車総連の高倉明会長

記者会見する自動車総連の高倉明会長

■~15時

自動車総連の高倉明会長が総連本部(東京・港)で記者会見した。トヨタ自動車など前年割れの水準での妥結が相次いだ20年交渉について「新型コロナウイルスや(個社ごとの)業績に円高、株式市場の混乱を背景に交渉は例年以上に難航した」と話した。

新型コロナの影響については「交渉の環境が日増しに悪化し、賃上げへの経営側の態度は相当に厳しかった」との見方を示した。トヨタが7年ぶりにベースアップを見送った事については「労使で決着した結論を尊重したい」と述べるにとどめた。

富士電機明電舎安川電機の3社はベアに相当する賃金改善1000円で妥結した。いずれも要求額は3000円だった。安川電機は7年連続のベア。「足元では新型コロナなどで不透明感が出ているが、中期経営計画を進めるうえで従業員が協力してくれていることに対して還元する」(安川電機)

@愛知県豊田市 トヨタ自動車の河合満副社長らが記者会見し、「厳しい経営環境のなか、これからどうなるかわからない。いかに雇用と処遇を守るかという観点で悩んだ結果だ」と、ベアを見送った理由を説明した。変革に向けた意欲やトヨタの競争力、同業だけでなく他業種と比べても既に高い賃金水準などを総合的に判断したという。新型コロナウイルスの感染拡大や中国自動車市場の減速など足元の不透明な状況については、今回の回答には反映していないとした。

■~14時

三菱自動車はベースアップ(ベア)に相当する賃金改善分として月額1000円を回答した。組合側は3000円を求めていた。一時金は5.2カ月で組合側の要求を0.3カ月下回った。賃金改善分には賃金制度の改正に向けた原資も盛り込んだ。同社は19年交渉では賃金改善分で1400円、一時金は5.7カ月で妥結した。改正に向けた原資も盛り込んだ。21年4月に個人の成果や若手への配分を増やす新たな賃金制度を導入することで合意し、新制度に使う原資の一部を先取りした。制度の設計は今後労使で協議体を作り進める。

コマツは賃金改善を7000円で妥結した。内訳は定期昇給が6000円、ベアが1000円。再雇用組合員や非正規社員向けの待遇改善も実施する。要求では定期昇給が6000円、ベア3000円に加えて再雇用組合員や非正規社員の生活改善分および待遇改善分で組合員1人平均1000円を要求していた。年間一時金については業績連動としている。

パイオニアは賃金改善の3000円要求に対し、1000円で妥結した。全額、基本給の底上げに充てる。新型コロナウイルスの影響で事業環境が悪化し、「会社側が財布のひもを絞り、妥結に時間がかかった」(労働組合幹部)という。

川崎重工業はベアに相当する賃金改善額として1000円で回答した。要求は3000円だった。IHIもベア要求3000円に対し1000円で回答した。年間一時金は5.6カ月要求に対し5.1カ月で回答したが、協力金として別途年間2万円を加えた。三菱重工業も含めて大手重工はベア相当の賃金改善として1000円回答で足並みをそろえたことになる。

日立製作所は賃金水準改善を1500円で回答した。昨年の妥結は1000円だった。年間一時金は6.3カ月分の要求に対し、6.0カ月分で妥結した。日立の中畑英信執行役専務は11日午後、報道陣の取材に応じ、「これまでもキャリア形成など『人への投資』の取り組みを進めてきたが、今回は特に社員がスキル・経験を明確化する取り組み、デジタルに関する教育機会について投資する」と述べた。

労使交渉の回答状況をホワイトボードに書き込む金属労協の職員(11日午前、東京都中央区)

労使交渉の回答状況をホワイトボードに書き込む金属労協の職員(11日午前、東京都中央区)

■~13時

@金属労協 金属労協がオンラインで記者会見を開いた。高倉明議長は現段階での回答の受け止めについて「交渉環境が厳しさを増すなか、多くの組合が昨年並みの賃上げ回答を獲得し、昨年を上回る賃上げもあった」と説明したうえで「景気底割れを回避するという労使の役割を一定程度果たすことができた」と語った。

電機連合の野中孝泰中央執行委員長は現段階での回答について「米中貿易戦争に加え、新型コロナウイルスの感染拡大で生活や仕事、企業に多大な影響が出ている。早期に闘争の円満決着を図り、非常事態での対応が求められている。先行きが全く見えない緊張感の中で引き出した回答だ」と評価した。

村田製作所はベアに相当する賃金改善として1400円と回答した。全額、基本給の底上げに充てる。会社は「先行きは不透明だが、モチベーションを高めて社員一丸となって困難に立ち向かいたい」とコメントした。

@自動車総連 自動車総連本部(東京・港)の地下1階に設けられた臨時のプレスルームで交渉の途中経過が張り出され、日産とホンダの妥結結果が報告された。ホンダは会社側が公表した賃上げ額1500円の内訳が示され、ベアは500円だった。例年は2階執務室のホワイトボードに経過が書き込まれるが、新型コロナウイルスの影響で今年は中止となっている。

自動車総連では新型コロナ対策で、執務室にあるホワイトボードへのかき出しをやめ、会見場の一画に交渉の経過を張り出した

自動車総連では新型コロナ対策で、執務室にあるホワイトボードへのかき出しをやめ、会見場の一画に交渉の経過を張り出した

三菱重工業は定期昇給をのぞく賃金改善額を1000円で回答した。要求額は3000円だった。4月から実施する。年間一時金の要求は5.95カ月分だったが5.65カ月分で妥結した。19年の春季交渉は賃金改善は3500円の要求に対して1500円で妥結、年間一時金は5.90カ月分の要求に対し5.80カ月分で妥結していた。

■~12時

三菱電機はベア相当の賃金改善額を1000円で回答した。一時金の要求は6.04カ月分だったが5.70カ月分で妥結した。ベアの回答内容とは別に、定年退職後の再雇用者の処遇引き上げなどに取り組む予定だという。

パナソニックは賃金改善額を1000円で回答したが、関係者によると基本給の底上げに当たるベアは500円、企業型の確定拠出年金の支給額として500円増額という内訳になるという。

トヨタ自動車は賃金改善分のベースアップ(ベア)を見送ると明らかにした。ベアゼロとなるのは13年以来となる。電動化や自動運転など自動車産業は100年に1度の変革期にある。豊田章男社長は今回の労使交渉の場で「厳しい闘いでも、雇用だけは何としても守り抜く」と強調。そのうえで、「これからの競争の厳しさを考えれば、既に高い水準にある賃金を引き上げ続けるべきではない。このまま上げ続けることは、競争力を失うことになる」と語った。一律色の強い従来型のベアをやめて、賃金制度全体で評価に応じて頑張った従業員に報いる仕組みをつくる。労組側は評価に応じてベアの差をより付ける新方式を要求していた。

東芝はベアを1000円、教育などに使える社内ポイントを約300円分上乗せする形で妥結した。電機連合は一定の条件を満たした場合に「人への投資」の柔軟性を容認しており、賃金改善の総額は1300円相当となる。

NECはベア相当の賃金改善額1000円で回答した。うち500円は福利厚生制度に使えるポイントとする。大卒初任給は3000円の満額回答。一時金は業績連動方式のため交渉の範囲外だった。

@金属労協 電機連合の主要労組の交渉結果がホワイトボードに書き込まれている。ベア相当の賃金水準の改善額には「1000円」が並ぶなか、シャープは1500円、村田製作所は1400円とばらつきも見られる。例年横並びの結果となるが、電機連合は今年「1000円以上」を最終方針としていた。

ホンダはベア相当額は1500円で妥結した。組合は要求額を前年から1000円低い2000円としていた。一時金は組合側は6カ月分を求めていたが、5.95カ月分と回答した。

日本製鉄はベア相当の賃金改善を見送ると発表した。ベアゼロは7年ぶり。組合側は20年度3000円、21年度3000円のベアを要求していた。過去最大の赤字見通しなど厳しい経営環境を受けて見送る。会社側は「事業環境の悪化を乗り越えていくことに全力を傾注すべき時期だ」とした。製鉄所の閉鎖や設備休止などの合理化策に対し、雇用の場を確保することも優先するとした。JFEスチール、神戸製鋼所もゼロ回答となった。

シャープはベアに相当する賃金改善額を1500円相当で妥結した。要求額は3000円だった。一時金については全従業員を対象に今年12月支給分から年3回支給に移行する。水準は個人の成果や部門の業績に応じ、年1~8カ月分となる。

■~11時

富士通はベア相当の賃金改善額1000円と回答した。大卒初任給は組合要求を上回る1万2500円増の回答だった。会社側は「人材育成などの投資では、社員の成長を支援する学習用システムを今後整備する」としている。

トヨタ自動車は春季交渉で会社側が月8600円の賃上げを回答した。労組は全組合員平均で月1万100円の賃上げを求めていた。19年春交渉の回答額1万700円を2100円下回る。一時金は6.5カ月分の労組の要求に対し、10年連続の満額回答となった。

パナソニックは1000円の賃金改善をすると発表した。基本給の底上げに当たるベースアップ(ベア)と確定拠出年金の掛け金増の合計で、内訳は明らかにしていない。過去6年連続で累計1万円を賃金改善してきたが、一貫してベアのみだった。これまで電機業界で横並びだった賃金改善のあり方が変わった。

日産自動車は賃金改善分などの総額として月7000円で妥結した。組合側は同9000円を求めていた。一時金は組合側の求めた5.4カ月で満額回答したが、「20年度上期の業績を踏まえて見直しの申し入れを行う可能性もある」との条件付きの妥結となった。

■~10時

@金属労協 主要製造業の労働組合で構成する金属労協の事務所(東京・中央)では、各社の回答状況をまとめるホワイトボードの準備が整った。ただ、例年、報道陣が詰めかける会場は、新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けて入室禁止になっている。回答状況はインターネットで中継する。

■9時

@愛知県豊田市 4回目の労使交渉がトヨタ自動車本社で始まった。集中回答日当日まで交渉が持ち越したのは2年連続。

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