今日も走ろう(鏑木毅)

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突然の休校、心どうケア 区切りに代わりの式典を

2020/3/12 3:00
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新型コロナウイルスの感染拡大を防止するため、3月初めから全国の小中高校が原則的に休校となった。あまりに急な措置だったのでさまざまな問題が持ち上がっているようだ。特に気になったのは児童、生徒の心理面に及ぼす影響である。

たとえば卒業式を行わない、もしくは最低限の出席者に絞って開く学校もあると聞く。残すはあと半月少々とはいえ、卒業生にとっては突然、学校生活にピリオドを打たれてしまったわけである。友人や先生との別れを惜しみつつ、残りわずかの学校生活を楽しもうと思っていたことであろう。

私自身も小学校卒業前のこの時期は深く記憶に残っている。卒業間近の時期は、4月からの中学校という新世界への期待に胸を膨らませながら、何ともいえない不安や寂しさがあった。卒業式が数日後に迫ったある日、「もう友人とこの小学校で過ごすことはないのだ」と思うと急に埋めようのない空白感に襲われた。

政府の休校要請を受け、在校生不参加の卒業式を急きょ開いた高校も=共同

政府の休校要請を受け、在校生不参加の卒業式を急きょ開いた高校も=共同

友人も同様だったらしい。お互いのそんな気持ちを紛らわそうと校庭の隅に穴を掘り、タイムカプセルを埋めることになった。思い出の品を地中深く埋め、社会人となる10年後に再び掘り起こそうと約束した。残念ながらのちに校舎の増築でその場所が分からなくなり、約束は果たせなかったけれど、卒業前の心のざわつきを静める効果は絶大だったように思う。

また卒業式の練習で度々ふざけていた男の子がいた。日ごろからそのような態度だったため、先生も最後くらい真面目にやるよう毎回指導していた。私たちも「せっかくの卒業式が彼の身勝手な行動で台無しになるのではないか」と気がかりでもあった。ところが、いざ式が始まるとその子はおとなしかった。

やがて最後の校歌斉唱の時には大粒の涙を流しながらむせび泣いた。周囲もその姿に圧倒され、会場全体が涙で包まれた。想像していなかった事態に私も感動した。今になって思えば、練習における彼の悪態は卒業で慣れた居場所を失う寂しさゆえだったかもしれない。何年たっても忘れられない思い出となっている。

新型コロナウイルスの流行で、スポーツイベント、コンサートをはじめさまざまな催し物が中止または延期に追い込まれている。これらの騒動はいずれ収束し、コンサートであれば再び開催されることもあるだろう。同じようにウイルス感染の問題が一段落したところで、学校も公式でなくても代わりとなるなんらかの式典、イベントを開くというのはどうだろうか。

9年前の東日本大震災の時もそうだった。児童、生徒たちにとって、単に通常の授業や学校行事が中止になったというだけでなく、一生残る思い出を形成する貴重な時間と機会が失われたということを社会を取り巻く事態の深刻さと比較して軽く見てはならないと思う。新生活をスタートしていたとしても、子どもたちにはきっと気持ちに区切りをつける良い記念となるはずだ。

(プロトレイルランナー)

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