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米株急反発、強まる財政頼み(NY特急便)

米州総局 後藤達也

10日の米国株相場は急反発した。ダウ工業株30種平均は前日比1167ドル高となり、9日に記録した過去最大の下げ幅(2013ドル安)の半分強を穴埋めした。米政府による減税の期待から買い戻す動きが強まった。利下げ余地が乏しい中で財政頼みの構図が強まっている。ただ、新型コロナウイルスの経済への打撃を減税でどこまでおさえ込めるかは読めず、投資家心理はなお不安定だ。

10日の急反発のきっかけとなったのはトランプ米大統領が9日夕に表明した経済対策だ。給与税の軽減のほか、航空会社やクルーズ船運営会社向け支援などが含まれる。アメリカン航空株は15%高と急伸し、前日に大幅安となったエネルギー関連株も買い戻された。

金融緩和に頼れなくなってきたことで、投資家は財政への依存を一段と深めている。米連邦準備理事会(FRB)は3日に0.50%の緊急利下げを実施したが、市場は17~18日の定例会合でも0.50~0.75%への利下げを既に織り込んでいる。政策金利は一気に0%台半ばに下がる。FRBはかねてマイナス金利政策の採用には慎重な姿勢を示しており、事実上の下限は目前で、追加利下げの余地はもはやほとんどない。

金利低下が財政出動を促している面もある。米10年物国債利回りは9日に史上最低となる0.3%台にまで低下した。米政府はほとんど金利負担をせずに財政を活用できる。

ただ、投資家には迷いも残る。10日のダウ平均は朝方に900ドル以上上昇したが、正午前には下落に転じた。午後には再び買いが優勢となり、結局高値圏で取引を終えた。特段の材料がなかったにもかかわらず、値幅は1300ドル強に達した。経済対策には議会の承認が必要で、政府の案が円滑に通るか不透明だ。10日の日中には政府案の詳細がみえず、材料を消化しづらかった面もある。

そもそも財政出動で新型コロナの逆風を跳ね返せるのかは読めない。米国の新型コロナの感染者数はこの1~2週間で急増した。ニューヨーク州では学校の休校などヒトの動きを制限する動きが広がる。日本同様に日用品の不足も強まるなど、国民の不安も高まってきた。家計心理が冷え込めば減税がどこまで支えになるか不透明だ。

金融面の脆弱性も高まっている。景気への不安に加え、原油価格の急落で、低格付け社債から資金が抜け出している。バンク・オブ・アメリカの集計では米低格付け社債の金利は9日に7.17%となり、半月で2%以上上昇した。米国債の金利は史上最低まで下がったが、新型コロナへの不安で米低格付け社債の金利に波及しなくなった。

FRBによれば米企業の債務残高は2019年9月時点で16兆ドルにのぼる。資金繰りが悪化すれば倒産が増え、さらに低格付け債の金利が上昇する悪循環に陥りかねない。そうなれば投資家も大幅な損失を抱え、金融市場全体に動揺が広がる。利下げ余地が乏しいいま、このリスクへの処方箋は描きづらく、財政出動も抜本策となりづらい。

投資家の恐怖心の大きさを示すVIX指数は40台後半となお高水準だ。10日は急反発したものの、9日の急落の自律反発の域を出ていないとみておいたほうがよさそうだ。(ニューヨーク=後藤達也)

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