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震災9年、避難なお4万7000人 被災地で追悼の祈り

(更新)
海に向かって手を合わせる遺族(11日午前、岩手県陸前高田市)

東日本大震災は11日、発生から9年を迎えた。政府の「復興・創生期間」が残り1年となり、被災地では住まいや交通網などの整備が完了に近づく。一方、東京電力福島第1原子力発電所事故の影響が残る福島県を中心に、現在も約4万7千人が避難を続ける。長引く避難生活で震災関連死は3700人を超えた。政府が復興庁の設置期限を10年延長するなど、復興への道のりはなお遠い。

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、11日の政府主催の追悼式は中止された。政府は同日午後、安倍晋三首相らが出席する献花式を首相官邸で行う。各地の自治体も、追悼式を中止するか規模を縮小して行うことを決めている。

菅義偉官房長官は11日午前の記者会見で、震災復興について「引き続き政治の責任とリーダーシップのもと被災地に寄り添いながら一丸となって取り組む」と述べた。

被災地ではこの日朝から、犠牲者に対する追悼の祈りがささげられた。津波で750人以上が犠牲になった宮城県名取市の閖上(ゆりあげ)地区では、11日早朝から遺族らが沿岸部に足を運んだ。市内で予定していた追悼行事はほぼ中止。市は午前9時ごろ、漁港近くに献花台を設置した。

津波で夫とめい、めいの娘を亡くした加藤美枝子さん(69)は出勤前に訪れ、犠牲者の芳名板を見て「3人の名前を見ると涙が出るけど、前向きに頑張っていかないと」と決意を新たにした。

閖上地区は災害公営住宅などハード面の復旧が整い、2019年5月に「まちびらき」した。「今朝仏壇で夫に『もう9年だね』と声をかけてきた。閖上の風景もだいぶ変わって復興も進んだけど、あの日のことは死ぬまで忘れられない」と話した。

1200人以上が犠牲になった岩手県大槌町でも早朝から住民らが城山公園で犠牲者を悼んだ。姉を亡くした70代の男性は町を一望して「やっと景色が元通りになってきたよ」と報告した。自宅は津波で流され、今も町営住宅に一人で住む。「あっという間の9年間だった。まだ実感がわかないし、思い出すとつらい」と声を詰まらせた。

建設会社勤務の平野礼さん(43)は母と3人の娘と墓参りした。当時68歳だった父は行方不明で、遺体はまだ見つかっていない。「元気にやっているよと今日は伝えに来た」と語り、「一番下の娘の顔を見てもらいたかった」と涙ぐんだ。

津波で流された自宅の跡に設けた祭壇を見つめる志賀一郎さん(72)。妻と孫娘が今も見つかっていない(11日午前、福島県双葉町)

復興庁によると、震災で被害の大きかった岩手、宮城、福島の3県の災害公営住宅の整備率は、1月時点の平均で計画戸数の99%に達した。高台移転による宅地造成も計画戸数の99%を整備した。復興道路は全体計画約570キロの7割が開通済み。JR常磐線の富岡―浪江間(20.8キロ)が14日に再開し、震災で被災した路線はすべて復旧する。

ハード面の整備は完了間近だが、生活再建は道半ばだ。内閣府などによると、全国の避難者数は10日時点でなお4万7737人。応急仮設住宅にも約6千人が入居している。福島第1原発が立地する福島県双葉町で4日、9年ぶりに町内の一部で原発事故による避難指示が解除されたが、人が住めるようになるのは2022年春以降だ。

復興庁によると、原発事故で被災した同県の12市町村の営農再開面積は震災前の29%。沿岸漁業も試験操業が続き、水揚げ量は震災前の14%にとどまっている。

警察庁によると、全国の死者は10日時点で1万5899人で、行方不明者は2529人。復興庁によると、避難生活での体調悪化などが原因の震災関連死(19年9月時点)は1都9県で3739人。

行方不明者を捜索する岩手県警の警察官(11日午前、岩手県陸前高田市)
「釜石祈りのパーク」で献花に並ぶ市の幹部ら(11日午前、岩手県釜石市)
宮城県名取市閖上地区で犠牲者を悼み、手を合わせる男性(11日午前)=共同
東日本大震災と福島第1原発事故から9年目の朝を迎えた福島県大熊町の中心部。JR大野駅などの避難指示が解除されたが、近くの商店街は帰還困難区域のままで人の気配はない(11日午前)

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震災9年

インフラ整備や産業・文化の復興、原発、防災、そして地域に生きる人々の10年とこれからをテーマにした記事をお届けします。

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