習氏「いい方向に」 新型コロナ防疫、初の武漢視察
【北京=羽田野主】中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席は10日、新型コロナウイルスの感染が広がって以来、初めて湖北省武漢市を視察した。習氏は「ウイルスのまん延の勢いは基本的に抑え込んだ。状況は徐々にいい方向に向かっている」と事態の収束に向けた自信をみせた。自ら陣頭指揮をとる姿を見せて、求心力を回復する思惑もありそうだ。

中国国営の新華社が伝えた。習氏は人民解放軍が突貫工事で完成させて重症患者らを受け入れている火神山医院を慰問した。武漢市の地域コミュニティーである「社区」を歩き住民らに「ご苦労さま」と声をかけた。
医療スタッフや軍関係者らを前に、習氏は感染の封じ込めについて「少しも手を緩めることなく、各方面の防疫の仕事をしっかりとやるように」と発破をかけた。新型コロナに「断固として打ちかつ」と強調。そのうえで「いま、カギとなる時期を迎えた。歯を食いしばって取り組みを続けなくてはならない」とも述べた。
習指導部では、1月23日に武漢市を封鎖して5日目に最高指導部でナンバー2の李克強(リー・クォーチャン)首相が武漢入りをしていた。習氏の現地入りは48日目だ。2008年5月の四川大地震の時に、胡錦濤(フー・ジンタオ)国家主席が4日後に四川省入りしたのと比べると、出遅れた感じが否めない。
新規の感染者が激減する中での習氏の武漢訪問は「終息宣言」に向けた布石との見方があり、正常化に向けて現場を引き締めた形だ。中国政府の専門家チームのトップを務める鍾南山氏は2月末に「4月末に感染を基本的に抑えられるようになる」と予測している。
患者が集中する武漢市では習指導部の対応の遅れなどに対する根強い不満がくすぶっている。習氏は「武漢市民は英雄だ。全ての人はあなたたちに感動し称賛している」とたたえた。